・読者登録
・団体購読のご案内
・「編集委員会会員」を募集
橋本勝21世紀風刺絵日記
記事スタイル
・コラム
・みる・よむ・きく
・インタビュー
・解説
・こぼれ話
特集
・国際
・農と食
・教育
・文化
・アジア
・入管
・中国
・市民活動
・米国
・欧州
・みる・よむ・きく
・核・原子力
・検証・メディア
・反戦・平和
・外国人労働者
・司法
・国際
・イスラエル/パレスチナ
・市民活動告知板
・人権/反差別/司法
・沖縄/日米安保
・難民
・医療/健康
・環境
・中東
提携・契約メディア
・AIニュース
・司法
・マニラ新聞
・TUP速報
・じゃかるた新聞
・Agence Global
・Japan Focus
・Foreign Policy In Focus
・星日報
Time Line
・2024年11月22日
・2024年11月21日
・2024年11月20日
・2024年11月18日
・2024年11月17日
・2024年11月16日
・2024年11月15日
・2024年11月14日
・2024年11月13日
・2024年11月12日
|
|
2009年06月13日11時34分掲載
無料記事
印刷用
ロシアン・カクテル
(7)実は美しく、味は苦く…“カリナ”にみるロシアの愛 タチヤーナ・スニトコ
ロシア文学には、幸せをテーマとしているけれど、そこには報われることのないさまざまな困難が待ち構えているといったものが少なくない。主人公は、いつかは幸福になる希望を持って人生を生きぬくが、苦しみにあえぎ続けたり、とうとう死んでしまったり、一生を通じて幸せとは縁遠い人生を過ごしたり、と最後まで幸福にはなれないのである。
ロシアの大地には、5月下旬―6月上旬にかけて北極地方を除く全ロシアの河岸や湖畔に花嫁のベールのような白いアジサイに似た花をつけるカリナの木があちこちに見ることができる。 秋が来るとカリナの木は火のような緋色の実で真っ赤に染まる。“カリナ”は“赤熱”意味をする。“カリナ”は“恋愛”・“幸せ”・“婚礼”の木である。昔は、カリナは“愛”・“馬鹿”を表すとされた。なぜならば、人間は恋に落ちると、自分を見失うからである。
カリナのハート形の小さい実には薬効があり、昔から薬として使われている。カリナの抗菌効果のため実は腐ることはなく、一年中新鮮さを保っている。 カリナの実にはレモンに比べてビタミンCは2倍、鉄分は5倍含有している。 お祖母ちゃんのレシピを使って、主婦たちはマーマレード、パスチラ、ジュース、ジャム、ジェリー、砂糖煮、蜂蜜煮、果汁、シロップ、ソース、酢、カリナ酒、果実酒、リキュール、カリナパイ等を作る。昔はカリナの種をひいてコーヒーのような飲み物を作った。そのカリナの実の苦味は寒くなると消えるので、カリナの実は冬にとるのである。
ロシアでは、カリナは驚くほど人気ある。若い女性はもっときれいになるためにカリナジュースで顔を洗う。婚約者にはカリナの実を刺繍したタオル(縁結びのタオル)をプレゼントする。結婚式ではカリナの実は新婚夫婦にプレゼントされる。その理由は、ロシアでは厳しい冬の寒さのために葉を落とした木々は裸になるけれども、カリナの木だけは炎のように真っ赤となり、新婚夫婦の家庭の愛に似つかわしい象徴なのである。
カリナの木は強度があるので強い魔法の力が備わっていると信じられているので、カリナの木の枝を枕の下に入れて寝ると、悪い夢や悲しい夢は見ることはなくてその反対に甘美な夢を見ることができると信じられている。カリナの大枝を折ってはいけないと信じられている、なぜならば災いが起こるからである。
“カリナ・愛情”は多くの歌のテーマになっている。その中に日本でもよく知られている有名なものとして、“カリンカ”(日本でのタイトルは“カリンカ”です)という歌がある。マリンカ(マリナ)は甘く、カリナ(カリンカ)は苦い。
「カリンカ」
“カリンカ カリンカ カリンカマヤ 庭には苺 私のマリンカ エイ …… 緑の並木 小松のかげの あの子を忘れぬわたし アイリュリ リュリ アイリュリ リュリ あの子を忘れぬわたし ……… いとしいあの子 かわいい娘 わたしを愛しておくれ アイリュリ リュリ アイリュリ リュリ わたしを愛しておくれ”
“赤いカリナ”は“美しくて若い女性”を意味する。“カリナは熟していない”(歌の言葉)という表現には、“その女性はまだ若くて、結婚するにはまだ早い”という意味がある。縁起のよい“カリナの木の橋“という表現は、結婚式の儀式と歌の人気のテーマである。
カリナの実には苦味がある。カリナパイも苦い味がする。“カリノヴカ”というカリナ果実酒も苦味がある。ロシアの愛には、恋愛にも苦い味がある。ポプラの歌の言葉は、それを語っている、“カリナは苦い、あなたの唇のカリナ”、“甘い実を二人で取った、苦い実を私は一人で取る“などである。
1974年にヴァシリイ・シュキシンの“赤いカリナ”という映画が封切りされた。これは、“ゴリェ”(ゴリェは悲哀を意味する)と言うあだ名の泥棒の前歴を持つ男の愛の映画である。この男は文通によって知り合った女性を愛して悲劇の最後を遂げるのである。(彼は最後には山賊により殺されてしまうのである。)
この映画はロシアの謎のひとつである“罪人はいかに純真な人になりえるか、又その逆にいかに純真な人が罪人になりえるのか”という命題についてのものである。 “赤いカリナ”という映画は、いかに人は愛により浄化されるのかという人間の魂をテーマとしたものである。
カリナという木は不思議な木である。枝葉細くて折れやすい。実の色は美しく鮮やかであるけれども苦い。初霜が降りる頃になると苦味が消える。(つづく)
|
転載について
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。
|
|
カリナの花
秋のカリナの実
映画「赤いカリナ」のポスター
|