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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2008年09月07日14時35分掲載
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農と食
自由貿易は食料・環境危機を招く!(1) 農民は生産にかかわる物事を決める権利を持っている カティン・カーサ(貧民連合、タイ)
グローバリゼーションが作り出す貧困や環境破壊に対峙して運動を進めている社会運動体「脱WTO/FTA草の根キャンペーン」(世話人・大野和興ほか)は、北海道・洞爺湖でG8(先進国首脳会議)が開かれる前夜の7月6日、札幌で国際シンポジウム「自由貿易は食料・環境危機を招く!」を開いた。タイ、オーストラリア、中国、インドの農民やNGO・市民活動家らがパネリストとして参加、それぞれの地域・国でいま何が起こっているかを報告した。以下その内容を紹介する。第1回は東北タイの農民で、貧民連合で活動するカティン・カーサさん。(安藤丈将)
みなさん、こんにちは。私はカティン・カーサと言います。私は農民で、タイの貧民連合の一員です。貧民連合は、グローバリゼーションとたたかう世界の農民運動にネットワークであるヴィア・カンペシーナ(農民の道)に加盟しています。貧民連合はタイの様々なグループから構成されています。私たちのメンバーの大半は、小規模農民です。小農たちは、自分で生計を立てる権利や何を作るかを決める権利を侵害されています。
◆自由貿易で苦しむタイの農民
タイの稲作農民は、1年間に2000万トンのコメを生産しています。そのうち、1100万トンが国内消費に向けられ、残りの900万トンが輸出されています。タイ政府はタイを「世界の台所」にするという目標を掲げてきました。そんなタイも、世界的な食料危機のあおりを受けています。米輸出国であるタイの国民は、世界の他の国の人びとと同じく、米の価格高騰に直面しています。
タイの農民は、困難な状況に置かれており、生計を立てることができません。タイは、中国とのFTA協定を結んでいます。FTAによって、中国産の安いニンニクが大量に輸入されるようになりました。このためにタイ国内のニンニク業者は生き残ることができず、政府はニンニクから他の作物への転作を農家に勧めています。政府は転作した農民に対しては最初の1〜2年だけ補助金を支払いますが、それ以上は支払いをしないことにしています。
ニンニクから他の作物への転作を要求されても、長い間ニンニクを作って来た農家にとっては、技術的に容易なことではありません。また、他の作物もFTAの下に自由化されているので、これから何を作ればよいかを決めるのは難しいのです。それでは、村を出て出稼ぎをすればよいかというと、町での賃金も安くて、生計をまかなうには足りません。
こうした状況の中で、北部タイの農民は、政府に対して様々な抗議行動をおこなっています。米価が上がる一方で、農民の米販売価格は低い水準にとどまっているからです。もし新自由主義が本当によいものならば、タイの稲作農家は、もっと高い収入を得て、タイの消費者は、良質の食料を安価な価格で手に入れているはずです。実際には新自由主義の「見えざる手」によって、タイ政府は現在起きている問題を十分にコントロールできずにいます。
他方、ここ数年間、ゴム価格が高騰しています。かなり多くのタイの稲作農家が、水田をゴムのプランテーションに転換しています。それと同時に、農家は現在、いわゆる再生可能なエネルギー作物への転換も早いスピードで進めています。サトウキビ、キャッサバ、アブラヤシといった作物への転換です。タイ政府は、次の5年間で数百万ヘクタールのアブラヤシ園の造成を進める予定です。工業団地、石油化学工業の造成が目に見える形で進んでいます。水田をエネルギー作物や石油化学工場に転換にすることによって、米の生産量が低下するということが、タイのいくつかの地方で起きています。
◆自由貿易か、食料主権か?
こうした食料危機を解決するために、大国、WTO、IMF、世銀などは、もっと農業に投資をし、低開発国への食料援助を増やし、農業市場を自由化するという提言をしています。また、もっと集約的な生産に転換しようという議論もあります。これは、もっと工業型の、企業に依存した農業にしよう、より多くのGMOを使おう、より多くのエネルギーを使おう、ということを意味します。以上の考え方は、もっと深刻な食料危機をもたらすと思います。
ヴィア・カンペシーナは、世界の国々が貧しい人たちが十分な食料にアクセスできるようにするために、国内向けの生産を優先させるべきだと考えます。すなわち、食料生産の世界市場への依存を減らしていくべきです。
食料危機からの脱出とは、単に人びとが十分な食料を獲得することにとどまるものではありません。食料危機からの脱出には、食料生産者が自らの生産に関わる物事を決める権利を持つことを必要とするし、食料の分配や配分が公正な取引によっておこなわれなくてはなりません。私たちは正義に基づいた政策を進めるべきと考えます。このような政策によって、農民や消費者の権利を促進し、多国籍企業の支配を排除することができます。
農業生産に関して言えば、多様な作物を生産するようにすべきです。小規模の農家は、様々な作物を生産する農法を知っています。それによって、食事のバランスや市場における食料の余剰が確保されるでしょう。多国籍企業の影響力は、一定の制約を受けるべきです。主食を国際的に取引することは、最小限の数量の範囲内にとどまるべきです。
私たちヴィア・カンペシーナは、確信をもって言うことができます。小規模農家は、世界の食料需要を十分にまかなうことができるのです。小農民は食料危機を解決するうえで重要な位置を占めるべきです。今こそ食料主権を確立すべき時が来ています。
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東北タイで農業営むカティン・カーサさん
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