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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2010年06月25日06時02分掲載
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中東
サダム・フセイン弁護団の思い出 村上良太
サダム・フセインがまだ生きていた頃・・・・こう書くと、今ではもうずっと昔のことのように思われますが、あるきっかけでサダム・フセインを弁護する国際弁護団の取材をすることになりました。イラク戦争の翌年、2005年の夏のことで場所はヨルダンの首都アンマンです。
その頃、モハメド・ラシュダンという名のヨルダンの弁護士が中心になって、アラブ人はもとよりアメリカなどの弁護士も含めた国際弁護団を組織しようとしていました。サダム・フセインは正当性の疑われる戦争で捕まった人間であり、正当な裁判を受ける権利はあるはずだ、と彼らは考えました。弁護団の人数は3000人を越えていました。確かに、サダム・フセインをどう思うかは別として、たとえ独裁者でも1人の人間として裁判を受ける権利はあり、それは政治的な意図が見え見えの茶番劇であってはいけないだろう、と僕もまた思っていました。
しかし、正直言うとそんな理屈より一体どんな人々がサダム・フセインを弁護しようとしているのか見てみたいという野次馬根性の方が強くありました。
モハメド・ラシュダン弁護士はヨルダンでも名門の法律一家の生まれである、と東京の駐日ヨルダン大使館で聞きました。ラシュダン弁護士は我々の取材を快く聞き入れてくれ、終始、冷静で温和でした。なぜサダム・フセインを弁護したいのか。しかも中心メンバーとして・・・。ラシュダン弁護士の法律事務所に日参しながら取材していると、温和な外見の内側に潜む彼の強い意志が垣間見えてきました。
寺院の塔からアザーンの祈りの声が聞こえてきます。この国では弁護士たちも毎日、イスラム教徒として定刻になると事務所で祈りを捧げます。ラシュダン弁護士も例外ではありませんでした。その姿に弁護士と言っても国によって随分違うのだな、と感じさせられます。
ラシュダン弁護士はかつてイラクのバグダッド大学で法律を学んでいました。サダム・フセインの方針で授業料は無料だったのです。バグダッド大学にはヨルダン以外のアラブ諸国からも留学生が多数来ていたそうです。アラブの繁栄と統一を掲げる汎アラブ主義のもとででした。そんなラシュダン弁護士はイラン・イラク戦争では一義勇兵として銃を手にイラクのために戦っていました。砂漠に立つ兵隊姿のラシュダン弁護士の写真を見せていただきました。恩義を受けたイラクが戦争をしているのだから、自分は闘う。そう考えたのでしょう。あるいはもっと大きなアラブの大義と言っても過言ではないでしょう。
弁護団の別の弁護士はやはりバグダッド大で学び、その後、義勇兵としてレバノンでイスラエルと戦った経験を持っていました。弁護士といえば一見平和の使者のようなイメージが強いのですが、彼らはいざとなれば銃を取って闘う男達でした。彼らの行為の是非を論じるのために取材したのではありません。彼らはどんな人間なのか、それを知りたいという思いからでした。
では彼らを十分に知る事ができたのでしょうか。いや、たかだか、一週間ほどの取材で知ることはできません。むしろ、まだまだ知らないことがある。しかも海の様にそれは深い・・・。
一般に中東やアラブの地域に関してテレビで映し出されるのは群集や王族であることが多く、知識人や魅力のある生活者たちが個別に取材されることは比較的少ないように思います。それがこの地域の人々は先進国が「指導」してやらなければならない、と視聴者に感じさせることにつながってはいないでしょうか。
その後、サダム・フセインは絞首刑になり、弁護団の弁護士たちも多数がテロで殺されました。9・11同時多発テロは多くの人生を変えたものです。テレビディレクターの間でも、イスラム圏の普通の生活や文化、あるいは思想や信仰についてもっと報じるべきではないだろうか。そんな意見を多数耳にしました。
村上良太
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