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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2010年10月25日00時59分掲載
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三ツ星シェフによる画期的な料理本 「フライパン1本でできるお手軽フレンチ」
シェフのダニエル・マルタン氏(Daniel Martin 1952−)は三ツ星料理店だったマキシムの副料理長を勤め、来日後はフランスの名門の料理学校であるル・コルドン・ブルー東京校の校長となった。彼は日本の人々に向けて手軽に作れるフランス料理の本を執筆してくれた。日本では様々なフレンチ料理本が出版されているが、本書は最も実用性が高いものに入る。その最大の売りは「フライパン1本でできる」ところにある。
実際、レシピの1つ1つがそれぞれのプロセスのカラー写真入りで丁寧にわかりやすく紹介されている。しかも、すべてフライパン1本でできる。鍋やその他の調理器具は使わないで済むのである。たとえば次のような料理である。
「たらの白子 グルノーブル風」、「スクランブルエッグ うに風味」、「いとよりのアンティーブ風」、「田舎風フラット・オムレツ」、「鯛のポワレ しょうが風味」、「フランス風豚肉のしょうが焼き はちみつとごま風味」、「アスパラガスのムニエル 生ハムとアーモンド添え」、「クレープ・シュゼット」など、オードブルからデザートまで簡単に作れる40ものレシピが紹介されている。
マルタン氏が本書を書いた動機は「日本のフランス料理は高級すぎる!」という思いだったという。日本ではホテルで食べる高級フランス料理ばかりが普及していることにマルタン氏は不満を持ったというのである。前書きの「なぜ、今、フライパンを手にとるのか」で彼は次のように訴えている。
「キャビア、フォアグラ、トリュフなどの食材を使えば「おいしい料理」は誰だって作れます。しかしそうではなく、スーパーにある家庭用の肉と野菜を使って本当に「おいしい料理」を作ることができる、それが大切!フランス料理は、「フライパン1本」さえあればおいしく作ることができる可能性を秘めている、とても「お手軽」な料理なのです。」
そして、料理に大切なのはレシピに忠実に作ることではなく、タイミングを間違えずに材料を加えていくことだと説く。
フランス料理には確かに、高級で少し、という印象がある。しかし、本書で出てくる料理にはがっつり食べるだけのボリュームがある。若者にとっても不足はないであろう。たとえば「田舎風フラット・オムレツ」である。卵を溶いて炒めるだけのオムレツではなく、豚肉、じゃがいも、たまねぎが中に入った、一見、お好み焼きのようなボリューム満点のシロモノである。しかも、フライパン1つで数分でできる。以前から、フランスの小説に出てくるオムレツがしばしば日本のオムレツよりもボリュームがあるものではなかろうか、と思っていたが、その謎が解けた。
あるいは「白身魚のミニッツステーキ ゆず風味」である。白身魚をスーパーで買ってきて、すぐに作る事ができる。白身魚に塩、こしょうで下味をつけ、バターで炒める。最後にゆずポン酢で「デグラセ」して軽く煮詰める。こうしてできたミニッツステーキに後は塩コショウとバターで炒めたほうれん草を添えるだけである。白身魚としては鯛、カレイ、舌平目などいろいろなものが使える。スーパーの特売に応じて買ってくればいいのだ。
マルタン氏が日本に長逗留することになった大きな理由は魚が美味しいからだという。この国に集まる魚は世界で最も水準が高いと絶賛しているが、フランスで最初に生魚を料理として出したのはマルタン氏だという。そんな彼は日本の魚を使ったフランス料理を多数紹介している。しかも、「しそ風味」や「しょうが風味」、「ゆず風味」など、日本の風土にあった味付けにした。魚料理のポイントは弱火でじっくり加熱することだと言う。
フランス料理の敷居をぐっと下げてくれ、さらにフランス料理の基本テクニックが自然に理解できる庶民向けの本である。10代や20代の若い人にもぜひ手にとって欲しい1冊である。
■デグラセ(deglacer) 水やワインなどを加えて煮汁をのばすこと。
■「フライパン1本でできるお手軽フレンチ」 (サンマーク出版 1700円+税)
村上良太
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