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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2008年09月01日00時01分掲載
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【破綻した築地市場移転計画】(2) 露わになった巨大利権 都はなぜ移転にこだわるのか
2008年7月26日、「豊洲新市場予定地における土壌汚染対策等に関する専門家会議」は、報告書を東京都に提出しました。この対策にかかる費用は数千億円規模といわれ、それでも健康へのリスクがゼロになるわけではありません。これだけのリスクとコストが明らかになりながら、東京都はなぜ、いまだに移転にこだわるのか。素朴な疑間を禁じ得ません。(日本消費者連盟 吉村英二)
◆汚染区域指定の可能性も
そもそも移転の理由として東京都は、築地市場の施設の老朽化に加え、近年続く集荷力の低迷をあげていました。かつての買い出し人の主力であった街の鮮魚店や料理店が姿を消す一方で、規制緩和などにより大手流通業者は産地直接仕入れを増加させ、現在の取り扱い量は1990年のピーク時に比べ、7割程度にまで落ち込んでいます。
そこで、03年5月の「豊洲新市場基本構想」では、「流通環境の変化に対応」するとして、大型トラック輸送に適した「物流システムの再構築」や、スーパーなどから要望の強い「加工・配送等の付加価値サービス」を導入して、集荷力を取り戻すとしていました。
しかし、その豊洲新市場の「集荷力」にも、すでに赤信号が灯っています。国会では、民主党から豊洲を汚染指定区域に指定するための土壌汚染対策法改正案が提出され、すでに参議院を通過。加えて、与党も同様の法案を準備しているという情報もあり、それが本当なら、いずれ豊洲の指定は避けられません。
東京都は「汚染指定区域でも市場開設は可能」( 08年7月26日専門家会議終了後質疑での回答)との見解を示しますが、誰が汚染指定区域などに出荷したい、そこから来たものを買いたいと思うでしょうか。集荷力は落ちこそすれ、上がることなどあり得ません。
◆再整備も不可能ではない
常識的には、もう現地再整備しか手は残されてないと思われますが、東京都は「現在地での整備は困難」の一点張りです。その理由として、「順次建替え工事に必要な仮設建築用地(種地)が確保できない」などとしています( 08年7月28日「専門家会議報告書(案)に対する意見募集の実施結果」)。
しかし、そう言う東京都も90年には、 一度は現地再整備に着手しています。このときは結局、97年に立ち消えましたが、いまより3割も取り扱い量が多い当時の方が物理的条件は厳しかったはずです。
種地については、当初移転に反対していた中央区が、東京都に幾度となく候補地を提案してきた経緯もあります( 08年7月3日付『日刊ゲンダイ』)。また場内の業界も、旧国鉄汐留貨物駅跡地(現汐留シオサイト)を種地にできるよう各方面に働きかけたとも聞いています。こうした働きかけを無視してきたのはむしろ、東京都の方でした。
取り扱い量が減ったいま、営業しながら再整備を進めることは十分可能です。現に、大阪市中央卸売市場(本場)では、15年をかけて営業しながら再整備を進め、02年には完成させています。結局、東京都の言う移転の論理は、未曾有の汚染を前に、完全に破たんしたのです。
◆消えた5000億円
では、東京都の本当の狙いは何なのか。次のような都議会での答弁に、東京都の「本音」がうかがえます。
08年6月20日、東京都は都議会経済港湾委員会で、「現地再整備の試算は3000億円だが、手持ち資金が1350億円しかないため、国の補助金等を得ても財源が足りない。しかし、移転すれば築地市場跡地の売却益数千億円が得られ、移転費用も賄える」という主旨の見解を示しました。「お金がないから売るしかない」というわけですが、これは詭弁です。
一般会計とは独立した市場会計には、かつては5000億円を超える旧神田市場跡地(現秋葉原クロスフィールド)の売却益があり、一時3000億円近い残高がありました。実際、90年の再整備は、その売却益からの2000億円に市場会計からの1000億円を加えて行なう計画でした。つまり、以前は十分な資金があったのです。
では、いったいその資金はどこへ消えたのか。06年6月23日に行なわれた東京中央市場労働組合との交渉で東京都は、「旧神田市場跡地売却益は(都が持つ全)11市場の整備に充当した」と答えていますが、これについては疑問視する声も少なくありません。
一説では、「臨海再開発も失敗し財政が悪化。本来は再整備のための独立会計予算をその穴埋めで使ってしまい、資金が不足した。だから築地を売却して、移転するしかなくなった」( 04年11月14日付『サンデー毎日』より築地市場関係者)ともいわれています。実際、臨海副都心開発事業の累積赤字は、01年度末の時点で5000億円を超えています。
超一等地である築地市場の土地の市場価格は、実際は1兆円以上ともいわれます。つまり、無駄づかいの穴埋めに、喉から手が出るほどこのお金が欲しい。これが、東京都の本音なのではないでしょうか。
◆官民癒着の再開発
実は、築地市場移転と臨海副都心開発は、ある社団法人で結びつきます。それが、ゼネコンや鉄鋼、セメントなどの建設関連をはじめ、商社や銀行など、名だたる企業が名を連ねる日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)です。
JAPICは79年、大規模開発を国や自治体に「提案」することを目的に設立され、これまで臨海副都心開発をはじめ、東京湾アクアラインや幕張メッセ、圏央道などの大型公共事業の青写真を描いてきました。同様に81年には、「築地は(中略)晴海、銀座などの開発とリンクさせて、情報発信基地か都市型高層住宅として活用すべき」とする構想を発表しています(『選択』08年3月)。
そうした公共事業を通じて、JAPIC会員企業には関係機関の官僚が多数天下り、その見返りとして、工事の多くを会員企業が受注して来ました。臨海副都心開発事業でも、まったく同じ構図が見られます。つまり、築地の移転は、臨海副都心開発から連なる官民合作の巨大再開発計画に位置づけられていたのです。
◆売りに出される食の安全と文化
さらに99年4月、こうした官民癒着構造という地下水脈の上に、石原慎太郎都知事が誕生します。石原都知事本人は、「(自分の就任)前から、さんざん検討されてきたこと」と言いますが、移転の最終決定は就任後でしたし、豊洲の地権者である東京ガスを口説いたのは、子飼いの浜渦武生副知事(当時) でした。
そうして石原都知事は、06年に東京オリンピック招致本部を立ち上げ、築地をオリンピックのメディアセンターにするとして、移転問題にもうひとつの水脈を引いてきます。
その後、三選を果たした石原都知事のスローガンは「東京再起動」。オリンピック招致をテコに一気に移転問題を動かし、「東京再開発」を押し進めようとしたのです。ちなみに新銀行東京も、この再開発資金供給のために設立されたという見方もあります(『フォーサイ卜』08年4月号)。
そして、この水脈は、長男・石原伸晃現衆議院議員による知事世襲という、″石原王朝″ の完成へとつながるといわれています( 07年1月26日付『週刊ポスト』より政治ジャーナリスト・山村明義さん)。結局のところ、私たちの食の安全と文化と引き換えに、政官財が私腹と権力を肥やす。それが、築地移転問題の真の姿なのでしょう。
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