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2010年01月11日23時36分掲載
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遺伝子組み換え/ゲノム編集
中国の遺伝子組み換え暴走始まる? 中国で遺伝子組み換えイネ栽培の可能性強まる 天笠啓祐
中国政府が、遺伝子組み換え(GM)イネ2品種を承認したようだという、有力筋の情報が、11月下旬に流れました。世界中を情報が流れましたので、正式に 承認した模様だと思いましたが、12月4日にやっと正式に、同国政府が認めました。中国の承認の仕組みでは、今後、品種登録を経れば商業栽培が可能となります。今回承認されたのは、華中農業大学が開発した殺虫性(Bt)イネ2種類で「汕優63号」と「華恢1号」です。
GMイネの商業栽培に向けて 動きだした国は、これまでイランしかありませんでしたが、そのイランでは栽培が進んでおらず、事実上中国が最初の栽培国になる可能性が強まりました。中国 では政府やその政策を批判する運動が事実上禁止されているため、世界で最初の栽培国になることが確実になりました。
◆安全性も疑問、懸念されるアレルギー性疾患
では、このGMイネについて 見ていくことにしましょう。中国では、以前から次の3種類のGMイネの開発が進められていました。1、殺虫性(Bt)イネ、2、CPTI(ニカメイガ耐 性)イネ、3、Xa21(細菌病耐性)イネです。そのうち、最初のBtイネが今回承認されました。このGMイネは、おもにコブノメイガとサンカメイガに対 して効果があるとされています。
2005年に、この中のBtイネで、しかも今回承認された中のひとつ「汕優63号」が、違法栽培され日本など世界数十カ国で流通していることが明るみに出ました。これは当時、グリーンピースが分析して明らかになったもので、2003年と2004年の2年間にわたって種子が販売されていたようです。この違法流通は、世界中で確認され、2009年末にもドイツで販売されている中国製食品から検出されました。この違法流 通事件では、同国の管理能力の低さが問題になりました。再び管理能力が問われるような事態が起きないか、懸念されます。
さらには、食品となった際の安全性も問題になります。というのは、このBtイネが作り出す殺虫毒素(Cry1Ac)は、アレルギー性疾患を引き起こす可能性があるとする論文があり、食品としての安全性に疑問が持たれているからです。
◆GMイネ栽培が破壊する生物多様性
さらにもう一つ問題になるのが、生物多様性への影響です。Bt毒素は、害虫だけでなく、蜜蜂やテントウムシのような益虫や水中昆虫にも悪い影響を起こすこ とが知られています。さらには殺虫毒素が土壌中に分泌されることで土壌微生物に悪い影響があるだけでなく、長期間栽培されれば回復困難な土壌汚染が起きる 可能性もあります。
さらに問題になってくるのが、原生種汚染です。メキシコでは、以前、栽培承認以前にトウモロコシの原生種汚染事件が起き問題 になりました。さらに現在も、GMトウモロコシの栽培承認をめぐってもめています。なぜ承認以前に汚染が起きたかというと、米国から輸入した食品や飼料に用いるトウモロコシを、種子に用いたからではないかと見られています。管理能力で前科がある中国です。今回は、イネの原生種汚染の危険性が強まります。
中国はイネの原産国であり、もっとも古くから稲作が行われてきたことにも象徴されるように、野生種が多く、もしメキシコのような事態になれば、生物多様性 にあたえる影響が甚大です。中国南部に遺伝子中心があります。遺伝子中心とは、もともとその生物があった地域を指します。その中心は、中国南部の雲南省のあたりから、ラオス、タイの北部、インドのアッサム地方あたりで、そこは遺伝子資源の宝庫であり、世界中の資源探査隊が訪れ、この地域の野生種を多数収集 されています。
その雲南省・アッサム地方から、主に3つの流れに沿って稲作が広がっていきました。あるものは長江沿いに広がり、やがて日本にも波及していきました。あるものはメコン川沿いに広がり東南アジア全体に波及していきました。またあるものはインドに広がっていきました。
