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2009年08月27日20時36分掲載
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中国
古都・南京にも開発の波(上) 「化け物」が住民を追いたて、跡地に高級マンション
北京、上海に続き、ついに古都・南京にも都市開発の波が押し寄せている。南京は西安、北京に並ぶ中国の古都。その最も古い街並みを残す旧市街地は南部(城南)にある。安品街、南捕張、門西、門東などという地名が、その歴史を物語る。しかし、開発の魔の手は古都の歴史を知る住民たちの犠牲をしいて、一部の富裕層にだけ利益をもたらそうとしている。北京、上海、杭州などに見られる観光目的で再現された古い街並みは、歴史学的な考察のないテーマパークだ。『亜洲週刊』に掲載された写真には、取り壊し予定の家屋に、立ち退きをさせたい住民に向けて貼られた札を写している。「早く立ち退けば利益がある。遅れれば馬鹿を見る」。(納村公子)
▽2500年の歴史を映す旧市街
南京の旧市街、南巷子、昼下がりになると馬さんは裸足で家の外に出て夕涼みをする。同じ横町の人々も三々五々集まってきて、世間話に花を咲かせる。馬さんは本名を喩永海というが、午年なので「馬さん」と呼ばれている。 70を過ぎた馬さんは午後3時ごろから夜までの時間、家の前に置いた縁台に集まってくる近所の人とおしゃべりをするのが楽しみだ。横町を通りかかる人も縁台に座って老人たちと雑談をする。どこそこの娘さんは出世したとか、誰それは仕事がうまくいっていないとかと世間話をし、どこかの家で困っていることがあれば、近所の人達が口をきけば面倒事も解決される。
しかしこの数か月、「縁台会議」で楽しい話題が出ることはなくなった。横町はいつのころからかいくつも減り、残っているのもどうなるかわからない。
09年から、彼らが住まう南京旧市街「南捕庁歴史街区」は大開発の波にのまれ、古い住宅が取り壊されて高級マンションや商業センターに変わってしまった。
この開発プロジェクトは、南京市の建設委員会によって設立された南京城建歴史文化街区開発有限責任公司が請け負い、現在までに1102世帯の住宅が取り壊され、住民が移転させられた。計画では、ここに将来「高標準の中国庭園ふうの別荘群と高層住宅」が建設される。
この地区はすでに歴史文化保護区として法的指定を受けている。また専門家によって、この地区が南京城の源にあたり、南京で明清代の風格を残す民家建築群である貴重な地区だと見られており、最近、29人の専門家たちが連盟で上申した結果、温家宝総理自ら取り壊しを延期するよう指示を出し、国務院から調査チームが派遣され、南京の陸氷副市長も「遅らせるか、一時停止する」と表明していた。しかし、これらの努力があっても、この18万平米、4200世帯の住民の住む地区は残せそうにない。
2006年、南京では「双拆」(違法建築と危険家屋の取り壊し)指導部が設立され、顔料坊、安品街、船板巷、門東の歴史的地区が取り壊された。南京市の蒋宏坤市長の総指揮のもと、陸氷副市長が常務副総指揮となって、08年に「危険家屋地区改造工作指導小組」が設立され、市長が組長、副市長が副組長となって2010年までに全市の危険家屋地区に重点を置いた改造任務を負った。 今年の春節後、「危険家屋地区改造」の大号令で、旧市街にわずか残っていた古い住宅地区が09年の「危険家屋改造計画」に組み入れられ、総面積100万平米が1年前倒しで開発されることになった。
馬さんの家は煉瓦づくりの平屋で、父親から受け継いだ先祖伝来の家だ。馬さんはここに48年間住んでいる。家の隣には古い井戸があり、言い伝えによると明の太祖、朱元璋のとき掘られたという。井戸の壁は青白く光り、つるべも残っている。馬さんによると、以前は近所の住民がここに水を汲みに来て、運ぶときに落ちる水滴で石畳が乾いたことがなかった。それでこの横町は「水巷」と呼ばれているという。
「水巷」を抜けると、宋代、元代のころの区画を残す「評事街」に出る。そこは明清代には南京で一番の賑わいを見せる商業地区になった。長い評事街を行けば歴史的地区を全部通ることができる。青煉瓦や黒煉瓦の壁、彫刻のある飾り窓、回廊式の中庭、長年修理の手が入っていないが、明清代の南京古建築が細部まで残っている。庭園の構造もはっきりわかり、古木がおおって風情はさまざまだ。
南京ではもうこのような街角は見られない。高いところから見下ろせば、旧市街が現代的な高層ビルに周囲をかこまれているのがわかる。都市の成長ロジックを外観だけで判断すれば、周囲の高層ビルや巨大な不動産広告、そしてすっかり取り壊された古い家屋を見れば、馬さんたちの伝統的な民家はのみこまれる運命にある。
