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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2010年03月27日21時41分掲載
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中国
戸籍制度問題の本質を問う(下) 人権、国民の権利の面から改革を 秦暉(清華大学教授)
▽城郷統籌の落とし穴
中国では現在、多くの都市で都市建設には農民の利益を考えるべきだとし、とくに「城郷統籌」(都市と農村との共同開発)の試みを行ったいくつかの都市は、「改革の最前線」とされ、現地の「農民」に恩恵を与える措置を打ち出した。その措置の力量(重要なのは立ち退き補償と継続居住基準の引き上げである)は賞賛に値する。しかし、この「城郷統籌」は現地に戸籍のある「農民」と、「非農民」との格差を是正するにすぎない。だが、現実には中国の「流動労働者」制度がこれほど進んでいるいま、主として「外来の労働者」の血と汗が、現地の「農民」に利益を与えることは別にむずかしい事ではない。 外来の労働者が戸籍のある人口の数倍から十倍になっている広東省東莞市などでは、戸籍のある人口は、10年前から「都市と農村との格差」が消滅している。現地の「農民」は高額な地代を受け取り、実質的には「市民」より優位に立っている。しかし、現地に戸籍のある人口と外来の労働者の身分の壁は非常に大きい。現在の「城郷統籌」はこうした現象を上塗りしたものにすぎず、「最前線」とは言いがたい。
それだけではない。この「改革最前線」都市の成敗を評価する基準は依然としてこうなのだ。ほかの都市より豪華かつ壮麗な巨大ビルでいっぱいになったら成功、貧民街がたくさんできたら失敗というものだ。だから、こうした都市はほかの都市よりよけいに取り壊しと大建設、そして「都市の中の村を改造」し、ガーデンシティを建設し、ひいては強硬手段を用いて強引な建設を行う。「城郷統籌」の新措置が現地の「農民」の利益を考慮していても、貧しい借家人、すなわち外来の労働者たちの境遇がよくなるだろうか。
中国の戸籍制度の弊害は、戸籍そのものの問題ではなく、ただ「農業戸籍」を廃止すれば解決するというものでないことは明らかだ(農業戸籍廃止は必要なことではあるが)。この制度が差別しているのは「農民」だけではなく、より重要なのは「よそ者」、とくに外から来た「貧しい人」を差別することだ。後者2つの問題が未解決のまま、ただ「農業戸籍」を廃止してもたいした意味はない。
▽農地転換も差別をつくりだす
現実では近年、政府と企業とが結びついた「囲い込み運動」(enclosure movement)が盛んに行われている。すでに多くの地方で逆行する戸籍政策が行われ、農民に「農転非」(農業人口を非農業人口にする)を強制している。すなわち「村改居」(村を居民委員会に改める)、「鎮改街」(鎮を街道〔街〕事務所に改める)である(訳注:いずれも行政を都市部と同様にすること)。いったん「村改居」にすれば、農民の土地を取り上げることができる。つまり、政府が「あなたはもう農民ではない」と規定するからだ。 現行の土地制度では、農地がなければ農民の集団所有はありえない。「非農地」は国有地に確定する。従って、「農転非」にされれば土地の権利を失うことになる。多くの地方の農民が農業戸籍を守るために闘っている始末だ。
国民の権利を守るシステムと権力バランスのシステムがない状況で、農業戸籍を廃止することは、それを設立するのと同じように差別を生み出す。数年前、中国のある大都市の役人が、外国人記者から「将来、貧民窟ができることはないのか」という質問に断固として否定した。その主な理由は中国の農民労働者はほとんどが2つの居住地を持つからだという。つまり、家庭は村にあり、自分は都市で寮生活を送り、30歳過ぎまで働いて故郷に帰るので、たくさんの貧しい家庭が貧民窟を形成することはないというのだ。 しかし、この役人は1年後、こうした楽観的見方を改め、「2つの居住地を持つ人」の土地は利用方法が不経済だとして、彼らを都市市民に変える必要があると言い出した。始めそれは「外来の農民労働者」を都市市民にすることかと思ったら、そうではなく、現地に戸籍のある農民に土地を差し出させ「市民」にすることだった。
出稼ぎに出ようと思ったら、誰であっても「2つの居住地を持つ人」にならざるをえない。しかし、土地に目をつけられたら、「2つの居住地を持つ人」にもなれなくなる。戸籍改革がこのように変質してしまったらひどいことになる。
戸籍問題は人権、国民の権利という角度から全面的に考えるべきである。土地制度、社会保障制度、居住地の移動の制度とリンクさせた改革を行うべきだ。一つの都市から言えば、戸籍制度の改革は現地戸籍のある農民だけでなく、「外来の人」とくに貧しい外来者の境遇を改善させなければならない。国で言えば、改革の目標は、農民を国民とし、農民の土地を国民の財産とし、「農民労働者」を労働者に(「流動労働者」ではない)、「帰郷した農民労働者」を保障の必要な失業労働者にすることである。 (おわり)
原文=「亜洲週刊」2010/3/21 秦暉(清華大学歴史学教授) 翻訳=納村公子
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