稲作の起源は中国にあります。中国の南部と並び長江沿岸地域も、イネの野生種の宝庫であり、江西省や湖南省あたりでも野生種は発見されています。紀元前 5000年ころのもっとも古い稲作の遺跡が、長江下流の浙江省で発見されています。代表的な遺跡に河姆渡遺跡があります。GMイネは、稲作の故郷を汚染し破壊する危険性を強めます。
遺伝子中心にあるイネは蛋白質等の種類が多様であり、品種の改良で人間にとって有用な形質しか残らないようにしてきたため、その蛋白質等の種類が少なく偏ったものになってしまいました。その多様性が、野生生物を保護する意味に重みを加えています。例えば、新しい病気が 発生したときに、日本のイネにそれに対する抵抗性がないとき、その遺伝子中心のイネにはある場合が多いのです。汚染が進めば、その原生種が失われる可能性 があります。
◆日本への影響は
日本への影響はどうでしょうか。今回承認されてBtイネは、インディカ品種(長粒種)であり、日本が直接輸入しているジャポニカ品種(短粒種)ではありません。主食用としては入ってこない可能性が大きいですが、加工されて入っている可能性は十分あると考えられます。
以前、米エコノミスト誌が、中国でGMイネを開発した科学者に、日本や韓国でGM食品に対する抵抗感が強いことについて尋ねています。それに対して、科学者は「コメに関しては両国への輸出量が少ないため、問題ないと判断している」と述べていました。
中国は、着々とGM大国化への道を歩んでおり、10月29日には、北京にある経済・技術開発地域にGM作物の評価や試験を行う研究所の建設が始まりました。同研究所では、GM作物の食品としての価値の分析、環境への影響評価、そして各種検査を行う予定です。
また、GMイネの安全確認とほぼ同時にGMフィターゼ・トウモロコシも安全確認されました。申請したのは、中国第3の種子メーカーのオリジン・アグリテク 社。フィターゼは消化酵素であり、それが多く含まれることで家畜が栄養分を吸収するのを助けることができるようにしたものです。現在、中国ではGM植物 は、綿、トマト、ポプラ、ペチュニア、パパイヤ,甘唐辛子が栽培されており、これにイネやトウモロコシが加われば、GM作物栽培大国化することになりま す。
◆米国政府とモンサント社の影も
ではなぜ、中国はGM大国化しつつあるのでしょうか。その背景には急速に進む同国の工業化があります。中国の工業化の現場を支えているの は、圧倒的に農村からの出稼ぎです。労働力を工業に提供させるために農村の合理化が急がれているのです。そのひとつの手段がGM化と位置づけられているよ うです。また、急速な都市化の波は肉食を増やし、穀物不足を促進しています。いまや中国は世界最大の大豆輸入国であり、トウモロコシの輸入量も増大の一途 をたどっています。その穀物不足に対処するための切り札としてもGM化が進められているようです。ちょうど、1960年代に日本で起きた歪みを見る思いで す。
この中国でのGMイネ承認の背景には、さらにもうひとつ米国政府とモンサント社の影がつきまとっています。米国やモンサント社は、早期承認を求めて、働きかけを強めていました。そのモンサント社は、昨年11月4日、中国で初めてとなる研究施設開設を発表しました。このモンサント・バイオテク ノロジー研究センターは、北京郊外に建設され、中国の研究機関と共同で研究・開発が進められます。バイテク大国化しつつある中国市場を睨んだものといえま す。なお同社の類似の研究施設はブラジルやインドにも置かれています。モンサント社だけではありません。独バイエル・クロップサイエンス社も中国の国立イ ネ研究所との共同開発を進めています。
以前、2004年8月3日付けロイターは、もし中国でGMイネが栽培されると、GM作物の世界的暴走が始まるかもしれない、とロイターは伝えた。その中国で暴走が始まりつつあります。
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