大阪・鶴橋は、多くの在日コリアンが居住しているにぎやかな町である。商店街にはたくさんの韓国料理屋があり、韓国語が飛び交う。7月18日、その鶴橋を“在日北朝鮮のメッカ”と位置づけ、「在特会」元関西支部長増木重夫氏の率いる救う会・大阪や、「在特会」関係者などが、「許していいのか、北朝鮮の横暴!」と題して署名街宣とデモ行進を鶴橋地区で行った。現場では、拉致被害者救出運動が、排外主義者の隠れ蓑となっていることが再確認できた。(村上力)
●救う会と「在特会」の人間関係
7月18日のこの行動は、「許すな北朝鮮関西デモ実行委員会(実行委員長:西 秀士氏 救う会奈良副代表)」の主催で、実行委員事務局は「MASUKI情報デスク(主宰:増木重夫 救う会大阪代表)」となっている。当初、救う会・奈良、救う会・大阪、日本を護る市民の会の共催で、「在特会・関西」、主権回復を目指す会・関西、外国人参政権に反対する市民の会・関西が応援団体となっていた(※1)。しかし、当日の行動では、共催団体から救う会・奈良、「在特会・関西」が外れている。救う会・奈良に関しては、「離脱声明」が出されたようである。(※2)
今回の行動では、救う会と「在特会」の表立った協力はされていないように見える。しかし、中心となっている増木重夫氏(救う会・大阪代表、主権回復を目指す会・関西代表、外国人参政権に反対する市民の会・関西事務局長)は「在特会」元関西支部長である。また、参加者の中に、「在特会」現関西支部長川東大了氏の姿も見られた。つまるところ、この救う会活動には、少なからぬ「在特会」関係者がコミットしていると思われる。 なお、「在特会」をはじめとする「行動する保守運動」を担う運動家の多くが拉致被害者救出運動に関わっていることは、前掲の記事で指摘している。(※3)
●“在日北朝鮮のメッカ”
この行動が行われた鶴橋地区は、歴史的に多くの在日コリアンは居住する地区である。韓国からの来訪者も多い。救う会らは、そのような文化の交流地点を“在日北朝鮮のメッカ”という造語でもって表記している。配られたビラでは、北朝鮮の核・ミサイル開発の資金源、拉致の協力者は在日朝鮮人であると書かれている。
救う会らの行動には20名ほどの市民が参加し、午後2時頃から、ビラの配布と拉致被害者救出を求める署名街宣を鶴橋駅前で行った。
署名を呼びかける街頭演説は、拉致被害者の救出と北朝鮮の核・ミサイル開発に抗議するものでもあったが、実際は、「北朝鮮と朝鮮人は、我々日本人を完全に侮っている」「我々、勤勉で、真面目な日本人が、劣悪な朝鮮人・北朝鮮にやられてるままの状態であっていいのでしょうか」「我々を、我々日本人を見下し、あざ笑う朝鮮人に、反撃の声をあげ、拉致被害者救出のために、立ち上がるのです我々日本人は」などのナショナリズム丸出しの発言が多く見られ、「日本人よ立ち上がれ!日本人に勝利を!」と気勢を上げていた。多くの在日コリアンを前にしてのこうした演説は、あえて挑発行為に出たとしかみえない。
救う会らの演説や、配布されたビラに憤慨したのか、地元住民と思しき数名が「ウソつけやコラ!」「在特会帰れ!」などと抗議をしたところ、マイクを持った増木重夫氏は「私たちは、北朝鮮に拉致された横田めぐみさん、有本佳子さんたちを救出するため、街頭署名を行っています。」と複数回繰り返した。
救う会らは、鶴橋駅前での署名街宣の後、午後3時半から鶴橋地区一帯を巡るデモ行進を行った。このデモには30人ほどの市民が参加し、「大阪市は朝鮮学校の助成金を打ち切れ!」「大阪市は朝鮮総連から税金を徴収しろ!」「民主党は日本国民のために働け!」などのシュプレヒコールをあげていた。
●反「在特会」行動も
この日の救う会らの行動は、事前に告知されていたものでは「在特会」も協力していたものであった。その情報を入手した「アジア共同行動・大阪」「釜ヶ崎パトロールの会」「労働者共闘」などが、同日に「在特会・救う会などの差別・排外主義を許さない!」として、ビラ配布とデモ行進を同じ鶴橋地区でおこなった。
このデモには40人ほどの市民が参加した。市民らは「中国人労働者と連帯するぞ!」「在日韓国人・朝鮮人差別を許すな!」とシュプレヒコールをあげた。
※1:
http://s04.megalodon.jp/2009-0719-2219-31/shukenkaifuku.board.coocan.jp/?m=listthread&t_id=3315&summary=on
※2
http://blogs.yahoo.co.jp/sukuukai_nara/48937817.html
※3
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200905111500151
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