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2010年02月14日15時01分掲載
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遺伝子組み換え/ゲノム編集
アフリカを狙え! 米国政府とモンサント社、それにビル・ゲイツ財団による食糧戦略 天笠啓裕
このところ、米国政府とモンサント社、それにビル・ゲイツ財団が加わえたチームによる、遺伝子組み換え(GM)作物を世界中に売り込む戦略が激しさを増している。売り込み先のターゲットになっているのが、アジアとアフリカである。モンサント社は、昨年末デンマーク・コペンハーゲンで開催された地球温暖化防止のための気候変動枠組み条約締約国会議(COPO15)において、環境NGO が募集したインターネット投票で、もっとも悪い役割を果たした企業に与えられる「怒った人魚」賞を受賞した。
◆ターゲットはアジアとアフリカ
同賞は、コペンハーゲンにちなんで命名されたもので、温暖化問題で最悪のロビー活動を行った企業に与えられた賞である。モンサント社は、地球温暖化問題で批判されている石油・エネルギー関連企業を上回る37%の投票率だった。次点は、ロイヤル・ダッチ・シェル社と全米石油協会だった。
モンサント社の、2009年度(2009 年8 月31日までの1 年) の種子及び種子の遺伝子の売り上げが73億ドルに達したことが明らかになった。2 位のデュポンとパイオニアハブリッド連合の売り上げが40億ドルであることから、モンスターとしての不動の地位は揺らぎのないものになっているといえる。なお同社の種子以外を含めた全体の売り上げは117 億ドルで、21億ドルの利益をあげている、とフォーブス誌(2009年12月13日)は伝えている。
そのモンサント社の戦略を支えているのが、ビル・ゲイツ財団である。同財団は、最近、農業プロジェクトの新しい指導者にサム・ドライデンを据えた。彼は、エマージェント・ジェネティクス社の最高経営責任者だったが、同社は2005年にモンサント社のものになっている。そのエマージェント社の前にはアグリジェネティクス社を設立しているが、その会社は現在、ダウ・アグロサイエンス社の傘下に入っている。同財団は、モンサント人脈をトップに据えたことで、その売り込みにさらに拍車がかかりそうだ。
◆GM稲と小麦の売り込みをはかる
そのモンサント社が売り込みをはかろうとしているのが、GM稲と小麦である。稲はIRRI( 国際イネ研究所) がその売り込みの尖兵になっている。いまIRRIは、ビル・ゲイツ財団の支援を受けて、C4稲プロジェクトを開始した。同財団は、このプロジェクトに 1100万USドルを投ずることになっている。稲は本来C3植物だが、GM技術を用いて、トウモロコシのような光合成効率がよく、早く成長するC4植物に転換させようというもの。
IRRIはまた、栄養価を高めたGM稲である「ゴールデンライス」を開発しているが、この稲が2012年にはフィリピンとバングラデシュで承認され、直後に商業栽培が始まるだろう、と発表した。ゴールデンライスは、ビタミンA ライスとも呼ばれ、ベータカロチンを増やしたGM稲である。同研究所によると両国に続いて、インド、インドネシア、ベトナムでも在来品種を用いて開発中だという。
小麦は、米国・カナダ・オーストラリアの小麦生産者協会が昨年5月、モンサント社の意向を受けたものと思われるが、GM小麦推進を求める声明を出したのがきっかけにして、一挙に動き出した。モンサント社はとくに干ばつ耐性小麦を武器に、開発を始動させた。小麦は世界最大の作付け面積を持つ穀物であり、その市場は大きい。同社は日韓の消費者やカナダ小麦局などの強い反対に直面して、2004年に一端は開発を中止したが、ここにきて風向きが変わったと判断したようだ。2008年のバイオ燃料ブームが火付け役となった食糧危機で、小麦価格が高騰したことが、きっかけだった。
◆米国によるアフリカの食料支配戦略
米国オバマ政権も遺伝子組み換え作物売込みにまい進している。現在の農務長官トム・ヴィルサックは、州知事時代にGM作物を推進した「モンサントの友人」という異名を持つ人物である。オバマ政権はまた、モンサント社の要職にあるマイケル・M・テイラーをFDA(食品医薬品局)の要職に起用している。さらに最近では、政府の貿易交渉の重要ポストに、農薬産業会の代表を選択している。このことに対して、環境保護団体や消費者団体、全米家族経営農家連合のような生産者団体等85の団体が、上院金融委員会がこの人事を承認する段階で、反対の共同声明を発表した。
その米国政府とモンサント社、それにビル・ゲイツ財団チームとなり、アジアと並びGM作物の売り込みを強烈に強めているのが、アフリカである。その先導役が、米政府国際開発庁である。同庁が連携を強めているのが、「緑の革命アフリカ」「アフリカ種子貿易協会」「西アフリカ諸国経済共同体」「西アフリカ種子同盟」といった団体である。
ビル・ゲイツ財団も新たに、ミシガン州立大学に5 年間で1040万ドル交付することになった。同大学は今後、アフリカ諸国がGM作物を導入できるようにバイオセーフティ規則を作成させるなど、各国政府農業省に働きかけていくことになっている。
昨年11月16日にローマで開催された食料サミットで、南アフリカ共和国ダーバンの大司教・ネイピア枢機卿が、「サミットはアフリカの人々がなにを求めているかを知らない。私たちにはGM作物は不要であり、水が必要なのだ。水さえあれば、よく育つ非GM作物がある」と述べた。 本来、その地域の人々にとって不必要なGM作物を売り込み、種子を支配し、それによって食料を支配しようとする米国の戦略が、いまアジアとアフリカを席巻しており、それに怒る人々との間で衝突を繰り返している。
(科学ジャーナリスト、市民バイオテクノロジー情報室代表)
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