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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2009年06月01日08時34分掲載
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ロシアン・カクテル
(6)キリル文字Ж 生命を生み出す女神、「春」を表す タチヤーナ・スニトコ
ロシアのアルファベットの中で珍しい形を持つ«Ж»という文字がある。読み方は /ʒ/で、英語の. Measureやフランス語の ‘j’ jamaisと同じ発音である。文字の起源は謎のようである。キリルというスラブ文字の語源となったフェニキアとギリシャアのアルファベットではなかった。
古代スラブ語では,“ジヴィチェ”という文字 は、 動詞 “生きる”の2人称複数命令形である(Live! 生きろ!)。古い本には、«Ж»という文字は図1のように描かれていた。 人の姿が「“世の中”の木」とその木には織り込まれている。木の枝は人の腹から出ている。古代スラブ語では“腹”(“ジヴォト”)は“生命”を意味していた。
“ジヴォト”の中には魂があるとスラブ人たちは信じていた。だから旧正教徒のキリスト教信者たちは魂を守るために十字架を胸ではなく腹につけていたのである。
古代スラブの“生命のシンボル”は、キリスト時代のシンボルと一緒にキリスト以前の時代のシンボル(ライオン、鳥など)がウラジーミル市にあるヂミトロヴ教会(1194-1197)の壁飾りに見られる。
古代スラブ人たちは、世の中を図2のような「“世の中”の木」のように想像していた。木の上には太陽と月があって、こずえには鳥と魂がいて、中の木の幹の周りには蜂が舞っており、木の下部には蛇と蛙とビーバーが住んでいる。木の下には美しい澄んだ泉がある。
木全体が人間を表している。たいていの場合、それは女性として解釈されていた。ロシアの刺繍には、木は手足を広げしばしば手には枝や花や鳥を持っている姿として、蛙のような姿の妊婦が描かれている。スラブ人たちはこの妊婦の姿の女神は次から次へと生き物を生み出すシンボルと信じているのである。
図案化された誕生と肥沃のシンボルが«Ж»という文字である。«Ж»という文字は“ジヴァ神”という女神のモノグラムである。ジヴァ神は“マコシ”という運命の女神の仲間の一人である。もう一人のジヴァ神の仲間の女神はマラ神である。ジヴァは“命”を意味し、マラは“死”を意味する。
ジヴァ神は地球に春をもたらし、人々に自然への感情を目覚まさせるのである。春には、ジヴァ神とジヴァ神のおともであるジヴィツァを見ることができる。彼女らは、心やさしい目つきで天空を飛びかいながら地表に目を落とすので、地表は緑で覆われ花であふれ美しくなるのである。
世の中が形作られると時も生ずる。時の流れのリズムからカッコウの鳴き声ができてきた。カッコウはジヴァ神の化身の一つである。スラブ文化では人間の魂はしばしばカッコウの姿でイメージされている。カッコウは、誕生の時間、結婚の時間、死の時間、四季の変化を知っている。春にはカッコウは天を開け、秋には天を閉じる。冬に鳥が帰って行くイリイ(ヴィリイ)という天国の鍵をカッコウは持っていると言われている。
「カッコウ、カッコウよ! 私はいったい何才まで生きるのか教えてくれ」という質問をカッコウにして、「かっこう」の鳴き声の数を数えることが出来る。今もカッコウを見かけると人々はいろいろな質問をする。
“カッコウ祭り”は5月最後の日曜日である。その日若い女性たちは親友と一緒に“クマ”になる。娘たちは白樺の葉で作った花輪の中を通してキスをして「クマになりましょう、クマになりましょう」と繰り返し、「お互いに親類のように仲良くなりましょう。私たちの人生はずっと一緒よ。どんな喜びもどんな悲しみも私たちの中を裂くことはできないの」と言うのです。 その祭りでは、娘たちは花輪とプレゼントを交換しあうのです。そして、カッコウを森の中のどこかに隠してしまうのです。 * * * 古代スラブの生命のシンボルを表す«Ж»(”ジヴィチェ”)という文字からは “ジト(小麦)”や“ ジリヨ(住居)”などさまざまな言葉が派生してきたのです。 (つづく)
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図1
図2
カッコウ時計
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