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2010年05月13日00時15分掲載
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遺伝子組み換え/ゲノム編集
遺伝子組み換え作物をアフリカに売り込め ビル・ゲイツ財団が先導役 天笠啓祐
遺伝子組み換え(GM)作物を主にアフリカに売り込むための動きが、さらに活発になっている。その中心にあるのが、米国政府、モンサント社、そしてビル&メリンダ・ゲイツ財団である。
◆資金源はビル&メリンダ・ゲイツ財団
ビル&メリンダ・ゲイツ財団が、GM作物をアフリカに売り込むための新たな戦略が示された。アフリカの53国・地域が参加する世界最大の地域機関であるアフリカ連合が設立したバイオテクノロジーの専門家養成機関であるアフリカ・バイオセーフティ・ネットワークに資金を提供することである。GM作物を導入させるためには、各国に生物多様性条約・カルタヘナ議定書に基づくバイオセーフティ法を導入させる必要がある。しかし、この法律が厳しい規制をもたらすと、逆に導入の阻害物になりかねない。そのため緩やかな規制にするよう規制当局にバイテク推進の専門家を配置させる必要がある。その専門化養成の機関に資金を提供して、GM作物導入の道筋をつけようというものだ。(The New York Times 2010/3/31)
エチオピアを舞台にしたGM作物導入計画が明るみに出た。ここでは、米国政府とモンサント社が活発に活動している。米国政府では国際開発庁(USAID)が中心に位置している。そのUSAIDと協力して動いているのが、モンサント社などバイテク企業が作った国際アグリバイオ事業団(ISAAA)である。両者がいま進めているのが、エチオピアがGM作物を受け入れ難くしている、同国のバイオセーフティ法の変更をさせるための取り組みである。現地で動いているのが、ウガンダに拠点を置き、モンサント社と連携して取り組んでいる、USAIDの「農業バイオテクノロジー支援計画2」である。(Addis Fortune 2010/4/27)
ビル&メリンダ・ゲイツ財団の資金の提供を受けて、サハラ以南のアフリカに大規模な「遺伝子革命」を進めようとしているのが、米国アイオワ州立大学とケニヤ・ナイロビ大学の研究者による共同チームである。かつて進められた高収量品種の売り込みを「緑の革命」といっていたが、GM作物の売り込みをその「緑の革命」になぞらえて「遺伝子革命」と呼んでいる。その緑の革命の名前を持つAGRA(アフリカ緑の革命連盟)の支援を受けて、両大学研究者は、アフリカに導入するGM作物開発を進めている。このAGRAにも、ビル&メリンダ・ゲイツ財団が資金を提供している。(Iowa State University 2010/420)
◆反発するアフリカ諸国
このような動きに対抗して、アフリカ諸国の間で反発も強まっている。まずは、ガーナ政府がGM食品輸入規制法案を閣議決定した。この法案では、税関や入国管理局がGM食品の輸入を監視・管理することになっている。同国の環境・科学・技術大臣のシェリー・アリッティは「この法案が成立すれば、隣国との間でデータの交換が促進されるだろう」と述べている。(Government of Ghana 201/4/13)
ジンバブエ政府も、GM作物の近隣諸国からの流入を防ぐために、国境に検査官を配備することになった。これは安い輸入作物によって自国の農業が損害を受けている、という報告に基づいた措置である。政府はまた、この措置によって、家畜や野菜の病気が入るのを防ぐことができる、と述べている。(The Sunday Mail 2010/4/6)
ケニアの場合、3年間もの間、4種類のGMトウモロコシが食卓に登場していたことが判明した。2008年より総計で3万トンが南アフリカから入っていたのである。このことに、環境保護団体などが抗議を行い、ケニア政府も南アフリカからのトウモロコシの輸入を止めた。現在、4万トンのトウモロコシがモンバサ港で陸揚げを拒否されたままである。(Business Report 2010/4/8)
GM作物をめぐる動きは、いま、アフリカが主戦場になった感がある。もともとアフリカは、歴史的にヨーロッパ諸国とつながりが深い国が多く、GM作物に消極的なヨーロッパ諸国への作物輸出に差し障りが出るとして、GM作物導入に消極的だった。それがこの間、米国への傾斜を強めるなど大きく変化している。
◆米国では厄介者となったGM作物
その推進役の米国では、いまGM作物は厄介者になりつつあるのが現実である。現在、遺伝子組み換え(GM)作物は、除草剤耐性作物と殺虫性作物の2種類が作付されている。除草剤耐性作物は、ラウンドアップのような植物をすべて枯らす除草剤に耐性を持たせた作物で、それによって除草剤を散布すると、作物以外のすべての植物を枯らすことができるため、省力化・コストダウンが可能になるという性質のものである。
もうひとつの殺虫性作物は、作物自体に殺虫毒素を生産させ、害虫が作物につくと死ぬようにしたものである。そうすることによって、殺虫剤を撒かなくてすみ、これも省力化・コストダウンになるとしている。
その省力化・コストダウンをもたらす効果に問題が生じ始めたのだ。除草剤耐性作物では、除草剤耐性雑草がはびこり、殺虫性作物では、殺虫毒素耐性害虫がはびこり、ほかの農薬を使わざるを得なくなり、省力化・コストダウン効果が減じただけでなく、マイナスに転じ始めたのである。 とくに除草剤耐性雑草が増大し、除草剤の消費量が増え続け、深刻な環境汚染や経済性の低下が問題になっている。昨年、米国有機農業センター、憂慮する科学者同盟、食品安全センターの3 者は共同で最新の調査報告を発表した。それによると、とくに顕著なのが除草剤の使用量で、1996年から2008年までの間で3 億8300万ポンドも増えたことが分かった。またその増加幅の46%が、2007〜2008年の2 年間の数字だという。除草剤耐性雑草の広がりが深刻化している実態が数字でも立証されたことになる。
最近でも4月13日に、全米研究評議会(NAC)が、GM作物の有効性が失われつつある、という警告を発した。これは、除草剤耐性雑草が広がり、殺虫毒素耐性害虫が増え続け、雑草や害虫の管理ができなくなり、GM作物の有効性が徐々に失われていることを指摘したものである。(Environmental News Service 2010/4/13) ワシントン州立大学教授レイモンド・ジュソウムが、「米国における持続可能な農業に対するGM作物の影響」と題する調査報告を、全米科学アカデミー・全米研究評議会(NRC) に提出した。そこでは、GM作物で利益を得ている人は特定の農場だけであり、管理のやり方によってばらつきがあると述べている。(Washington State University 2010/4/19) そのほかにも多数の研究が、GM作物が負の遺産を蓄積し続けていることを報告している。米国でだめなものをアフリカに売り込んでいる実態が浮かび上がってきた。
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