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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2009年04月06日00時11分掲載
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スウェーデンの森から
財政難でゆらぐスウェーデンの医療体制 お医者さんに会うまでが大変 M・オルソン
庭のクロッカスが咲き始めた。長かった冬に終わりを告げ、ようやくここスウェーデンにも春が訪れてきてくれたようだ。今冬も、職場で、学校で“モーゲン・インフルエンザ”が猛威を振るった。モーゲンとはスウェーデン語で「お腹」。激しい嘔吐や下痢に襲われ、2〜3日は完全に潰れ、1週間かかってようやく復調の兆しが見られるヘビー級のウィルス性胃腸炎だ。訳もない。長い冬の間、外気はマイナス気温が常だ。絶えることなく暖房・暖炉がたかれ、室内の空気は極度に乾燥している。嗽い・手洗い、換気の習慣もなく、(実際、寒さのため二重窓が凍りつき、開かないことが多いが・・・)、室内の保湿対策も無いようだ。日本では評判のスウェーデン製某メーカーの「加湿器」も、こちらの電化ショップで一度も目にしたことがない。これではあっという間に空気感染されてしまう。
◆まず「家でようすを見てください」
社会福祉として名高いスウェーデン。医療に関しては1928年に施行された病院法により、国は住民への医療サービスを行う義務があると記されている。確かに税金は高いが、医療費は20歳までは無料。20歳以上も、診察前、受付にて基本的に約200-300クローナ(2.500-3.500円)の手数料を払えば済む。窓口は異なるが治療費が高額な歯科に関しても18歳未満までなら、虫歯も矯正費用も無料である。
スウェーデンの医療サービスはは次のような構成されている。
1 Vår central またはプライベートハウスドクター 人口約5千-5万人の都市・自治体に属する診察所
2. 総合病院 人口約5万人以上の都市・地区・自治体内に属する病院。
3. 大学病院 (国内6つ Umeo, Stockholm, Uppsala, Linkoping, Goteborg, Lund) 歯科、産婦人科、また救急外来を除いたあらゆる症状について診察を必要とする場合、まずは自治体に属する(1)Vår centralと呼ばれる診察所に電話相談をし、予約を取る。当日、もしくは数日後、Vår central駐在のドクターによる診察(またはナースによる問診)を受け、必要に応じ処方箋を発行してもらう。また、ここVår centralでの診断により、専門科医による診察が必要とされた場合は、該当する○○科が駐在する(2)*総合病院へカルテが送られ、再診予約通知を待つ。この段階でようやく専門医による診察があり、内視鏡、CTやMRIなどの検査を受け、診断を受けることになる。総合病院では手術・入院病棟が整っているが、更に精密検査が必要な場合、また重度な症状の場合は専門医の中でも「スペシャリスト」と呼ばれるドクターが駐在し、最新高度な医療機器が揃う大学病院へ送られるのが一般の流れである。 しかし、医療現場での現実は「医療サービスを行う義務」とはある意味程遠い。Vår centralに予約を入れ、まずドクターに会うことが非常に困難なのだ。頭痛、のどの痛み、熱などいわゆる一般的な風邪の症状を訴えたところで、市販薬を勧められるか、「2−3日様子を見てくれ」−と、即予約を入れることは不可能に近い。「多少の体調の悪さで、全患者へ診察・検査を提供していては、税金が追いつかないからだ」ーと皮肉な声も聞こえてくるが、それはそれで全く的外れではないようにも思えてくる。
文頭で触れた強烈な「モーゲンインフルエンザ」でさえ、同様の対応だ。嘔吐を繰り返す子供の症状を訴えても「感染するから連れて来ないでくれ」と言われ、途方に暮れた日本人友人もいる。今冬、我が家の子供も突然の嘔吐と下痢に「モーゲンインフルエンザか?」Vår centralへ診察予約の電話を入れると、「今日は予約でいっぱい。水分を補給しながら、様子を見て、また電話をしてほしい」とのこと。翌朝電話をすると、別の受付女性が対応し、「モーゲンインフルエンザであれば、2-3日で落ち着くからもうしばらく様子を見てくれ」と結局は予約は受け付けてもらえなかった。
幸い、数日後には子供はいつもの元気を取り戻したが、本当の原因はわからないままだ。ちなみに8歳の子供はスウェーデンでこれまで一度も医者のお世話になったことがない。診察してもらう機会を得られなかったと言うべきかもしれない。風邪をこじらせた時は、市販薬とひたすら栄養ある食事と睡眠だ。5歳で罹った水疱瘡も「うつるから」と診察予約は断られ、電話での対処法アドバイスで終わっている。ひたすら「健康」な子供に感謝だ。
閉鎖・広域化される救急外来
それではVår centralに予約が入らず、医者に診察してもらえない、突然の体調不調、異変、怪我の場合はどうすればよいかー。
この場合、人々は総合病院(もしくは大学病院)に併設されている「Akut」(救急外来)へ行くことになる。しかし「救急」と言いながら、スウェーデン医療の大きな問題の一つでもある医者・看護婦不足から「待ち時間」の長さは半端ではなく、2−3時間待ちはで「早い方」と言え、本来の「救急」の意味は成していないように見受ける。胆石で救急車で運ばれた友人が、個室ベットに一人寝かされたまま2時間放置され、激痛で遠のく意識の中、ようやく医者が入ってきたという。先日も待たされ過ぎたご年配が、そのまま待合室でお亡くなりになったという不幸が起き、救急外来のあり方についてニュースで取り上げられたばかりだ。
スウェーデンを襲う財政難は追い討ちをかけるように、現状の医療サービスコストの見直しを求めており、削減項目案は1000件を超えるという。例えばストックホルム大学病院併設の「外来救急」では、救急車で搬送される患者以外は受容れしないことになった。
私の住む地域からは、北へ、東にそれぞれ40キロ程離れた都市に総合病院があるが、今、その一つの「救急外来」を閉鎖する案が検討されている。1分1秒を争う緊急事態に、居住地域によっては、病院到着所要時間がこれまでの2−3倍を要することも在り得るだろう。また広範囲地域から一つの「救急」に患者が集中し、対応する医者・看護婦数は変わらず。ーと「待ち時間」問題がさらに深刻化するのは間違いなく、状況は厳しくなる一方だ。一部総合病院ではコスト削減/医者・看護婦不足の両面から入院病棟全床の機能床数を半分、もしくは1/3に押させているところも有り、手術・入院待ちの患者数は増加する一方とも言われている。
理想郷のようにも聞こえてくるスウェーデンの社会福祉システム・「医療サービス」において、確かに良い機能も持ち合わせていると思う。しかし簡単には医者に会えない実態、医療コストの見直しが、無駄なく、効率よく改善され運用されるどころか、切々と私たち市民の健康な暮らしに「不安」を与えているのは間違いないと言えるだろう。
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