あれから2年、「ガザ攻撃」もパレスチナの歴史の1事件として、人びとの記憶から忘れ去られようとしています。しかし1400人を超える犠牲者の遺族はもちろん、5500人の負傷者、家屋を失った10万人近い住民たちの苦悩は今なお続いています。 一方、イスラエルによる封鎖によって、破壊からの復興もままならず、経済基盤も破壊され、人びとの生活は瀕死の状況下にあります。 なぜガザはこの悲惨な状況に至ったのか――この問いに向き合い、伝えることは、1985年以来、20数年間、ガザの人びとと関わり、取材を続けてきたジャーナリストの1人としての責務です。
昨夏以来、イスラエル政府によってプレスカード発行を拒否され、ガザを取材できなくなった現在、1993年秋以来、撮りためてきたガザの映像を元に、その問いの答えの一端を伝えていくしか残された手段はありません。映画「ガザに生きる」5部作(各部約1時間)の制作を決意したのは、そういう動機からでした。
ガザ攻撃から2周年に当たるこの時期に、5部作「ガザに生きる」の第1部から第5部までの予告編の上映、そして専門家によるガザが現在に至るまでの経緯の解説の催しで、ガザ攻撃による犠牲者たちの2周年追悼の会とします。 土井敏邦
【プログラム】 〔前半〕〈映画上映〉
・映画「ガザに生きる」 ・第1部「ラジ・スラーニの道」紹介映像(約10分) ・第2部「2つのインティファーダ」ダイジェスト版(約20分) ・第3部「ハマスの台頭」ダイジェスト版(約20分) ・第5部「ガザ攻撃」ダイジェスト版(約30分) ・解説(土井敏邦)
〈「ガザに生きる」各部の内容〉
〔第1部〕「ラジ・スラーニの道」 ・ガザの名家に生まれ育った、パレスチナを代表する人権活動家ラジ・スラーニは、占領下の民衆の過酷な状況と自らの占領体験によって、占領と闘う政治活動に身を投じた。だがイスラエル当局に投獄され、5年近い獄中生活を強いられる。占領下で人権弁護士として活動を続けるラジの半生を通して、ガザに生きる人びとの生と思いを伝える。
〔第2部〕「2つのインティファーダ」 ・占領への怒りが爆発した第1次インティファーダは、パレスチナ社会の変革運動でもあった。だがその結末の「オスロ合意」は“占領の合法化”だったことを知った民衆の失望と怒りは、再びインティファーダとして表出する。この過程を主導したアラファトの歴史的な功罪は何だったのかをガザの指導者たちが総括する。
〔第3部〕「ハマスの台頭」 ・イスラエルのガザ撤退(2005年夏)の背景を探り、それを支持拡大に利用したイスラム抵抗運動「ハマス」の実態に迫る。占領下で窮乏する民衆を支援する慈善組織の顔と、占領に武力で抵抗する武装組織の2つの顔を持つハマスが、ガザ地区を実効支配するまでに勢力を拡大した背景とその影を描く。
〔第4部〕「封鎖」 ・勢力拡大したハマスと、これを支持する民衆への“集団懲罰”としてイスラエルは、ガザ地区の“封鎖”を強化した。住民は食料や医薬品など生活必需品の不足に苦しみ、移動の制限のため海外での治療や仕事の機会さえ奪われてしまう。さらに崩壊したガザ経済の下、若者たちは失業し将来へ希望も断ち切られる。
〔第5部〕「ガザ攻撃」 ・イスラエルのガザ攻撃(2008年12月−1月)は約1400人(7割が民間人)の犠牲者を出した。被害は人命や家屋に限らず、工場や農地など産業基盤も破壊された。その被害の実態を遺族や関係者の証言を元に詳細に報告する。一方、この攻撃を圧倒的なイスラエル国民が支持した背景を有識者の声から探る。
l 『ガザに生きる』5部作のカラー・パンフレットは以下のサイトをご覧ください。
http://doi-toshikuni.net/j/p-doc/gaza-ni-ikiru/index.html
〔後半〕〈講演と対談〉 ・中東研究者・臼杵陽氏の講演 「ガザとイスラエル社会」 ・臼杵陽氏と土井敏邦の対談 「なぜ、ガザは現在の状況に至ったのか」
(注・映画の上映項目や時間、講演・対談の内容は、変化する可能性があります。ご了承ください。)
【日時】 2011年1月8日(土) 午後2時から午後6時まで (開場・午後1時半)
(注・この報告会は予約制ではありません。ただ定員の260人を超えると、入場をお断りすることもありますので、お早目に受付をお済ませください)
【場所】 明治大学 駿河台キャンパス リバティタワー(地下1F 1001教室) (JR中央線・総武線、東京メトロ丸の内線/「御茶ノ水」駅下車 徒歩3分) http://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/access.html 【参加費】 1000円 【主催】 土井敏邦 パレスチナ・記録の会
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