2003年から始められた計画は、住民に説明をせず、意見も聞いていない。今年3月、横町の壁に「拆」(訳注:解体の意味)の字が書かれ、その後取り壊し・移転の作業が始まった。彼らには、補償額はいくらか、いつ立ち退くかの2つのことしか相談されない。
中国の都市開発で、これは「常態」だ。北京の胡同、江南の水郷地帯、成都の裏道、みな同じである。「常態」に照らせば、馬さんや近所の人たちは黙って引き下がるしかない。年老いた住民たちは遠い郊外地区に移転させられ、金塊と化した旧市街地が新興の富豪のものになる。「城南顔料坊」という地名も地図から消え、代わって現れたのは英国TESCOグループが開発した高級ショッピング・モールだ。
よく言われる解釈は「旧市街地の保護と新都市開発との矛盾」である。 「これは根本的に矛盾でもテーマでもない」と、南京大学歴史学部の周学鷹教授は憤慨して言う。2009年4月、周学鷹教授を初めとする29人の南京の学者が旧市街の城南を保護するために連盟書を上申した。署名した人には、梁白泉、蒋讃初、葉兆言、劉叙傑、季土家などの老学者もいる。
「南京歴史文化名城保護を呼びかける」と題されたこの連名書は国務院に送られた。学者たちは、2500年の歴史を持つ南京は、歴史を顧みることなく開発だけを行ってはならない、経済ばかりで人間を疎外してはならないときっぱりした態度表明をした。なんといっても城南は古来から続く南京の最後の血脈である。
▽歴史文化保護区を守る「最後の闘い」
50万平米の旧市街のうち、やと1平方キロに明清代の街並みを残した歴史文化保護区だが、いまはわずか南捕庁と中華門門西、門東の3か所しか残っていない。
署名した南京の作家、薛氷はこう言っている。「これは『最後の闘い』だ。もう後はない。最後の1平方キロを取り壊したら何もなくなる。保存できないはずはない。2500年の歴史がある南京にいったい歴史はどこに、文化はどこにある?」
今年5月、温家宝総理は南京の学者たちの呼びかけにこたえて指示を出し、住宅および都市建設部、国家文物局が指示を受けて南京の旧市街保護の状況、そして、「歴史文化名城名鎮名村保護条例」が守られているかどうかについて調査を行った。6月5日、調査チームが南京を訪れ3日間にわたって調査を行い、即時、南捕庁の甘煕旧居周辺の開発計画を取りやめるという決定を出した。
しかし、旧市街の住民の立ち退きは止められることなく、4200世帯のうち2600世帯がいなくなった。残りの1600世帯が立ち退きに応じずがんばっている。すると、暴力的な強制取り壊し事件が次々起きた。
7月10日、馬さんは、南市楼1号に住む母と娘が早朝6時、寝間着のまま、大柄な男たちに2階の家から担ぎ出され、大型トラックに家の中の物が積み込まれ、遠いところにある臨時住宅に連れていかれるところを目撃した。
馬さんや近所の人たちはこうした男たちのことを「化け物」と呼んでいる。この半年、彼らは「化け物」の騒ぎを見なれてしまった。「たいていは夜8時、9時ごろに4、5人が押しかけてきて、狭い部屋に居座り、夜中の1時、2時まで立ち退きを迫る」という。
悪質なものになると、糞尿をばらまいたり、ドアや物を壊したりする。平章巷7号に住む劉俊さんは、朝目が覚めると、ドア近くの窓の下に糞便をまぜたセメント袋が置かれていることが何度かあった。近所の人の話では、夜中に誰かが車で運んできたという。「ひどいことをする! 翌日、それを全部、あいつらの指導部の前まで運んでやった」と彼女は言う。 56歳の劉さんは90歳を過ぎた母と住んでいる。両隣はもう取り壊されてしまい、残っているのは彼女の世帯だけ。母親の体が不自由で動くことができないため、がんばっているのだ。
評事街188号の■[羽+隹]金花も「化け物」に襲われた。48歳の彼女は夫と二人で自宅の門庁で餃子店を開き、8年になる。彼らもいま残っている1600世帯の一つだ。6月6日、二人が餃子をつくっていると、二人の男が泥馬巷からやってくるのが見えた。男らは何も言わず、来るなり椅子や机をひっくり返し、餃子をぶちまけた。
住民たちによると、「化け物」は政府の開発事務所が雇っているという。彼らの仕事は立ち退かせる住民にいやがらせを行うことだ。「一回の出番で200元」だという。
■金花は警察に通報したが、解決されていない。8月4日、彼女は200人あまりの住民と政府に行き、立ち退きの補償金問題の解決と、強制取り壊しの停止を訴えた。しかし、「あの人たちはひどい言葉で罵倒するんです。おまえらなんか生きていてもしょうがないと。それが人間の言う言葉ですか?」「引っ越しできるものならしますよ。でも補償金があんなに安くて、私たちには仕事もない。ここを離れたら暮らせないんです」という。 (つづく)
原文=『亜洲週刊』09/8/23 張潔平記者 翻訳(抄訳)=納村公子
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