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2009年03月27日00時19分掲載
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TPP/脱グローバリゼーション
岐路に立つ世界水フォーラム(上) ビジネスと人権のせめぎあい 松平尚也・山本奈美
2009年3月22日、イスタンブール(トルコ)で7日間に渡って開催されていた、第5回世界水フォーラムが閉幕した。世界水フォーラム(以下水フォーラム)は3年ごとに開催されてきたが、今回の大きな特徴は、「水が利潤を生み出す商品として捉える、民間企業支配下の最後の水フォーラムにするべきだ」との声が、フォーラム会場やイスタンブールから海を越えて、国際的に響き渡ったことだと言える。その争点とは何だったのか?世界中から集結した市民やNGOは何を訴えたのか?以下、緊急にまとめてみた。
◆企業と市民のせめぎあい
世界水フォーラムは、グローバル水企業の影響が色濃い民間シンクタンクである世界水会議(WWC)が主催し、イデオロギーに満ち た「水の私営化」の旗振り役を担ってきた。水フォーラムは国連など国際機関主催でないにも関わらず、世界各国から政府代表や閣僚級の役人が出席し、閣僚宣言も発表される。その動きは、各国の水政策にも大きな影響を与えていると言われており、世界の市民社会から大きな批判を受けてきた。
では市民は水フォーラムをいつ頃からどう批判してきたのか? 危機的な状況と言われる世界の水問題は、最も影響を受ける人々の参加を確保した上で議論なされるべきだ、と主張する声が大きく広がったのは、メキシコシティで開催された第4回水フォーラムである。「水フォーラム反対」を訴えるデモに世界から駆けつけた3万人が参加し、オルタナティブフォーラムを開催したことで、市民社会は大きなプレゼンスを示した。
そのうねりは、「ウォーター・ジャスティス・ムーブメント(公正な水運動)」とも呼ばれる流れを創り出し、水フォーラムの「イレジティマシー(非合法性)」を断罪する原動力となっていった。後述するように、市民やNGOのこのムーブメントは、今回の第5回水フォーラムにおいても水政策の根本的な転換を促す力となったと言える。
◆「水こそビジネスチャンス」
「誰もが水フォーラムに招待されています。その証拠に、誰もがイスタンブールに駆けつけていますよ」とAFP通信社に語ったのは、ロイク・フォションWWC会長(グローバル水企業であるマルセイユ水供給会社-スエズとヴェオリアの子会社-の専務取締役でもある)である。
確かに、水フォーラムは、世界中から2万5千人の関係者が「参加」する国際的イベント、と報道されてはいる。しかし、イスタンブールに駆けつけているのは、約3万円の参加費や安くない航空運賃そして滞在費を捻出することができ、その多くが経費で落とすことができる人々であって、世界に約10億人存在するとも言われる水にアクセスがない人々でも、日々そういう人たちと活動をともにする人々でもないのは確かである。水フォーラムでの議論や宣言文に、貧しい国で水問題の影響を直接受けている人々の声が反映されることはほとんどない。
イスタンブールに集結しているのは、スーツ姿の人々がほとんどで、「貿易見本市」と見まごうばかりの広大なフォーラム会場は、歩いても歩いても「のどが乾くのは困難である」と言われる。なぜなら企業が自社のペットボトルの水を差し出すからだ。展示されているのはペットボトルの水だけではない。ポンプやろ過装置、ドリルといった水道事業関連の最新技術も展示されたという。どれもすばらしい技術や製品であろうが、高価であることは明らかだ。
国連は、MDG(ミレニアム開発目標)を設定し、2015年までに水にアクセスできない人々の割合を半減させることを目指しているが、こうした高度な技術を使用している限り、その達成にはいくら資金があっても足りないと言われている。持続可能性からしても大きな疑問が残る、こうした高度な技術に投下される資金をもし現地に適合した技術に注ぎ込めば、10億人に水を供給することぐらい可能と考えるのは私だけであろうか。
グローバル水企業は、現在の世界の状況を「ビジネスチャンス」と呼ぶ。水のためのビジネス・アクションのジャック・モス氏は閉会式で断言した(注1) 。「水なしではビジネスはない。ビジネスなしでは水はない」と。
◆「水の公正」への弾圧
世界中で「水の公正」を求めて活動しているアクティビストもイスタンブールに集結したが、「水の公正」を求める世界からの市民の声は聴かれるどころか、トルコ政府によって激しく弾圧された。16日に開催されたデモで、世界水フォーラム会場に向けて「水はいのち、利益をうみだすものではない」と平和的に行進していた世界やトルコからの市民約300人に対して、高圧放水車や催涙ガスが使用され、17人が逮捕された。
世界で枯渇しかけている水の危機を訴えるフォーラムで、公正な水を訴える市民に対して高圧放水車が大量の水を浴びせかける姿の異様さを、アルジャジーラ の記者が皮肉を込めて表現している(注2)。「この水は飲料用水を使ってなければいいのだけど。」また、「この高圧放水車はフォーラム会場の展示商品の一つなのかしら」と。記事によると、「13~14トンの水が使用され、400リラ(235ドル、約2万5千円)と安いことからトルコ政府は放水車を選択した」ということだ。
また、2人の外国人NGOスタッフが17日に逮捕されている。会場の入り口で、「大規模ダムが人々や地球に悪影響と危険を与えている」というバナーを掲げ、世界水フォーラム参加者に対して、「すでに存在する、よりスマートでクリーンな解決法を選択するよう」訴えていたことが理由だ。
会場内にも数多くの治安当局や警官の姿が確認され、プレスルームの記者用パソコンのインターネット履歴をチェックする諜報員がいたり、パネル参加者の発言が好ましくないと、発言者が強制的に外に連れ出されている。このように、表現の自由の侵害というべき事態がいくつも報告されているにもかかわらず、主催者である世界水会議(マルセイユにある、グローバル水企業の影響下にある民間シンクタンク)からは何のコメントもされていない。それどころかフォーラムの運営方法が「(誰にでも)オープンで、参加が確保されている」と謳っているのを聞くと、明らかに言葉の意味をはき違えているとしか思えない。
(注1) ipsnews.net/text/news.asp?idnews=46227 (注2)中東カタールのテレビ局。西欧社会とは異なるアラブ世界からの視点に立った報道には、評価がある。インターネットで英語での記事が読めるほか、テレビ番組も一部視聴可能。記者の目からみた第5回世界水フォーラムを「World Water Forum Diary」としてブログ式に綴ってあるのは非常に興味深い。
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