東北地方にきた巨大な地震。甚大な被害をもたらしました。 ほとんど地震のない鹿児島から移り住んだ私は、地震の怖さをよく理解せず、さらには津波も人ごとのように思っていました。もちろん知識では知ってはいるものの、自然災害といえば火山の爆発をもっとも意識していました。今回、あらためて地震の怖さを思い知らされました。被災地の方々にはお悔やみ申し上げます。
マスメディアとは少し違った視点で、今回の地震について書きます。
地震の起こった日、私は会社に泊まることを一旦覚悟しました。しかし終電前、東西線が動いている情報をインターネットで入手。23時頃、東西線で浦安駅まで行き、そこから40分ほど歩いてようやく新浦安の自宅まで帰宅することが出来ました。元々埋立地でない浦安駅周辺は街自体ほとんど影響を受けていませんでしたが、埋立地である新浦安に入った途端に様子は一変、地面は裂け、時には隆起し、液状化していました。いつも歩いている平らな歩道も、一メートルを超える段差になっている状況には悪夢かと思ったほど。そこを飛び越えて自宅までたどり着きました。
しかし家には水とガスはきていません。シャワーも浴びられませんし、調理も出来ません。トイレは水が流れません。ガスは翌日にようやく復旧しましたが、断水はまだ続いています。ライフラインと言われるものがいかに重要で、何のありがたみもなく使っていることを痛感した次第です。浦安のサイトですが、その様子を書いたものを紹介します。
http://www.city.urayasu.chiba.jp/item23885.html#moduleid17889 そんなことから、埋立地に住んだことを後悔しました。私が自宅を決める際、郊外の低層住宅か、都心の高層マンションにするか迷い、友人の精神科医に相談したところ、彼が「高層マンションに住むと精神衛生上、よくない」と今住む低層階を推したこともあって低層階に決めました。しかし精神科医だけあって、地震による液状化現象は予想外だったのでしょう。まあ、私にとっても予想外でしたが。
夜が明けて土曜日。多数の死者が出た東北地方とは比較になりませんが、新浦安も想像を超えて、大変なことになっていました。週末、私は町内会のボランティアに参加し、つるはし、スコップを持ち、朝から夕方まで液状化によって地表から浮き出たヘドロを土のうに詰め込み、体は汗だく、腰と手はぼろぼろ。
そして風呂に入るために都内へ。江戸川区にあるスーパー銭湯へ向かいました。バス・電車・バスと乗り継ぎ、やっとの思いで目的地へ。しかしそこは、断水の新浦安からの客であふれかえっています。カランの洗い場は絶えず40人ほど並んでいて、それでも風呂の入れない新浦安の住民からすればそこはまるでオアシス。しかし、そこで地元の人たちの間で交わされた言葉を小耳に挟んでしましました。「水の出ねぇ浦安から来たんだって、しばらくは風呂入ってねえらしいから、お湯が汚れるんだよな。はっはっは」。おそらく軽い気持ちで言った冗談。日頃から来ている人たちからすれば大迷惑なるのは分かる。だけどたまたま耳にした本人からすればいい気持ちはしない。人のふり見て、我がふり直せ。私も、人の気持ちを考えず、軽く発言するほうです。気をつけなければ。
そんな新浦安ですが、震災から一週間がたち、駅前にはボランティアが集まり、道路にたまったヘドロの除去作業をしています。新浦安はディズニーランドに隣接していることもあり、そこに勤める欧米人が大勢住んでいます。ディズニーランドがここしばらく閉園しているから、そういう欧米人も多く参加しています。ボランティア好きなんですね。感動します。ディズニーランドの職員と言えば、ダンサーやステージに立つ人が多く、男性は筋骨隆々、女性は美女が多い。その中でも、明らかに白雪姫を演じていると思われる美女もいました。昨日も除去作業に参加しましたが、そんな美人と一緒に作業をして、ちょっとどきどき。
ともあれ、新浦安に住む外国の方とのコミュニケーションが取れ、初めて仲間意識が芽生えたように感じました。災害という非常時のなか、もちろん、東北地方の地震に比べると被害は軽微な方ですが、この災害で気付けなかったことに気付くことができた瞬間でした。
鬼塚忠 作家の代理人 アップルシード・エージェンシー代表 著作「ザ・エージェント」(ランダムハウス講談社)他多数
http://www.appleseed.co.jp/
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