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2008年10月27日09時20分掲載
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社会
東京都が都立病院切り捨て!? 自治体病院を企業の食い物にさせてはいけない 大利英昭(都庁職病院支部駒込分会)
妊婦をたらいまわしにして死に至らしめた東京都内の出来事の発端は、都立墨東病院の医師不足による受け入れ拒否にあった。この事態の責任をめぐり、舛添厚労相は「都には任せられない」、石原東京都知事は「国に任せてられないんだ。舛添くん、しっかりしてもらいたいよ」と、お互いに非難合戦を繰り広げた。だがこの背景を探っていくと、全国の自治体病院に先駆けて進んでいる都立病院を不採算部門として位置づけ、民営化・合理化していく政策に行き着く。それは国・自治体が一体となって進めている政策でもあり、同じことは全国でも進んでいる。いま自治体病院で何が起こっているか、『労働情報』737号に掲載された大利英昭氏の病院労働現場からの報告と提起をお送りする。(ベリタ編集部)
地域住民の命と健康を守るための自治体病院が存続の危機に瀕している。昨年成立した地方財政健全化法により、自治体病院の赤字が自治体の決算に連結されることになったからである。小規模な自治体では、病院の赤字が原囚で破綻認定される可能性も出てきた。
このようななかで、財政的には裕福な東京都が全ての都立病院の経営を絞りだそうとする計画が進行している。昨年11月、「都立病院経営委員会報告 今後の都立病院の経営形態のあり方について」が発表された。都立病院の充実・拡充は、ばしめから委員会の選択肢に入っておらず、実質3回だけの討議で「一般地方独立行政法人(非公務員型)が、制度的にも最も柔軟な経営形態」と結論し た。全ての都立病院を切り捨ててしまうということである。
裕福な東京都が全ての都立病院を放り出してしまえば、乏しい財源をやりくりして自治体病院を運営している自治体に、「東京都でさえ病院を手放しだのだから、『貧乏』な自治体が病院を持つなど贅沢」という圧力がかかることは確実である。
このように都立病院を守る闘いは、全国の自治体病院を守る闘いに大きな影響を与えることも確実である。「地域医療の中核を担う自治体病院を守る」、この一点で全国の自治体病院に働く公務労働者は産別を越え団結している。
◆自治体病院切捨ての背景の削減
<自治体病院の92%が赤字>
病院の経営を左右する診療報酬が4回連続で引き下げられている。これにより病院は、同じ治療をしても02年度より少ない診療報酬しか入ってこなくなっている。医療は不採算化させられているのである。
自治体病院はその中でも、とりわけ不採算な部門、僻地、救急医療等を担っている。従って、民問病院が赤字になるときには自治体病院の赤字は当然である。現在全国の自治体病院の92%が赤字経営であり、全国973病院の06年度決算は7000億円の赤字である。
<追い詰められる自治体財政>
今まで自治体病院の赤字は、自治体が穴埋めしてきた。ところが「三位一体改革」による地方交付税の削減は、35道府県を赤字に追いい込んだ。
「三位一体改革」は夕張を破綻させ、いくつかの市町村を破綻の瀬戸際に追い込んでいる。総務省は自治体の財政危機をいち早く見つけるために、従来の実質赤字比宰に加えて3つの指標を導入した。その一つ、連結実質赤字比率では、自治体病院の赤字分か自治体に連結され、「不健全な財政の指標」とされてしまうのである。
地域住民の健康と命を守るために、赤字覚悟で運営される自治体病院と、公営企業会計で運営される観光事業の赤字が同列に評価されてしまうのである。
<公共サービスは「住民の負担と選択」で>
強制された財政難の中、自治体の役割が捻じ曲げられようとしている。「今後の我が国は地方公共団体が中心となって住民の負担と選択に基づき各々の地域にふさわしい公共サービスを提供する分権型社会システムに転換していく必要がある」(「地方公共団体における行政改革の推進のための新たな指針《07年3月29日》」)。ここでは、公共サービスは「住民の負担と選択」であり、自治体の義務と住民の権利ではない。
