比国籍のカルデロン一家は、両親の在留を認めれず、13歳の少女を日本に残して帰国する。日本に在留するノリコさん(13)の学校生活や将来のための資金は殆ど無い状況だ。この件を担当し、一家の日本在留のために活動してきた法律事務所は、彼女の就学等を支援する「のりこ基金」を立ち上げ、広く市民の支援を訴えている。(村上力)
今回のカルデロン一家の件は、広く知られる事件となった。市民の間に一家の残留を求める署名運動が広がり、多くの報道機関がこの件を取り上げた。例えば新聞は最終的に「産経新聞」を除いたほぼ全社が、この一家の主張を報道していた。
なお「産経新聞」については、当初は一家の日本に在留を希望する主張を伝えていた(※1)。それに対して、「外国人犯罪追放運動」「主権回復を目指す会」などの、“叩き出す”ことを要求する団体が、2月17日に「産経新聞」に対して抗議行動をしている(※2、3)。その後「産経新聞」は、社説「主張」にて「――温情を優先するあまり、あしき前例をつくるのはまた問題だ。違法を見逃した場合、それがアリの一穴となり犯罪を呼び込むことにもなりかねない(3/13日付)」と入管を擁護した(※4)。
この一家の件は、国連の人権理事会の特別報告者が問題意識を持ち、日本政府に対して情報提供を要請し経過がある。また、アムネスティ・インターナショナルなどの国際的な人権団体も、一家の在留を認めるべきとの声明を出すなどの動きを見せていた。つまり国際水準から見ても、この一家の強制退去は人道に反していたと捉えることができる。
カルデロン一家の両親は、4月13日にフィリピンへ帰国する。この件を担当している法律事務所の担当によれば、一家の貯蓄は現在の住居を引き払うことにより、殆ど底をつくという。ノリコさんの両親はそのような、生活の保障も無い状態で、フィリピンへ帰国する。
ノリコさんは日本に在留するが、彼女を支える経済的な基盤は十分とはいえない。ノリコさんを引き取る親族も懸命に面倒をみるだろうが、いまの日本ではただでさえ生活を送ることに困難を伴う状況がある。その上、これまでの想定外の支出になることは明白だ。例えば修学旅行等の準備等も含めて就学をしっかりと支えるための基盤は不安定と言わざるを得ない。また、現在日本政府や行政は、この一家に対しての支援や保障をしていないようだ。
この一家の件を担当していた法律事務所は、保障もないまま日本に在留するノリコさんの就学などを資金的に支援するための基金「のりこ基金」を立ち上げた。集まったカンパは法律事務所側で管理され、ノリコさんの就学のために提供されるという。今後その収支はブログ等(※5)で報告される予定である。
この件とほぼ同じといえる境遇にある家族が、まだ多くいる。他方、昨今の不況の中で多くの人々が苦境に陥り、その人々に対する支援の声も多く挙がることは容易に想定される。だからこそ今後、このような結果が続くことがないように、多くの人々の行動をお願いしたい。以下、法律事務所からのお願い文を転載する。
―――以下転載
のりこ基金立ち上げとご支援のお願い 2009年3月9日 弁護士渡辺彰悟
1. 本日カルデロン一家の父アランと母サラが東京入国管理局に出頭しました。 2 .本日の手続において法務省入国管理局による強制退去が一層現実的なものとなってきたと判断せざるを得ない状況になりました。 3 .カルデロン一家は最後まで法務大臣に対して一家全員に対する在留特別許可をお願いしたいと考えています。この決断に現在も変更はありません。法務大臣にはぜひとも再考をお願いしたいと考えています。 4 .この間,非常に多くの方から“(のりこの)里親になってもいい”,“支援をしたい”というありがたい申入れをいただきました。ただ,この間家族としては家族3名全員での在留を希望している家族としてはこれまで,お申入れに対して正面からお答えすることができませんでした。これまでのお申入れに心からの感謝を申し上げます。 5 .ただ,現時点においてこのような状況を迎え,のり子の今後の日本での生活を支えるための経済的な基盤が必要になることは明らかです。
そこで,のり子の「就学費と生活費の援助」と,「のり子の本邦においての生活を援助」を目的としてのりこ基金を立ち上げます。 今後,ご支援は下記基金宛にお送りいただきますようにお願いを申し上げます。皆さんからの支援によって,のり子の日本での継続的な就学・生活を支え,ひいては家族を支援したいと考えます。 心から,皆さんからの支援をお願いいたします。よろしくお願いします。 <のりこ基金>(ゆうちょ銀行)
ゆうちょ銀行からお振込みの場合:10070 31787101 ノリコキキン その他銀行からお振込みの場合: 店名:00八(ゼロゼロハチ)店番:008 口座番号:普通3178710 口座名義:のりこ基金(ノリコキキン) ―――以上
参照
※1 産経新聞:私は日本人だと思って生きてきた 比人女子の在留許可、あす判断 :http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090211/trl0902112105002-n1.htm
※2 侍蟻(「外国人犯罪追放運動」):[不法滞在擁護]産経『新聞』を疑え! :http://blog.livedoor.jp/samuraiari/archives/2009-02.html#20090217
※3 主権回復を目指す会:<不法滞在(犯罪)を支援する産経新聞の堕落> 両親(不法滞在)がフィリピン人なのに「私は、(自分が)百パーセント日本人」と居直る無法 反日左翼に同調する産経新聞の「可哀想」を許すな! :http://www.shukenkaifuku.com/KoudouKatudou/2009/090217.html
※4 産経新聞:【主張】フィリピン人一家 同情と法の運用は別問題 :http://sankei.jp.msn.com/life/trend/090313/trd0903130257001-n1.htm
※5 いずみ橋法律事務所:カルデロン・アラン・クルズ一家に在留特別許可を! :http://blog.goo.ne.jp/izumibashilaw
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