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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2010年09月29日13時01分掲載
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アジア
【イサーンの村から】(8) 女衆が大活躍、イサーンの人寄せ 今回は南アから 森本薫子
先月は、南アフリカ人の皆さんがうちの農園に来てくれた。彼らは日本国際ボランティアセンター(JVC)の南アフリカでのHIV/エイズ陽性者支援事業に関わる皆さんで、タイのHIV/エイズ政策や支援事業を学ぶスタディツアーで来タイしたのだ。そして彼らは有機で家庭菜園をしているということで、うちの農園にも2泊することに。
昼間の農作業体験の後、夜は歓迎会を兼ねての宴会を開いたのだが、参加した人数が予想以上になり大変な盛り上がりだった。今回もつくづく感じたのだが、イサーン人や隣の国のラオス人は本当にエンターテイメント性に長けている。そして南アフリカ人も相当なものだった。日本人だけか…、即興で芸ができないのは。カラオケは大好きでも、その場で何もないところでぱっと歌えて踊れる人って、そうそういない。
この夜の参加者は、南アフリカの皆さん8人とこのツアーに同行していたJVC東京事務所で勤務する南アフリカ事業担当とパレスチナ事業担当の日本人スタッフ。せっかく南アフリカの人たちが来るのだから、ここからすぐ近くの国境の向こう側の、JVCラオス事務所の皆さんも呼ぼう!と声をかけたら、なんと、「全員で行きます!」との答えで、ラオス人、日本人、オーストラリア人、総勢11人が揃って参加。タイ側では、NGO仲間たちや、料理を準備するために夫の妹や親戚の叔母さんたちを呼んでいたので、こちらも大人数。この日のメインである豚BBQのために、豚をさばくのを手伝いに来てくれた叔父さんたち、この村の村落開発委員になった親戚の叔父さんが委員長までも連れてきたりして、結局、大人40名(子供7名)の大宴会となったのだ。
この宴会で一番盛り上がったのが南アフリカの皆さんの歌と踊り。「南アフリカの人はみんな、ゴスペルとか歌えちゃうんでしょう?今日はたくさん人が来ているから是非披露して!」とお願いすると、「まあ、いいけど・・」といまいち乗り気でないような返事をしたかと思えば・・ 実際に登場したときは、全員ステキな民族衣装を身にまとい、自信満々で現れた。そして披露してくれたゴスペルの素晴らしさといったら!「南アフリカの人たちは自分の民族に誇りを持っている」というのは、これを見れば納得できる。
南アフリカの皆さんのゴスペルの歌と踊りは何曲も続き、すっかり彼らの舞台となった。するとラオス人たちが立ち上がり、「私達も踊ります!」とみんなで歌って踊りだした。ラオスとイサーンのモーラムという共通の伝統歌謡でイサーン人たちも踊りだす。こういう場でさっと芸ができる民族って、本当にうらやましい。モーラムもゴスペルも、誰がいつ何の歌を決めるのか、立ち上がったとたんに歌と踊りが始まる。大抵このような場では、日本人は「こちらにふられませんように・・」と内心びくびくしているのだ。ふられたところで、何を歌うか決めるのにぐずぐずと時間がかかってその場がしらけて行くのがオチだろう・・・。今回も、私を含む5人の日本人は観客側に徹底。みんなのエンターテイメントぶりに惚れ惚れしつつ、「あ〜日本人も、すぐに出せる芸がないとなぁ」と反省するのだ。いつものことなのだけど。
とにかく予想を超えた大人数となり、調理場も宴会場も勝手に盛り上がっていた。ホストとしては、みんなに飲み物が行き渡っているかとか、つまらなそうにしている人がいないかとか、見回そうかと一瞬思ったが、すぐにあきらめた。無理…。把握しきれないので、みなさん好きにやってもらおうと気持ちをリセット。 これがイサーンの宴会のいいところだ。日本だったらホスト役はお客様に限りなく気を使い、宴会後にはへとへとになるところだが、イサーンなら、その家の住人でなくても勝手に台所へ入って料理の手伝いをしてくれるし、好きなところに座って勝手に盛り上がってくれる。イサーンの多くの家がそうであるように、うちの台所も外にあってじゅうぶんなスペースをとってあるので、10人で料理しても余裕の広さだ。
今回は、親戚の叔母さんたちに加え、ラオス人やタイ人の若い子たちが、率先して肉を焼いたり皿に取り分けたりしてくれたので実に助かった。もちろんこの子たちも充分に楽しむことを忘れない。日本人のように「これ使っていいですか?」なんていちいち聞く人はいないので、その家の住人が付きっ切りになる必要は全くない。イサーンのおばちゃんたちはこんな時、人の家の台所とは思えないほど手際のいい動きを見せるので、それにはいつも感心する。
その代わりホスト側は「何でも好きに使って!」という覚悟を決めるのは必須だ。「え・・それをそこに使っちゃう…?!」というような、もし大事なものでもあれば心臓が止まるほどの事態にもなりかねないので、どうなってもいいものしか置いておかないというのも鉄則でもある。壊れても、なくなっても、どうなってもいい。宴会さえ楽しくできれば全てよしなのだ。
イサーンの田舎では、結婚式もお葬式も、男子が出家するときの得度式(親に恩を返して成人するという意味で、男子は結婚前までに短期で出家する)も、自宅で行うことがほとんどだ。結婚式はホテルで・・というのは今時のバンコクの話。何十人、何百人の人が来ても、料理も片付けも村のおばちゃんたちが仕切ってくれる。もちろんこのおばちゃんたちも同じご馳走を食べられるのだが(一番おいしいところを食べられるのは調理場だったりする!)、主催者は料理のおばちゃんたちに日当を払うわけでもない。村の誰かの家で式があれば、村の女性たちで料理することが当たり前になっているのだ。牛や豚をさばくのは男性の仕事。子供たちは、大人のじゃまを一切することなく、大きい子が小さい子の面倒を見ながら子供同士で楽しく遊んでいる。儀式を仕切るのは長老たち。
どんな式でも綿密な役割分担と計画のもとに進められているわけでは全くない。それぞれの役割が自然に決まっていて、その役割をおおいに楽しみつつ、伝統的な儀式をすみやかに行い、場を盛り上げるのも忘れない。イサーン人は本当に宴会上手だ。宴会の時って民族性がでるものだなぁと思う。民族の誇りを表すゴスペルと、あっという間にその場の皆で盛り上がれるモーラム。私も何か、日本人の民族性を表せる芸でも身につけたい...と思いつつ、もう何年経ったことだろう〜。モーラムなら、ぼちぼちうまく踊れるんですけどね。
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宴もたけなわ
料理の準備も着々
お勝手では女衆が大活躍





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