3・11東日本大震災から1ヵ月半。未曽有の大災害は、東南アジア地域にもさまざまな余波をもたらしている。マレーシアでは元日本留学生らが呼びかけた被災者への義捐金が目標を大幅に上回る5000万円を突破する一方、大型連休中の日本からは“避難場所”目当ての不動産下見ツアーが盛んになりそうだ。日本からの輸入規制に悩むシンガポールの食材店ではカップ麺も入手できなくなっている。(クアラルンプール=和田等)
パーツを供給する自動車関連工場が被災した関係で、東南アジア各地に進出した日本車メーカー各社が生産調整や大幅な減産を余儀なくされている。
また福島第一原子力発電所の放射能漏れ事故の影響で日本の食材の輸入停止や検査の厳格化といった措置がとられたことや、放射線汚染の不安にかられた東南アジア地域の人々が日本食を食べるのを避けたことから、ブームを謳歌していた日本食店が大きな打撃を受けた。香港では大震災後に客足がぱったり途絶えたため閉店に追い込まれた高級日本食店も出たほど。
シンガポールの日本食材店には、日本からの輸入品通関検査の厳格化に加え、簡易食品に関しては被災地・国内供給を優先し輸出向け供給が制限されることになったことから日本製カップ麺の調達ができなくなり、利用者に向けて「お詫び」の告知を貼り出したところも。
マレーシアでは、大規模地震や津波で家屋がもろくも崩れ去ったことに危機感を感じた日本人が、いざというときの「避難場所」を確保しておきたいとの思惑から、退職後の長期滞在先としても人気のある同国に不動産の下見ツアーに訪れるという動きが起こっている。全体的に日本人の旅行者が減る中、ゴールデンウィーク中のマレーシアでの不動産下見ツアーが盛況だという。
▼各地で広がる支援の輪
一方、さまざまな形で被災者への支援の輪が広がった。マレーシアでは、マレーシア元留日学生協(JAGAM)が3月中旬に地元最大の華字紙「星洲日報」と共同で東日本大震災の被災者支援に向け募金集めを開始、4月15日までの募金期間中に集まった義捐金は5000万円を超え、当初目標の100万円を大幅に上回った。
募金活動の指揮をとったJAGAMのゴー・ンゲセウン(吴玉祥)前会長は、目標を大きく上回る募金が集まったことについて「募金目標額を低く設定したのですが、こんなに多くの義捐金が集まってびっくりしました。マレーシア人はもともと日本に関心を持っていましたが、この活動を通じて日本とマレーシアの友好関係がもっと深まるのでは、と確信しました」と語っている。集まった募金は、日本赤十字などを通じて被災者支援にあてられるという。
また同国では、華人歌手が何人かで協力して一曲の歌を制作。日本の被災者のために義援金を募るのを目的とするのと同時に、自分たちの今ある身近な幸せを感じながら、これから何をすべきか、そして周りにいる家族や友人に感謝の気持ちを忘れないという意味も込めて作った歌だという。いわば、マレーシア版「ウィ・アー・ザ・ワールド」ともいうべき歌である。そのミュージックビデオは、http://www.youtube.com/watch?v=3lOdWdMHJLY で視聴できる。
このミュージックビデオは、マレーシア国内の華人向けの番組やラジオ番組でも放送され、若い華人歌手たちの熱い思いが多くの人に伝わったようだ。
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