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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2009年03月24日11時24分掲載
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中国
2500万人の失業「農民工」の生きる道はどうなるか 対応誤れば国家を揺るがす事態に
世界的な不況を受けて、「世界の工場」と称せられる中国でも中小の工場が倒産するなど、徐々に深刻さは増している。中でも、「農民工」と呼ばれる農村出身の出稼ぎ労働者は真っ先に解雇の対象となり、社会不安の火種となりつつあり、さらには国全体を根幹から揺るがす事態にもなりうる。その根本的問題に迫る。
世界的な経済金融危機の中、中国経済の衰退も加速している。ここで真っ先に影響を受けるのが農民工だ。政府の計算によると2009年の旧正月までに、すでに2000万人の農民工が職を失って帰郷し、一方で新たに職を求めてやって来る農民工が500万いる。つまり2500万の失業問題が緊急課題となっている。
しかし現在都市で働いている農民工と失業中の農民工の数について、政府は正確な統計をとっておらず、大まかな数字さえ把握していない。一般の推算によれば、現在の農民工の総数は1億3000万〜1億5000万、失業中もしくは新たに職を求める農民工が2500万〜3000万と言われている。さらに今年の第1、第2四半期に経済がさらに落ち込むことで、失業者および求職者はさらに増えるものと見込まれ、その数は3500万〜4000万に上ると見られている。
膨大な数の失業者が故郷に帰っても、耕す土地もなければ仕事もない。もちろん再び都市に戻っても仕事はなく、新しいホームレスや貧民となる。都市や農村で道を見失った人々が何か問題を起こしたり、働く権利や生活する権利を求めて起こしたりする事件が増えることが予想されるが、今年はその発生がピークとなるであろう。早急に対応しなければ、その勢いは炎のように広がり、社会を揺るがすことになる。農民工の失業問題は中国にとっての急務である。
農村からの出稼ぎ労働者の問題は、農業社会から工業社会への移行を果たした国なら、皆経験するものである。しかしそれは計画経済のもとに発生したものではなく、歴史的によくある、都市と農村の二元社会が、工業化および都市化を果たす初期段階で自然発生するものである。そしてそれは市民化や市場化といった市場経済の発展にともない、おのずと解決されていく。中国のように農民と労働者という2つの身分を背負うのではなく、各人がそれぞれの業界の市民としての労働者に収まるという形で解決するのだ。
農民工問題は、中国独自の都市と農村の二元社会が工業化するプロセスで生み出された。この問題が深刻かつ特殊である理由は、中国が30余年にわたり進めてきた計画経済にあり、さらに農業、農村、農民が工業化のために大きな犠牲を払ってきたことにある。具体的に言えば、都市と農村の戸籍制度や、農民を縛りつける農村の土地制度が未だ改革されないことが原因で、このために三農問題(訳注:農業、農村、農民の問題)や三大格差問題(都市と農村、貧富、地域の格差)が解決を見ないままなのである。
この10年、毎年のように農民が都市に流れ、2008年には農民工の数が約1億5000万となった。昨年11月以前までは、その1億5000万人に仕事があり就職先があったため、彼らは工業化、都市化、近代化に大きく貢献し、さらにその収入が故郷へと流れ、地元の発展や農村建設にも大きく貢献できたのである。それゆえ三農問題の深刻さがあまり表に出なかったとも言える。
そして今、世界的な経済危機と中国経済の衰退という二重苦の中、農民工問題が爆発した。これは三農問題のうちの農民の問題を大爆発させる可能性がある。
この状況を受け、三農問題は、農民工問題を加えた「四農問題」に発展したと言う学者もいる。中国の理論、制度、戦略、政策、措置から見れば、農民工問題はあくまで農民の問題とされている。さらに客観的な現実から見ても、社会経済制度や農村に土地や戸籍や家庭があることからしても、ほとんどの農民工は自分のことを農民と認識しており、農村の家こそが安住の地と考えている。都市の農民工に対する排斥も根強い。彼らはまず農民であり、都市で仕事にありつければ農民工と呼ばれ、二つの身分を持つ者として認識される。
▽農民工はお荷物
農民工は都市において、あくまでも臨時雇いの農民なのだ。表面的には農民であり労働者であるが、実際は農民でも労働者でもない流動人口で、失業すれば、よそからやって来た流れ者という立場になる。一方で、都市で生まれ育った新世代の農民工は数百万おり、その大多数は失業しても必然的に都市に残ることになり、都市の新たな貧民となる。
残酷だが、帰郷しようが都市に残ろうが、失業した農民工は社会のお荷物と見なされ、差別を受ける。しかも出身地と受け入れ地の両方の政府からお荷物と見なされるのだ。農民工の失業問題の解決は、社会的にも政治的にも政策的にも困難を極めるのは明らかだ。
問題解決の最終的な道は、農民の市民化を実現することである。つまり社会的差別、政治的差別、制度的差別、農民工の権利と利益の侵害、他の労働者との賃金格差をなくすことである。
まず制度だが、計画経済時代から続く都市と農村の二元社会制度を廃止し、三農問題の元凶である戸籍制度、土地制度および政策法規を取りやめ、土地の集団所有制を個人所有に切り替え、都市と農村、市民と農民の待遇を平等にして一元化した制度、つまり市民社会を実現することである。党中央、政府の文書、政策、法規において、政治的、制度的、社会的に差別された「農民工」という言い方はやめるべきであり、都市や町で働く農民工は、労働者、職員または住民、市民と呼ばれるべきである。
じつは農民工の問題を、経済社会が発展する歴史的過程の中で検証すると、この問題が起こった理由や法則を見つけることができる。中国の経済社会は、その昔、30年にわたる計画経済のもとで第一の工業化の波を経験し、その後30年近く続いた改革開放や市場経済への移行といった第二段階の工業化を経て、さらに今後30年で全面的な近代化と民族復興という第三の工業化を経験すると考えられる。
第一段階の工業化では、いわゆる「農村から都市を包囲し勝利を収める」といった理論や戦略が依然として継続され、農村が都市を支え、無償での調達によって初期の工業化が実現された。つまり農業、農村、農民、とくに農民の巨大な利益を犠牲にして重工業、軽工業の基礎を固めたのである。この時、都市と農村ははっきりと分けられ、戸籍制度を核とした二元構造の社会と政治制度ができ上がった。
▽農民工の失業は改革に不利
30年近く続いた改革開放で、中国は第二段階の工業化を経験する。それは億単位の農民工が極めて安価な労働力で、自らの利益を犠牲にした上に成り立ったもので、その条件の悪さは世界でも最低レベルであり、こんなものが成立したという意味では史上例を見ないものであろう。彼らの犠牲と貢献のおかげで、中国は都市化、近代化を加速し、グローバル化を果たしてのし上がった。
第三の工業化へ向けた30年を歩もうとする現在、世界的経済危機と国内の経済衰退のダブルショックを受け、3000万にも上る農民工が失業していることは、農民工の制度そのものが歴史的に行き詰まり、三農問題が工業化の道を阻んでいることの現れである。理論と制度を見直し、三農問題と農民工問題を根本的に解決しなければ、中国の第三の工業化は始まらないであろう。
原文=『亜洲週間』09/3/22 記事=◆[萌+りっとう]轍元 翻訳=本多由季
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