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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2009年05月18日17時40分掲載
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文化
《演歌シリーズ》(2) 遠藤実 三拍子(スリービート)の抒情(下) 佐藤稟一
遠藤実二十四歳。『お月さん今晩は』(歌・藤島恒夫)詞・松村又一)で作曲家デビュー。歌手への思い止み難く着のみ着のままで上京。“流し”で糊口を凌ぎながら、独学で作曲を勉強した。ことわっておくが、私は、遠藤実の立志伝やサクセス・ストーリーを書くつもりは、ない。作曲家になるまでの経緯や感動的な出会いにも興味がない。
◆”貧しさ”の叙情
しかし、遠藤の「ひどい貧乏」な青春と重なる歌い手長内(おさない)栄子、敏子との出会いには、心が動いた。双子の姉妹である。彼女らも北海道で唄いながらの“門付け”をしていたという。姉妹も歌手を志して上京、“流し”で歌いつづけた。ある宴席で歌ったのが縁でスカウトされ、遠藤の弟子となる。
「なにも言うまい 言問橋の/水に流した あの頃は/鐘がなります 浅草月夜」
後のこまどり姉妹のデビュー曲『浅草姉妹』むろん作曲は、遠藤実である。二人は、決してハモ・らない。同じ旋律(ユニゾーン)で歌うのだから微妙に音がずれ、そこに不思議な魅力があった。後に、『恋のフーガ』などのヒットを飛ばした双子のザ・ピーナツのハーモニーの唱法とは、対極の歌い方である。はぐれた母に遭う日を夢見る薄幸の少女の“流し唄”。遠藤のメロディも彼の青春とダブってしみじみ濡れる。涙まじりで歌われたのが、決して暗くなくむしろ建気に感じる。石本美由起の詩も両者に寄り添ってなかなかだ。遠藤は姉妹に、濃いアイシャドー、金きら模様の振り袖姿をさせ、三味線を抱かせ、自分の“流し人生”にダブらせ『三味線姉妹』を書く。こまどり姉妹も己が過去に、情(こころ)をたっぷり濡らして歌い、三味を瓜引く。
「お姉さんのつまびく 三味線に/唄ってあわせて 今日もゆく」
詩も遠藤。遠藤メロディの個性は、小節や装飾音をあまり使わないところにある。旋律が自然に流れとても歌いやすい。こまどり姉妹に供した曲は、小節や装飾音が比較的ない。それが、姉妹の歌声に溶けた。
◆三拍子−−島倉千代子との出会い
こまどり姉妹のデビューの一年前、一九五八年遠藤実は、可憐な−情曲を書いた。「こころに好きと、叫んでも/口ではいえず 」『からたち日記』歌手は、島倉千代子である。彼女は、『この世の花』(詞・栗条八十 曲・万城目正)でデビューして三年、『りんどう峠』(詞・西条 曲・古賀政男)、『思い出さん今日は』(詞・星野哲郎 曲・古賀)などヒット曲を連打、押しも押されぬスター歌手であった。しかし、“大人が歌う童謡歌手”といったレッテルが貼られたりして、やや停滞気味であった。『からたち日記』は、島倉のマンネリを振り払い歌手としての幅を広げた曲でもあった。
島倉千代子は、乙女から大人になりかけの女の初恋の思い出をこ・こ・ろ・で・すーきーと・さーけーんでもと三拍子に−つてあの独特の裏声高音でふるふると歌った。 島倉の歌調は、それまで“泣き節”と言われ曲も短調(マイナー)が多かった。この曲は、この曲は、長調(メジャー)でしかも歌謡曲には、少ない三拍子。それが、詩、旋律、歌声と美しく−み合い−情歌の傑作を生んだのである。語りのバックに流れる遠藤三拍子のメロディが優しく言葉をくるみ、セリフ入りの歌は、当らないのジンクスをも打破し大ヒットしたのである。
この歌は、北原白秋作詞、山田耕作作曲の子どもの郷愁ソング『からたちの花』を明らかに下敷にしている。『からたち日記』は、少女の思い出ではなく、初恋片思いの淡い情感を白いからたちの花に重ねて揺らし、島倉千代子の歌の幅を広げたばかりか、西沢爽の作曲家としての遠藤実の作曲家としての名を高らしめた記念すべき曲である。
『からたち日記』で染め上げた−情性は、『北国の春』、『高校三年生』にも流れ、遠藤メロディの特徴である。三拍子は、『学園広場』(歌・舟木 詞・関沢新一)。『みちづれ』(歌・牧村三枝子 詞・水木かおる)、『昭和流れ歌』(歌・森進一 詞いで)などの曲で弾み、中でも「今でも好きだ 死ぬ程に」と星影に叫んだ別れの曲『星影のワルツ』(歌・千 詞・白鳥−枝)が心に沁みる。この曲と『からたち日記』の三拍子がとても印象深いため、遠藤実は、“ワルツ王”とまで言われた。
最後に、これまで論じた曲も含め私の好きな遠藤旋律を歌手名とともに揚げ氏のご冥福を心からお祈りする。合掌
島倉千代子『からたち日記』、こまどり姉妹『浅草姉妹』と『三味線姉妹』、小林−『アキラのダンチョ節』、五月みどり『おひまなら来てね』、舟木一夫『高校三年生』、都はるみ『困ることョ』、三船和子『他人船』、山本リンダ『こまつちゃうな』、千昌夫『星影のワルツ』と『北国の春』、杉良太郎『すきま風』、−美二郎『夢追い酒』、小林幸子『雪椿』
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