・読者登録
・団体購読のご案内
・「編集委員会会員」を募集
橋本勝21世紀風刺絵日記
記事スタイル
・コラム
・みる・よむ・きく
・インタビュー
・解説
・こぼれ話
特集
・国際
・農と食
・教育
・文化
・アジア
・入管
・中国
・市民活動
・米国
・欧州
・みる・よむ・きく
・核・原子力
・検証・メディア
・反戦・平和
・外国人労働者
・司法
・国際
・イスラエル/パレスチナ
・市民活動告知板
・人権/反差別/司法
・沖縄/日米安保
・難民
・医療/健康
・環境
・中東
提携・契約メディア
・AIニュース
・司法
・マニラ新聞
・TUP速報
・じゃかるた新聞
・Agence Global
・Japan Focus
・Foreign Policy In Focus
・星日報
Time Line
・2024年11月22日
・2024年11月21日
・2024年11月20日
・2024年11月18日
・2024年11月17日
・2024年11月16日
・2024年11月15日
・2024年11月14日
・2024年11月13日
・2024年11月12日
|
|
2009年12月19日13時35分掲載
無料記事
印刷用
沖縄/日米安保
<日米安保体制>という問題(下) 米軍再編に向け、戦後史を巻き戻すたたかいを 武藤一羊
米軍再編の「日米同盟―変革と再編」という文章は驚くべき文章です。もう一回これを読み直してみる必要がある。一口で言うと、日本の主権を完全に飛び越えて、自衛隊を米軍が一元的に指揮するという中身ですね。横田基地に共同作戦調整センターをつくると述べていますけれど、これは「調整」などではなくて、アメリカが直接に日本の自衛隊を米軍の一部として指揮するに等しいものです。
◆米軍再編
日米両軍の関係は連接性(コネクティビティ)と言いあらわされていますが、これは二つのものの協働ではなくて、文字通り「くっついている」、一体化しているということで、いざという場合には、米軍と日本軍の共同作戦は「シームレス」に、つまりシーム(縫い目)のないかたちで行われると表現されています。日、米と二つの部分があればそれを縫い合わせることになるので縫い目ができる。シームレスとはストッキングみたいに最初から一つのピースに編まれている状態です。
こうしたことを公然と文書に書き込む。しかもこれらは条約ではない、2+2というので、防衛庁長官、外務大臣、アメリカ側は国務長官と国防長官の間で合意し、調印する。そのような合意に効力をもたせるというものなのです。それを元にして、どんどん実行してしまうのです。そして沖縄から海兵隊をグアムに移すので、グアムでの基地や隊員住居や施設を日本の予算でまかなえという。座間に米陸軍の国際的司令部を置くなどということは普通考えられないです。日本の領土をアメリカの領土の延長と見なすということですね。
沖縄の辺野古基地計画はなかでも不透明この上ないいきさつで変更されました。最初は、辺野古の沖に海上基地をつくる計画だったものが、沖縄の人びとの粘り強い抵抗で進まないとみると、急にキャンプ・シュワブから海上に張り出したY字型滑走路の話に変わり、こんどはこれが絶対必要、それができなければ普天間基地は閉鎖しないなどとになる。こうしたことが、「米軍再編」という怪しい合法性を疑われる取り決めで進められているのです。
◆オバマ大統領の誕生
この間、アメリカ側には大きい変化が起こりました。ブッシュ政治のみじめな失敗のなかで、アメリカの有権者は「チェンジ」をかかげるオバマを大統領の座につけました。 オバマ政権の評価はいろいろあると思いますけれども、大統領選では下からの草の根の力で勝利したことは確かですね。アメリカの支配階級のかなりの部分も、ブッシュ亜流を支えるのは帝国にとってかえって危険と見て、首を据え変えることを選んだ。しかしオバマはこれまでの他の大統領に比べて、草の根の力に動かされる余地がより大きいことは疑いありません。その草の根の力がどれほど政治的な自覚に裏付けられているかは別の問題ですけれど。その点では自民党政権を倒した日本の有権者の力と似たところがあるのではないでしょうか。
客観的に言えばオバマという人はアメリカ帝国が没落するプロセスをなるべく軟着陸に導くという、そういう人だと思います。しかし、没落をマネージするということは、当然政策変更をはらむのですね。変化を目に見える形にしなければならない。帝国の方針を全面的に変更することはしないけれど、ブッシュのやり方はキャンセルせざるを得ない。しかしその全体的文脈のなかで、対日政策をどうするのかははっきりしていないと見えます。 実際は、クリントン時代に対日政策を立てたスタッフがそのままオバマ政権に横滑りしているのですね。例えば、キャンベル国務次官補は、ジョセフ・ナイとともにクリントン政権で東アジア太平洋政策を立てた人物で、安保再定義の推進者です。当時は朝鮮半島が統一しても米軍は居残るみたいなことを言っていた。そういう人物がまた出てきて、2010年は日米安保改定50年、過去の業績を顧みるだけでなく将来にどのように協力していけるか考えたいとなどと発言しています。
つまり、この日本通たち、日本知識を政治的資産としてワシントンで暮らしている人たちが、対日政策では強くオバマ政権に影響を与えていると言われています。そういう中で、アメリカ側から96年安保再定義以降の積み重なったプロセスをご破算にするという動きは出てこないでしょう。
◆自民党制の解体と鳩山政権の誕生
鳩山政権ができて、自民党が解体的状態に陥る。そこはアメリカと似ているのですけれども、非常に大きく違うのは、アメリカは民主党から共和党へ共和党から民主党へとの政権交代を何度も経験しているのです。ところが日本における自民党政権の敗北は、それよりはるかに大きな意味を持ちうるし持っていると私は思います。
