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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2008年09月03日11時54分掲載
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山は泣いている
39・映画「不都合な真実」が教えるもの 日本の首相、環境相は必見 山川陽一
第9章 価値観を見直さないと・6
2000年、アメリカ国民は誤った選択をした。なぜブッシュだったのか。 ゴアが地球温暖化問題を意識し始めたのは1960年代後半のことだった。多分漠然とであるが、ぼくが地球環境の問題に興味を抱き始めたのもその頃であったと思う。以来40年、彼もぼくも、日々環境破壊に拍車がかかる地球の現状を目の当たりにしながら、危機感を深めて行った。しかしぼくは「不都合な真実」なる映画の存在を知らなかったし、実は、ゴアがそれほどの深い知識を持った地球環境問題の伝道者であることも知らなかった。ゴアについて知っていたことはといえば、2000年の大統領選挙で大激戦の末ブッシュに敗れたことと、そのとき彼がアメリカの副大統領だったことぐらいである。
そんな自分がこの映画を観て、地球環境の問題ついて、彼とぼくが一致した基本認識をもったふたりであることを知ることができたのはうれしいことであった。彼は元アメリカの副大統領で、片やぼくは単なる日本の一市民に過ぎない。地球温暖化の問題に対する知識の深さや啓発活動においても、比較の対象にならない落差がある。それなのに、たどり着いた結論が同じだということを考えてみると、この問題は、まじめに考えれば誰もが同じ結論に至らざる得ない普遍的真実なのだ、と言っていいのだと思う。
安部政権が誕生したとき、ぼくは、戦後生まれのこの若きリーダーに大きな期待感を抱いた。彼は『美しい国へ』という自著を著して国民に政治信条を語りかけている。ぼくはこの本を読みもしないで、「美しい国へ」という以上、当然その概念の中には、美しい国土と地球環境の問題は中心的に掲げられているものと短絡してしまっていた。
この本は、日本が京都議定書で国際的に約束した二酸化炭素の排出量削減(2008年‐2012年の平均値で1990年基準8%減)の開始を2年後に控えた年に出版された。しかし、日本の排出量はその前にすでに6%増という悲劇的数字になっている。そんな状況に追いつめられながら、首相の口からも環境大臣の口からも、この問題について直接国民に対して何も語りかけようとしない日本政府をみて、ぼくは、はじめて、書店に足を運んでこの本を購入したのだった。環境問題に対する首相の考えを知りたかったからである。 しかし、書中で唯一語られている環境問題は、「日本の優れた環境技術を外国に売りこみたい」という数行だけであった。ぼくは、経済問題の一環でしか地球環境の問題を取り上げられない一国の首相の意識に大きな失望を禁じえなかった。
ブッシュ政権のアメリカが、国際的に突出したエネルギー消費国でありながら、京都議定書に加わることもせず地球温暖化問題に背を向け続けているのと、京都議定書にサインしておきながら、そのオブリゲーションに正対しようとしない日本の政府と、どれほどの違いがあるというのだろう。
そもそも地球温暖化の問題というのは、基本的に経済成長と相反の性格を持っている。経済成長最優先の政策を掲げながら、同時に二酸化炭素の排出量も劇的に削減しようとすること自体、二律背反である。すべてが現状延長形の生活を許容するのではなく、国民にも相応の我慢を強いる覚悟が必要だし、経済成長最優先の価値観を捨てて子孫に価値を残す新しい価値観の確立が必要である。 もうひとつは、この問題は一国の中だけで片付く問題ではなく、地球規模で考えないと意味がない。それは、発展途上国の経済成長や人口の増加と深いかかわりを持つ。放置すれば65億人の人口が2050年には90億人に膨れ上がってしまい、少しばかりの二酸化炭素の削減努力では焼け石に水だ。
ぼくは映画を観ながらそんなことを考え続けていた。平日の昼間の時間帯だったこともあるが、入場者数が自分たちを含めて十数名だったのは寂しい限りだった。国民みんなに観てもらいたい、誰よりも首相と環境大臣に観てもらいたいと思ったのだった。 (つづく) (やまかわ よういち=日本山岳会理事・自然保護委員会担当)
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