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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2010年11月16日01時26分掲載
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市民活動
「ただいま それぞれの居場所」 ある上映会
大宮浩一監督のドキュメンタリー映画「ただいま それぞれの居場所」は今、各地で上映会が行われている。介護施設からはじかれてしまう認知症の高齢者と介護施設の若者のふれあいを描くこの映画は地域の介護と福祉のあり方を考えるきっかけになっているようだ。
たとえば12月5日(日)に埼玉県三郷市で行われる上映会の主催者は「地域でともに生きるナノ」という団体だ。ナノは高次脳機能障害の患者家族の会である。代表をつとめる谷口眞知子さんには高次脳機能障害になった息子さんがいる。就職直後に運河にあやまって落ちてしまい低酸素脳症になってしまったのだ。当初は息子のリハビリに期待した谷口さんも想像以上に機能回復が難しいことを悟ることになった。
しかし、谷口さんはジャズダンスの先生だったことを生かして、三郷市で高次脳機能障害と地域の人々が一緒に踊れるダンスやよさこい踊りなどを主宰してきた。家に閉じこもるのでなく、地域の人とともに踊ろうと呼びかけ、成功させてきたのだ。谷口さんのダンスの生徒たち、その多くは女性だが、彼女たちがこの取り組みに手を貸し、運動を盛り上げてきた。こうした活動は今後、ますます広がっていくかもしれない。
谷口さんは今新たな運動を起こしたばかりだ。まだ地域には高次脳機能障害と知らずに困っている家族や患者がいる。そうした人々を見つけて、支援しようと、埼玉県の支援を得て、「ピア・カウンセリング(地域交流会)」を行っている。自治体の人々と手を組むことで、ネットワークはさらに広がり、深まるだろう。すでに高次脳機能障害は一部の方の症状ではなく、脳血管障害で倒れてなる方がどんどん増えている。それは高齢化とともに進んでいく。患者家族の会にも新たな会員が増えてきている。
「高次脳機能障害だけでなく、幅広い地域の福祉のネットワークにしていきたい」と谷口さんは言う。いつか家族だけでは手に負えなくなってしまう。そのとき、子供や妻や夫を誰が看てくれるのか。そうした思いをずっと谷口さんは持ち続けてきた。
「ただいま それぞれの居場所」に登場する子安さんもナノの会員だった。子安さんの夫はマラソン中に倒れ、高次脳機能障害になってしまった。以来、夫には人格が変わったような行動が目立った。手を挙げることも増えた。子安さんはそうした夫を最後まで愛し、ともに生きようとした。その子安さんは夫が亡くなると間もなく白血病で亡くなった。高次脳機能障害の家族を持つと心の葛藤や疲労でがんや白血病にかかる人も少なくないという。実際に谷口さんの周囲にはそうした方が何人かいる。
「2010年、暑かった夏も過ぎ、あっという間に秋風を感じる今日この頃です。時のうつろいはやさしくもありますが、秋の音は容赦なく昨年の出来事を思い起こさせ、思い出に押しつぶされそうになります。この度、子安仁さん、真知子さんご夫妻の笑顔と生死に向かい合った歳月を、ゆかりのある方々に見ていただく上映会を催します。どうぞ皆様、お時間をつくって是非ごらんいただけますようよろしくお願いいたします」 (ナノ代表 谷口眞知子)
この映画のラストシーンは子安さんご家族が流しそうめんを食べているシーンである。
■上映会 12月5日(日) 埼玉県三郷市鷹野文化センターホール(048−956−9010: 埼玉県三郷市鷹野4−70)にて 12時半開場 13時〜上映 15時〜大宮監督のトーク 1500円
村上良太
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