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2008年08月24日08時23分掲載
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G8
サミットから見えてきた日本の治安・監視体制の本質 “軍隊”を投入し、思想信条の取り締まりを打ち出す 小倉利丸(富山大学教員)
洞爺湖サミットは明らかに政治的には失敗したが、唯一、警察や法務省・入管だけは、やりたい放題の人権侵害を繰り返し、司法・内務大臣会合においても多くの厄介な課題を残した。サミットに関連する治安・監視問題は、大きくわけて二つの問題にわけられる。ひとつは、サミットの開催にともなって実際に実施される警備に関わる問題である。もう一つの問題は、サミットが議題とする治安問題、とりわけ司法・内務大臣会合が主題としてとりあげている国際組織犯罪とテロ対策において具体化されている政策課題の問題である。
◆イージス艦や迎撃ミサイルを持ち出す
サミット警備問題については、7月発行の『インパクション』の視点欄に述べたので、詳しくはそちらにゆずるが、今回のサミット警備が集会やデモに対して過剰警備を繰り返し、7月4日の札幌のデモでは、デモの最終解散地点までデモ行進が許可されず、5日のピースウォークでは4名が逮捕される事態となった。これに加えて、今回は、わかっているだけでも二十数名の韓国からの参加者が千歳空港で入国を拒否され、また多くの海外参加者が長時間にわたる入国審査を強いられたり、ビザ発給に長時間を要したり、挙句の果てにはビザ発給がなされず、来日を断念した参加者や招待者がいた。
千歳空港では、入管の対応に抗議した韓国・民主労総の幹部が公務執行妨害容疑をかけられて拘束されたし、5日間にわたる抑留は、寝具もなく、男女同室という劣悪な環境を強いられるなど、著しい人権侵害が横行した。
サミット警備で自衛隊の部隊が投入されたことも見過ごせない。テロ対策部隊として設置された陸上自衛隊の中央即応集団の化学防護隊、第1ヘリコプター団、海上自衛隊のイージス艦2隻と護衛艦約10隻、対航空機・巡航ミサイル用の迎撃ミサイルPAC2、浜松基地所属の空中警戒管制機(AWACS)とE2C早期警戒機、F15、F2の各2機の戦闘機による会場上空の旋回警戒飛行(CAP)が投入されたというのは、まるで臨戦態勢さながらの常軌を逸した部隊の投入だ。シビリアンコントロール以前の問題として、この国に軍隊が存在することがいかに大きな間違いであるかを如実に証明するような事態だった。
◆インターネットで流れる思想取り締まりを打ち出したG8
他方で、サミットの司法・内務大臣会合の議論をふまえて出された「総括宣言」は、大きくわけて「国際組織犯罪」と「テロ対策」が扱われているが、いくつかの見過ごせない論点が出された。
第一に、サミットのテロ対策が徐々に思想の取り締まりという傾向を強め始めているということだ。「宣言」では「我々は、国際テロ組織によるテロ行為のみならず、テロ組織に属していない個人が過激化しテロ行為を敢行する事例が多くの国でみられるようになってきたことを深く憂慮する。」とし「インターネット等の近代的情報通信技術の発展及び普及により、暴力的過激主義思想へのアクセス及びその頒布、爆発物製造方法の取得、並びに暴力目的でのネットワーク作り及びリクルートはますます容易になり、暴力に結び付く過激化を容易にする環境が更に整いつつある」と述べて、インターネットを中心に、思想信条の取り締まり強化をはっきりと打ち出した。
第二に、「ID犯罪」という新しいカテゴリーを持ち出し、クレジットカードやパスポートの偽造などへの取り締まり強化を打ち出したが、これは裏を返して言えば、個人を特定するシステムの構築が必要だと主張するものであって、日本でいえば、住基カードで大きな議論になってきた「国民総背番号制」など、一元的な国民と外国籍の人々の本人認証制度導入を促す可能性をもつものだ。
第三に、国際的な警察の連携強化と途上国の警察などの能力向上支援だ。DNAデータベースの共有、二国間の捜査共助協定などに加えて「国際組織犯罪の取締りに当たっては、警察、出入国管理当局、税関当局等の関係当局が有する各種の情報を、各国の個人情報保護制度に配慮しつつ、有効に活用することが極めて重要である」「我々は法執行機関が、世界中のどこにいようとも、そのような犯罪者を特定及び訴追することができるよう、その能力の向上を継続すべき」とするだけでなく「電話産業と法執行機関の間の、より緊密な協力を確保するための勧告が取りまとめられた。」と述べて、民間の通信事業者を巻き込んだグローバルな捜査体制構築を明確にした。
こうしたサミットでのある種の「合意」が8月以降の国会審議のなかでは、とくに共謀罪法案やコンピュータ監視・取り締まり法案の再上程と審議加速化につながる危険性がおおいにある。
G8サミットに反対する私たちの言論や表現の自由を封殺する動きのなかに、サミットの本質がはっきりと露呈していることは言うまでもないのだが、サミットが単なる首脳のお祭り騒ぎだと見るべきではなく、30年のサミットの歴史を通じてサミットが徐々に国際政治のなかで制度化されつつあることに注意する必要があろう。治安・監視の問題も、もはや一国の問題では片付かない。軍隊と警察を別々の制度とみなすことももはやできない。これらの権力装置がボーダレスに連動していることをきちんと見据えたうえで、私たちは、治安・監視問題と反戦平和運動をつなぎ、さらに第三世界の貧困問題や経済問題を安全保障問題ときりはなすことなく運動化するたらしい運動の枠組の創造がせまられている。
「付記」 Japan Times2008年7月1日付記事によれば、サミット予算総額600億円のうち300億円が警察庁の警備予算として計上された。また防衛省は要人輸送と会場周辺の海上警備に10億円が計上された。2005年のイギリスのグレンイーグルスサミットでは、1200万ポンド(約260億円)であったことを考えれば、洞爺湖サミットの異常さは明らかだ。こうした予算措置が過剰警備を支えたことは間違いない。
ベリタ編集部:この論考は『あにまる』20号に掲載されたものに一部書き足していただきました。 (写真は大野和興撮影)
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