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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2008年08月19日11時11分掲載
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山は泣いている
37・開発しない価値 山形県八幡町が開発推進派から自然保護派に転じた理由 山川陽一
第9章 価値観を見直さないと・4
1984年、鳥海山南麓の山形県八幡町に、大規模スキー場の開発計画が持ち上がっていた。最終的にはゴルフ場とホテルも併設するこの計画は、(株)コクドが開発の主体となるもので、八幡町はこれを町発展の起爆剤と考え、強力に推進を図ろうとしていた。ときまさにバブル経済最盛期のことであった。 この計画を知った地元自然保護団体(鳥海山の自然を守る会代表池田昭二)は早々に反対運動を始めていたが、91年には日本山岳会自然保護委員会も町に計画反対の要望書を提出、その後、絶滅危惧種である特別天然記念物イヌワシの存在が確認され、日本山岳会山形支部佐藤淳志がリーダーとなる調査班が20ヶ月に及ぶ調査の結果、イヌワシの営巣地を発見。イヌワシの飛翔経路などの貴重な調査データを含む調査報告が作られた。 これが決め手となって、97年、県の調査委員会の見解、県知事の計画見直し見解、コクド撤退の声明、八幡町中止の発表と続き、13年にわたる騒動の幕が下ろされた。(日本山岳会「山岳」Vol.92.「鳥海山のスキー場開発と自然保護」松本恒廣)
これには後日談がある。
日本経済はその後バブルが崩壊して未曾有の長期リセッションに見舞われ、日本全土に林立したリゾート施設やゴルフ場、とりわけバブルの絶頂期に計画を推進した大規模開発施設は、膨大な借金をかかえて奈落の底に突き落とされる。海外も含めた膨大なレジャー施設を抱えて再編に追い込まれた西武グループが、不採算31施設(ホテル6、スキー場13、ゴルフ場10など)の売却計画を発表したのは、2006年6月のことである。もし、鳥海の計画が実施に移されていたら、本件も間違いなくこの売却リストに名前を連ねていたことであろう。
災い転じて福をなすとはまさにこのことである。きわどいところで難を逃れた八幡町町長後藤孝司は、計画阻止の先頭に立った日本山岳会に対して理解と友好を深め、2001年日本山岳会へ入会することになったのだった。今は、鳥海山の自然を郷土の貴重な財産と考える大変な自然保護派である。その後、平成の大合併で八幡町は酒田市に統合された。新酒田市のシンボルはイヌワシである。
前項でわたしは多摩市の開発問題に触れ、21世紀を迎え、人々は何もしないことに価値があることに気づき始めていると書いた。21世紀は環境の時代といわれる。再び無秩序開発の世紀に戻ることはないと信じているが、バブル崩壊からようやく立ち直った日本が、今度は、失われた自然の再生にこぞってお金を使うくらいの発想の転換が出来れば、本物だと思うのだが。 (つづく) (やまかわ よういち=日本山岳会理事・自然保護委員会担当)
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