東日本大震災発生から2ヵ月が経ち、震災直後にパニック的に日本から脱出した外国人も徐々に日本に戻りつつある。こうした中、アジア最大の格安航空、エアアジアが「がんぱれ、日本!」キャンペーンに乗り出した。収益を、国際的な緊急人道援助機関であるジャパン・プラットフォームに託し、効果的かつ迅速な緊急支援の一翼を担いたいという。(クアラルンプール=和田等)
大震災後、団体客のキャンセルが相次ぎ、日本を観光で訪れる外国人がぱったり途絶え観光業界からは悲鳴にも似た声があがっているが、タイやシンガポールでは旅行代理店の代表らが日本視察ツアーを組み、現状を確認するなど、日本ツアー再開に向けた動きが本格化し始めた。
「To Japan With Love」「がんばれ、日本!」―。東日本大震災から2ヵ月を経た5月11日、マレーシアの地元英字紙にそんな文字が躍った。エアアジアによる全面広告だ。 エアアジアは昨年12月にクアラルンプール〜羽田空港間の路線に就航した。
この広告の中で、エアアジアは「日本の友人たちを揺るがしたさきの危機を私たちは悲しみを持って受け止めています。自分たちのできることを実行し、支援の念を示すため、私たちが運航する路線網のすべての便から得た収益を被災者のために集めて日出ずる国の再建のお手伝いをすることにしました」と宣言。「あなたの気遣いと参画の念を日本に示しましょう」と呼びかけている。
ジャパン・プラットフォームに加盟する主な団体には、ADRAジャパン(アドバンティスト開発・救援機関日本支部)、ブリッジ・アジア・ジャパン、CAREインターナショナル・ジャパン、国境なきエンジニア団、国境なき子どもたち、日本チェルノブイル・ファウンデーション、日本赤十字協会、PARC(アジア太平洋資料センター)インタープールズ・コーオペレーション(民衆間協力)、ピース・ビルダーズ、ピースNGOs広島、ピース・ウィンズ・ジャパン、SEEDSアジア、ワールド・ビジョン・ジャパンなどがある。
▼エアアジアXの好調さ背景に
エアアジアがこうしたキャンペーンを展開できる背景には、業績の好調さがある。同航空の長距離部門、エアアジアXの2011年第1四半期(1−3月期)の運搬乗客数は、前年同期比56%増の約64万人を記録。第1四半期までにムンバイ、デリー(ともにインド)、テヘラン(イラン)、ソウル(韓国)、羽田、パリ(フランス)の6つの新路線を開設したことが乗客数増の主因となった。同航空はまた、同期に運航航空機数を2機から11機までに増やした。エアバスA330機が9機、エアバスA340機が2機というのがその内訳。
航空機数を増やしたことを受けエアアジアXの乗客運搬能力は、前年同期比で48%増え45億席キロにまで拡大した。搭乗率も同6%上昇し81%と好調。貨物運搬についても、前年同期比182%の大幅増となる8324トンを運んだ。その好調の波に乗って企業の社会責任を果たす動きと結びつけていこうとの姿勢がうかがえる。
一方、日本では依然として格安航空に対するアレルギーがあったり、まだまだ一般の認知度が低いのは否めない事実だが、このたびのキャンペーンでエアアジアはその壁を打ち破ろうと狙っているようにもみえる。
なお、エアアジアXの株主構成は、エアロベンチャーズ社が過半数の52%を保有するほか、エアアジアが16%、オリックスとマナラ・マレーシアがそれぞれ11%ずつ、コルビナ・ホールディングスが10%となっている。
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