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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2008年10月27日15時11分掲載
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アフリカから見る新しい世界
<2>ガーナは嵐の前の静けさ? 注目される金融危機と非公式経済の行方 小松原茂樹
米国発の金融システム危機は、欧州、アジアと急速な広がりを見せ、世界的な金融システム問題となっている。いわゆる先進国に加えて、発展途上国の中でも先進国経済と繋がりを深めているアジア諸国では、株価の下落を始めとする金融システムへの影響が次第に現実のものとなりつつある。
ところがガーナでいると日常生活レベルでは不思議な事にあまり金融危機の影響が感じられない。ガーナではガーナ系、ナイジェリア系、英国系などの銀行が最近になって個人市場の開拓を競いはじめ、銀行支店の新規開設ラッシュだが、どの銀行が経営危機に陥ったと言う話はまだ聞かない。それどころか、ガーナ証券取引市場は、この一年間の株価上昇率が60%を超えており、金融危機が深刻化した最近でも、総合株価の乱高下は見られない。
ガーナでは日常生活の大半が依然として現金決済やインフォーマル経済で、公的な金融システムがまだ充分に普及していない事や、ガーナ経済が依然としてカカオ豆と金に外貨獲得の大半を依存しており、製造業や商業などの分野で国際システムへの関与が深くないことなどがこの現象の背景にあるのかもしれないが、同じアフリカでも、南アフリカのヨハネスブルグ証券取引所では、対前年比で30%を超える下落率であることを考えると、アフリカだから金融危機に無縁であるとも考えられず、奇妙な感じである。
ガーナはアフリカでは南アフリカに次ぐ金の産出国であり、カカオ豆と共に国の発展を支えた最大の外貨収入源であった上に、最近沖合油田が発見されて数年後からの石油収入への期待が高まり、昨今ちょっとした天然資源ブームであった。しかしヨハネスブルグ証券取引所では、特に資源関連株の下落が大きい。
南アはアフリカでは群を抜いた経済大国だが、特に天然資源を通じで国際経済と深くつながっているために、国際金融システムの混乱に端を発した世界的な実体経済の減速がすばやく影響しているのだろうが、これはガーナにも他人事ではない。この10年間一貫して上昇を続けた金価格が2008年に入ってから下落に転じ、石油価格もピーク時の半分以下に下落する中で、ガーナの政策・戦略にも早晩世界的な景気減速の影響が現れてくるのではないだろうか。
また、ガーナでは全人口の1割とも2割(200万から400万人)とも言われる人々が欧米諸国やナイジェリアに移民しており、それらの人々からの送金が人々の生活に大きな役割を果たしている。ガーナ中央銀行は2004年に海外ガーナコミュニティーからの送金が12億ドルに上ると予測した。ガーナでは頭脳流出が深刻な問題だが、同時にそれらの人々からの本国送金は、輸出に次ぐ外貨獲得源でもある。
また、ガーナでは地縁血縁を通じた相互扶助のネットワークが強く、海外に移住あるいは出稼ぎに出た人々からの仕送りその他の非公式な支援は、直接ガーナ全国の家族、コミュニティーに渡るため、公的な支援を補完して、ガーナ国民の生活レベルの維持・向上に大きな役割を果たしていると考えられる。これらの人々が、先進国経済の減速によって影響を受ければ、程度の差こそあれ、彼らからの仕送りに依存しているガーナ人の生活も影響を受けることになる。
非公式経済と言うだけに実態把握はなかなか難しいが、ガーナは公式経済よりも非公式経済において実はグローバル化が先行していたのかも知れず、金融システム危機から始まった世界的な経済の減速が、結局は非公式経済を通じてガーナ人の生活により具体的な影響を与える事になるのかもしれない。
非公式経済は発展途上国においては特に大きな役割を果たしている。グローバルなシステム危機が非公式経済にどのような影響を及ぼすのか、あるいは非公式経済やネットワークをいかに把握して国の安定・発展に生かすことが出来るのか、注目すべき分野であるように思う。
余談ではあるが、筆者個人も給与がドル建てであるため、金融危機に端を発した為替レートの乱高下は生活に直接の影響を及ぼしている。円に換算した給与は大きく目減りする反面、英国やユーロ圏はポンドとユーロが下落し、これまでのようにドルの価値が低すぎて全く手が届かない存在と言うわけでもなくなってきている。ガーナの通貨であるガーナセディも対ドルレートはあまり変わらず、ドルが全面安というよりも円だけが突出している感じである。 (つづく) (本稿は筆者個人の感想であり、組織としての見解ではない)
*小松原茂樹(こまつばら・しげき)氏=国連開発計画ガーナ常駐副代表 1966年徳島県徳島市生まれ。東京外国語大学英米語学科を卒業後、ロンドンスクールオブエコノミクス大学院で国際関係論修士号を取得。92年より02年まで(社)日本経済団体連合会事務局に勤務。その間95年から98年まで、OECD(経済協力開発機構、パリ)にマネジャーとして出向。02年より07年までUNDP(国際連合開発計画)本部アフリカ局にカントリープログラムアドバイザーとして勤務し、南部アフリカ諸国におけるUNDPの活動をサポートすると共に、人間の安全保障プログラムの普及促進、環境プログラムの強化、選挙支援の調整、日本・韓国との連携強化等に取り組む。07年7月より、国連開発計画ガーナ常駐副代表として、ガバナンス、貧困削減、環境・エネルギー、情報通信、経済政策等の分野における支援計画の策定・実施、緊急援助の調整等に当たっている。
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