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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2010年07月10日07時53分掲載
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アジア
【イサーンの村から】(2)牛生肉ラープ、おいしく、しかも抗アレルギー 食べなかったら損ですよ 森本薫子
イサーン人は本当に牛が好きだ。結婚式や得度式(男子の出家式)などのお祝い事の時には、必ず牛肉のラープ(肉と唐辛子、ライム、ナンプラー、ミントなどを和えた料理)がでる。村の男性何人かがと殺してさばいて、それが祝膳として出てくるのだ。それも生肉で、生血を混ぜる!血だけではない。黒緑色の苦い胆汁までも入れるのだ。湯がいた肉で作るラープもあるが、生肉が断然人気である。
◆ぎょう虫と共生でアレルギーなし
村内では毎日、夜中にと殺した牛の肉が早朝から売っている。お昼までにはほぼ売切れてしまうので、午後には手に入らない。さばきたての新鮮な肉なので生でも食べられる。私も今まではよく食べていたが、最近は生肉は食べないようにしている…。美味しくて好きなのだが、私の場合、すぐにおしりから“ぎょう虫(ちゅう)”がでてきてしまうのだ。イサーン人もそれは同じようで、時々虫下しの薬を飲んで出している。普通に薬局に売っていて、寝る前に飲むと次の朝、便と一緒に出てくるのだ。または、ぎょう虫に効く薬草を食す人もいる。お腹(腸)の中で静かにしているぎょう虫もいれば、肛門からもぞもぞ出てくるのもいるようだ。人に寄生するものは深刻な害はないらしい。 この話しをJVC(日本国際ボランティアセンター)の人にしたら、さすが、様々な国・地域に行っているJVCスタッフ。多くの人が、「ぎょう虫・回虫体験」をしていた。おしりから出てくるなんてよくあることで、腕を掻いていたら、腕の皮膚から出てきたなんて話も!こんな話を東京の電車の中でしたことがあったのだが、周りの人はさぞかし眉をひそめていたことだろう。
日本でも牛刺しや馬刺しを食べるが、ぎょう虫・回虫が出たことはない・・。私が小学生の頃は定期的に学校でぎょう虫検査があった。セロファンのようなものをおしりの穴にぎゅっとくっつけ、ぎょう虫の卵がついていないかを検査した。昔は野菜にも今ほど農薬を使わず育てていたから、卵がついていたりしていたのだろう。 調べてみると、ぎょう虫・回虫持ちは悪いことばかりではない。アレルギーになりにくい体質になるようだ。これらの寄生虫の出す酵素の関係でアレルギー反応を起こす物質が抑制されるとか。だから寄生虫が少なくなった最近の日本では、アトピーや花粉症に悩まされる人が多いとの研究もあるそうだ。 実は、私は妊娠中に一口だけ生肉料理を味見しただけなのに、ぎょう虫がおしりから出てきたことがあった。健診の時に先生に「あの〜 お腹にぎょう虫がいるみたいなんですけど・・」と聞くと、さすがにタイ人の先生は特に驚く様子もなく、「虫下しの薬は今は飲めないから、まあ、出産後までほっておきましょう」との答えだった。ほっておいたら、いつの間にかいなくなったみたいだった。 もうすぐ1歳になる息子が今のところなんのアレルギーもないのは、このぎょう虫のおかげなのか。タイの農村ではこんなに生活に慣れ親しんだ(?)ぎょう虫・回虫だが、ぎょう虫症や回虫症になったという話はまず聞かない。農薬が原因で病気になったという話はよく聞くが。
あ〜 でも、これを読んで「タイで生肉は絶対に食べない!」なんて思わないでください。本当に美味しいんですよ、生肉。タイに行って、生肉ラープを食べなかったら損です。あなたの食の世界が広がること間違いなしですから!
◆牛は暮らしの保険
イサーンの農家にとって牛を飼うことは、食べるためだけではない。牛を飼い、子牛が生まれたら売ることによって収入が得られる。牛はちゃんと交尾させれば毎年1頭の子供を生むので、何頭も飼えば1年に何頭分もの収入になる。1年に一度の米の収穫が主な収入となるイサーンの農民にとって、旱魃や洪水で稲が全滅するような事態が起きたときに、牛を売ることによって臨時収入を得ることもできる。保険のようなものだ。 サトウキビやキャッサバ、ゴムの木の栽培からの収入もあるが、これらも市場価格の変動で安定しない。もちろん、牛も病気にかかるなどのリスクはある。どれも確実ではないということだ。日本のサラリーマンも、今時はいつリストラされるかわからないから不安は同じ? 土地と家と食べ物だけは確保できるイサーンの農民の方が、まだ楽天的でいられるのかもしれない。
牛の価値は品種にあるようで、耳が長くて毛並みのいい血統の牛は、何百万円という値がついたりする。松坂牛や神戸牛のように、「食べて美味しい」という価値ではないく、見て美しい牛、質の良い牛。タイでは、月刊「牛」雑誌なるものが何種類も出版されているほどだ。本当にいい牛を飼っている人は、毎日牛の毛並みをブラシで整え、蚊にくわれないように、牛小屋に蚊帳を張っていたりする。盗まれるのが心配で、夜も牛小屋の隣で寝ていたり!血統書付きの犬やスポーツカーのように、これはもう趣味の域だ。
うちの地域でも、毎週木曜日には、「牛市場」がたつ。売りに来る人、買いに来る人、自由に参加して個人的に話をつけて、売買する。ここでは血統書付きの牛などの売り買いはまずなく、一般農民が自分の牛を売り買いする市場だ。「牛を見る目」がないと選ぶのが難しい。とにかくイサーン人にとって牛は、食、収入、趣味・・と様々な意味を持つ重要な存在なのだ。
(イサーン:タイ東北部の総称)
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牛の市場
生肉のラープ。こたえられないおいしさ。
月刊『牛』雑誌のいろいろ
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