日本の自民党政権というのは権力そのもの、国家制度だったんですね。自民党国家制という制度として存在していた。中国共産党やメキシコ制度的革命党もそういう意味の国家制度です。これが選挙で崩されたことは非常に大きい意味をもっていると私は思っています。この状況をどのようにこちらからの巻き返しに使っていくかということがすごく大事ですね。
民主党があまり信用できないことははっきりしています。民主党は自民党との対抗上比較的いいことを言っているし、いいことを本当に考えている人もいるでしょう。ただ、日米関係については、口先と腰の座り方との間のギャップがものすごいですね。脱官僚についてはある程度腰を据えてやろうとしているかにみえますが、日米安保関係については、自分がマニフェストに書いていたことを連立合意に入れることさえいやがって、抵抗したのですね。岡田外相や鳩山首相がアメリカに行こうという段階で、アメリカを刺激したくないという言い草、これにはびっくりしましたね。おずおずとしか言えないのだったら、交渉になんかならないじゃないですか。それは交渉じゃ無くてお願いなのですよ。今の政権の日米同盟についてのスタンスはお願い、もしくはおねだりスタンスですよ。
◆違う出発点に向かって巻き戻す
私はこの政局の変化の中で一番評価すべきことは、民主党政権が、既成事実をいくらか壊し始めたことだと見ています。これは非常に大きなことです。いままでの日本の政治というのは、小泉ネオリベラル改革を別とすれば、既成事実には手を触れない、これからは違った政策をとりたいけれど、いままで積み上げたことは壊さない、というスタンスを外したことはなかった。とくに日米安保や自衛隊の問題については、既成事実を一方的に積み重ねる一方でした。世論の方もそれを認めてきた。この間、何十年も自衛隊はどんどん大きくなってきましたが、いつの時点で世論調査をしても、これ以上の軍備拡張や軍事費の増加には反対という声が多数を占めていた。でも自衛隊は大きくなり続けた。これ以上は反対だけれど、これまでのことは認めるというものですね。 民主党政権が少なくともいくつかの分野では既成事実をぶち壊そうとしていることは、こうした惰性を破る意味では画期的なことだと私は考えています。その弾みに乗って、われわれが安保についての既成事実、少なくとも95年以来のでたらめな日米安保関係、その既成事実を取り崩す攻勢に転じなければならない、その好機であると私は思います。
これは既成事実を壊し、巻き戻していくプロセスです。既成事実はそのままにしてこれからは別のことで行きますでは駄目で、少なくとも米軍再編についての取り決めは、これを取り消すために、再交渉する、そういうところまで持っていかないといけない。そういいますと、では巻き戻していけば1960年安保に戻っちゃうじゃないかというお叱りを受けるかもしれません。巻き戻すなど、面倒なことはしないで、60年安保条約は1年間の事前通告で破棄できるんだから、それをやればいいのであって、米軍再編取り決めを取り消せとか地位協定を改定しろとかは、どうでもいい、いや安保を認めることになるじゃないか、という意見があるかと思います。
60年安保条約を1年の予告で破棄する、これは大事な落とし所です。それは人びとの間で忘れられている事柄なので、もう一度強調し、広める必要があります。しかしこの50年、積み重なったゴミの山をとりのけられずにいて、安保破棄の力が生まれるでしょうか。確かに巻き戻せば元に戻ると考えるのが普通かも知れません。60年安保に戻れ、その方が再定義された安保や米軍再編の安保よりずっとましじゃないか、となるかも知れません。 しかし巻き戻しには別の仕方もあるのです。既成事実の巻物を直角に巻き戻したら元に戻る。それではどうしようもないですね。60年安保がそもそもダメなもので、だからこそ大反対闘争が起こったわけですからね。
しかし私は違う戻し方があると思うのです。ちょっと斜めにこういう風に巻き戻すのです。巻き戻すのですけれども、そしてそれによって既成事実を取り消すんですけれども、ちょっと斜めに、斜め左に巻き戻すと、最初とは違うところに戻るのです。そういう巻き戻しをする必要があるのです。冷戦後の日米安保再定義状況、そして新自由主義的グローバル化の行き詰まった状況から始めて巻き戻していく、何に向かって巻き戻すかということを、はっきりさせながら、目前のゴミの山を取り崩していく、今はそういう作業にかかれる好機だと思うのです。巻き戻し過程はグローバルにも始まっている訳です。だから、日米関係だけ巻き戻さないというのはむしろ変なんです。そういうことをこの60年安保50周年に向かって、記念日闘争ではなく、始めていく必要がある。
問題は、民主党というのは大抵の問題について原理も原則もないのです。原則が無くて政策だけがある。私たちは原則から出発し、できるだけ民主党まで巻き込みながら、どうやって大きく巻き戻すかを考え、実行する必要があります。このヤマトの地でも、95年以降の米軍再編を巻き戻す、そして60年安保を更に遡って1952年にまで巻き戻す、さらに1945年まで巻き戻す。そしてその先に近代日本全体を巻き戻す。今、そういう動きを始める時期だろうと思うのです。
|
関連記事
<日米安保体制>という問題(上) 沖縄を米国の軍事植民地とした第1次安保から「冷戦の最前線日本」の第2次安保まで 武藤一羊
<日米安保体制>という問題(中) 冷戦が終わり、なんでもありの安保へ 武藤一羊
転載について
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。
|
|
|