そして自治体は、「『新しい公共空間』を形成するための戦略本部となり、行政自らが担う役割を重点化していくことが求められている」。つまり、議会での聞かれた議論ではなく密室の議論で住民生活に関わる全てを決めていくということである。これは地方自治の否定である。
<日本から自治体病院がなくなる>
昨年末に策定された[公立病院改革ガイドライン]には、再編後の自治体病院のあり方が図示されている。そこでは全ての自治体病院が地方独立行政法人、指定管理者の運営になっている。
総務省は、病床利用率が3年連続して70%未満の病院は病床数を見直し、診療所への変更も検討すべきと言っている。この総務省のプランでは、日本から全ての自治体立病院がなくなってしまう。
◆PFI病院−自治体病院の民間委託のもとで−
都立病院では、駒込、松沢、府中病院がPFIという手法を使って「民間委託」されようとしている。イギリスが発祥の址であるPFI (Private Finance lnitlatlve)というのは、民間の資金とノウハウを活かして、「安くて良質」な公共サービスを提供しようというのである。日本では「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」として99年にPFIを促進する法律が制定されている。
PFIの対象になる公共施設は私たちの身の回りにある、ありとあらゆる公共施設が対象になっている。生命に不可欠な水を供給する水道事業でさえもPFIの対象に入っているのである。
現在350以上のPFI事業が進行している。PFIとは、ありとあらゆる公共サービスを企業の儲け□に変え、自治体の責任を限りなく退行させる仕組みである。
<オリックスに食い物にされた高知医療センター>
現在日本では、高知医療センター、近江八幡市立統合防疫センターがPFI手法により運営されている。今、この2病院の経営が行き詰っている。PFI病院では、医療そのものは自治体職員が行い、周辺業務をPFI業者が一括して請負運営される。 周辺業務とは、給食、柱体検査、器械の管理、清掃、医療事務など多岐にわたる。PFIでは、これらの業務をPFI業者がさらに業務委託する。病院が直接業者に委託していたものを、そこにPFI業者が一枚かんで自分たちの利益を確保するのである。
「民間のノウハウを活かして」といっても、オリックス(高知)、大柿組(近江八幡)は医療には素人である。「無駄を省く民間のノウハウ」は、病院らしくないホテルのような豪華な建物を建設することぐらいにしか活かされなかった。
高知床療センターでは、病院本体は赤字なのに才リックスを中心にしたPFI業者は、1億6千900万円の黒字になっていたのである。さらに前院長とオリックスの担当者が贈収賄で逮捕された。PFIに限らず公共サーピスが民営化されるときには、行絞と民間業者の癒着が発生しやすい。高知PFIでは住民の命と健康を守るための自治体病院が、オリックスに良い物にされてしまったのである。
<近江八幡市民病院では民間委託で赤字が激増>
近江八幡では長年黒字運営されてきた市民病院が、PF1手法で開設・運営されるようになったがために、初年度に予想を10億円以上上回る24億円の赤字を計上することになった。コンマまあ可児が続けば、近江八幡市が財政破綻認定されかねない事態になりかねず、PFI契約の解除も検討されている。
<大手グループの独占契約>
駒込病院のPFI事業を落札したのは三菱商事を中心とした企業グループである。一般競争入札さが、応募してきたのは三菱だけだったのである。「競争原理が働いていないじゃないか」と言いたくなる事態だが、800床の駒込病院ほどの規模になると、巨大企業でなければ引き受けられなくなるのである。
神戸市立中央病院PFI事業でも、応募したのは伊藤忠商事を中心としたグループのみで決まってしまった。たった一社の応募で落札される、何千億、数十年の事業計画が結ばれるPFIは、官民癒着の温床になりかねない。
基本的人権を守る医療を、地域性民の命と健康を守る自治作柄院を企業の良い物にさせてはいけない。公共サービスとしての自治体病院を守る運動を作り上げよう!
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