・読者登録
・団体購読のご案内
・「編集委員会会員」を募集
橋本勝21世紀風刺絵日記
記事スタイル
・コラム
・みる・よむ・きく
・インタビュー
・解説
・こぼれ話
特集
・国際
・農と食
・教育
・文化
・アジア
・入管
・中国
・市民活動
・米国
・欧州
・みる・よむ・きく
・核・原子力
・検証・メディア
・反戦・平和
・外国人労働者
・司法
・国際
・イスラエル/パレスチナ
・市民活動告知板
・人権/反差別/司法
・沖縄/日米安保
・難民
・医療/健康
・環境
・中東
提携・契約メディア
・AIニュース
・司法
・マニラ新聞
・TUP速報
・じゃかるた新聞
・Agence Global
・Japan Focus
・Foreign Policy In Focus
・星日報
Time Line
・2024年11月22日
・2024年11月21日
・2024年11月20日
・2024年11月18日
・2024年11月17日
・2024年11月16日
・2024年11月15日
・2024年11月14日
・2024年11月13日
・2024年11月12日
|
|
2011年03月07日09時44分掲載
無料記事
印刷用
アジア
【イサーンの村から】(16) うちのおコメ、日本の有機農家も感動 森本薫子
イサーンの農家の年間の主な収入源は米の販売である。イサーンでは灌漑設備が整っている地域が少ないため(塩害などの被害により、大規模な灌漑施設は作れないという環境条件もあり)、米作りは天水に頼っている。よって、田植えができるのは雨季に入ったときなので、米作りも年に1回だ。
イサーンの農家の土地の所有面積は他の地方に比べて大きいので、3ヘクタール、5ヘクタールという土地に一気に米作りをする。耕起こそ今ではトラクターを使うが、個人農家では田植えも稲刈りも手作業がほとんどだ。大型機械の購入費、維持費、燃料費よりも、人件費の方がずっと安くつく。家族、親戚、または日雇いの人に頼んでそれらの作業をこなすのだ。1ヶ月間ずっと田植えや稲刈りを続けるのは本当にきつい作業だけれど、イサーンの農民にとっては、慣れていない私達が想像するほどではない。定年まで毎日満員電車に乗って通勤するよりはずっといい・・という農民も多いかも。 それでも田植えの準備、水の管理、雑草の処理、稲刈り、稲運び、脱穀などの作業を考えると、米作りは本当に大変だ。そして気になる米の値段だが・・。
農民は収穫した米(籾米)を精米所に売る。米の品種やその年の状況にもよるが、去年の精米所が買い取った籾米の値段は、約14バーツ(40円)/キロだった。これだけの苦労をして作ってこれだけか・・と日本人ならすぐにでも農家を辞めたくなる値だが、物価の差があるだけで、日本の農家も同じ状況だろう。
市場やスーパーで売られる時の白米の値段は20〜40バーツ(56〜112円)/キロ。昨日スーパーで見たら、一番安いのはそのスーパーのブランドで、高いのは一番人気のジャスミンライス(香り米)だった。日本でいうところの「こしひかり」だろうか。スーパーのブランドは米に限らず多くの商品を出しているが、安いが質も最低・・のものがほとんどだ。有機米は売っていなかった。知り合いの有機農家で有機市場などで直売する機会がある人たちは、35〜50バーツ(98〜140円)/キロで売っている。もちろんこの場合は、自分で精米して袋詰めする必要があるので、自分で精米機を所有しているか、村内の小さな精米屋さんに精米してもらう。
精米屋さんでの精米費は無料のところもあるし、払っても一袋(約40キロ)で10バーツ(28円)とかそんなものだ。そのかわり精米屋さんは精米によって出た米糠は全てもらえるというシステムだ。米糠は家畜のエサになるのでよく売れる。なので、一度に3トン、4トンの米(籾米)を収穫するイサーンの農家にとっては、直売することができれば、一部自家消費用に残しておいたとしてもかなりの利益になる。ただ、農村では少々高くてもお金を出して有機米を買おうと考える人は少ないので、有機米に付加価値をつけるのは難しい。
バンコクのデパートや自然商品店などをみてみると、有機米の種類はそれほど多くないものの、50〜75バーツ(140〜210円)/キロで売られていた。都会に住む人の方が安全な食品に関する知識があり、それを求める高所得者層が多いのは事実だけれど、実際に売れているのか?商品の陳列をみても、売れている商品には見えない。
ところでタイ米の味だけれど、日本人はどうも「タイ米はまずい!」という印象を持つ人が多いようだ。昔、日本が米不足でタイ米を輸入したときに食べたときのイメージが強いのか。あの時輸入された米は、かなり質の悪いものだったらしい。実際には、タイ米も日本米に劣らずかなり美味しいのだ。屋台などで出される米は、パサパサで香りも味もないけれど、新米ならピカピカ光って香りもよく、とても美味しい!日本から来た人がうちのお米を食べると、「タイ米ってこんなに美味しいの?!」と驚きながらもたくさん食べてくれる。
日本の有機農家の人が来た時でさえ、美味しい美味しいと何キロも持って帰ったほどだ。そして、「うちの子供たちは、うちの米より美味しいと言って食べてます(笑)」と嬉しい便りもくれたりした。タイ料理にはタイ米が合うし、和食には日本米が合う。刺身に香りの高いジャスミン米は合わないように、タイカレーに日本米は重たすぎる。だから日本でタイ米を主食にするのは無理があるが、米自体の質、味は、日本米に劣らないのだ。そもそも米を作っているタイの農民は、米の質の良し悪しはちゃんとわかっている。
バンコクの人たちがどこまで米の味を認識しているかはわからないが、米を主食とするタイ人だけに、家庭での米の消費量は日本人よりずっと多い。先日、バンコクでタイ語を習っていた時のタイ語学校の先生を訪ねた時に、うちのお米をお土産に持っていった。先生はとても喜んでくれ、「バンコクでは美味しいお米が手に入らないのよ〜」と言っていた。普段はスーパーでお米を買っているらしい。デパートでお米を買うのはかなりの高所得者層か外国人。
自然商品店はどこにでもあるわけではない。市場やスーパーでも新米の時期にはそれなりのお米が出回るのだろうが、質や味はどうなのだろう。高い値段がついているデパートや自然商品店の米も、質や味についてはよくわからない。新米なのか、前年の米なのかもわからない。知り合いの有機農家は「美味しいお米を食べたい」という人に自分のお米を売りたいと言っている。美味しいお米を売りたい農家と食べたい都会の人。それなりに流通はあるのに、両者がうまく出会う場所・機会が意外に少ないようだ。
コンピューターを使いこなす農民はまずいないし、日本のように確実に指定日に郵便物が届くような配達システムもないので、農産物のネット販売は発展していない。そろそろお米直売方法を考えるか。まずはタイ語学校で先生向けに、お試しのお米を売ってみることにした。さっそく自家用精米機も探しめよう。
|
関連記事
【イサーンの村から】(15))続「食べられる生き物の話」 イサーン人はなんでも食べます、コブラもヤモリもサソリも 森本薫子
転載について
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。
|
|
スーパーのコメ売り場
市場のコメ売り場
|