昨年9月のビルマ(ミャンマー)の民主化蜂起で指導的な役割を果たした女性活動家ニーラーテインさんが今月10日、旧首都ヤンゴンで逮捕された。僧侶と市民のデモが軍政によって弾圧されたあと、多くの僧侶や活動家が軍政の追及を逃れて地下に潜伏したが、彼女もその一人。すでに逮捕された夫との間に生まれた幼い娘は親戚に預けていた。デモを取材中に軍に射殺されたフォトジャーナリスト長井健司さんについて、潜伏先から日本の市民団体の集会にメッセージを寄せ、「長井さんの死をきっかけに多くの日本のみなさんが正義の側にはっきりと与してくださいました。日本政府がビルマ軍事政権に対して支援をすることのないよう声をあげていただきたい」と自分たちの闘いへ日本の支援を求めていた。(永井浩)
昨年の反軍政運動は8月半ばに軍政が突然、燃料費の大幅引上げをしたことがきっかけだった。燃料費引上げへの抗議行動の口火を切ったのは、1988年の民主化運動で中心的役割を果たした学生たちをさす「88世代グループ」だった。ニーラーテインさん夫妻はこの元学生活動家たちのメンバーだが、抗議行動が反政府運動へと発展していくなかで多くのメンバーが逮捕された。夫のチャウミンユー氏も8月21日に12人の仲間とともに逮捕された。そのなかには、88年の民主化運動の学生リーダー、ミンコナイン氏も含まれていた。
彼らに代わって反軍政デモの先頭に立ったのが僧侶たちだった。デモは各地に広がり、最大都市の旧首都ヤンゴンでは多数の市民が合流して10万人規模に達した。脅威を感じた軍政は9月26日、ヤンゴンで治安部隊を投入して武力弾圧に乗り出し、僧侶や市民に多数の死傷者が出た。
ニーラーテインさんの逮捕を報じた、タイにあるビルマ民主化勢力のメディア、イラワディとミジマによると、彼女はヤンゴン市内で仲間の母親の見舞いにでかける途中に治安部隊に逮捕された。
運動が弾圧された翌10月28日に東京でおこなわれた緊急集会「ビルマ(ミャンマー)軍政と日本―日本外交を動かそう!」(共催:ビルマ市民フォーラム、在日ビルマ人共同行動実行委員会、(社)アムネスティ・インターナショナル日本、アーユス仏教国際協力ネットワーク)に、潜伏中のニーラーテインさんは以下のようなメッセージを寄せた。
ビルマから・・・・
日本のみなさまへ
ビルマを平和な、民主的な国にしていくために私たちは懸命にたたかっています。私たちにとって日本のみなさまの協力・支援は大きな励ましです。私たちの国では国民のほとんどは仏教徒です。この国を支配している軍事政権は私たちが尊崇する僧侶や学生、一般市民を暴力的な手段で弾圧しています。こうした国の状況を世界へ知らせようとしてくださった長井健司さんは軍の発砲によってその命を奪われました。
長井さんを殺害するシーンは世界中に報道されました。日本のみなさまもそうであるように、私たちはこの悲しい光景を絶対に忘れることはありません。長井さんの死はなにをもたらしたでしょうか。 日本のみなさんにとっては正義の立場から報道する優れたジャーナリストを失ったことになります。私たちビルマ国民もまたビルマの民主化と人権のためにたたかってくださった真の友人を失いました。
長井さんの死をきっかけに多くの日本のみなさんが正義の側にはっきりと与してくださいました。そのご判断を心からうれしく存じます。日本のみなさまには、日本政府がビルマ軍事政権に対して支援をすることのないよう声をあげていただきたいと思います。
私たちはどのような武力鎮圧や弾圧があろうとも、ビルマの平和、世界の平和、自由と正義のためにあくまでたたかいつづけます。日本のみなさん、日本政府も私たちとともにたたかってくださるものと信じております。
ありがとうございました。
(原文:ビルマ語/日本語訳:田辺寿夫)
★ニーラーテインさん逮捕の関連記事
IRRAWADDY September 11, 2008 Nilar Thein Arrested, Sources Say
http://www.irrawaddy.org/article.php?art_id=14229
Mizzima News September 11, 2008 88 generation activist Nilar Thein arrested
http://www.mizzima.com/news/breaking-news/1025-88-generation-activist-nilar-thein-arrested.html
ビルマの政治囚についてはこちら→ ビルマ政治囚支援協会(英語) Assistance Association for Political Prisoners(Burma)
http://www.aappb.org/index.html
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