英ガーディアン紙と日曜紙オブザーバー(ともにガーディアン・メディア・グループが発行)が、紙媒体の発行による損失が膨らむばかりなので、「デジタル・ファースト」という戦略を実行してゆくことになった。つまるところ、ウェブ=本体、紙媒体=その補助という位置づけになるようだ。(ロンドン=小林恭子)
「ジャーナリズムUK」とガーディアン紙が報じたところを参考にすると、以下のようになる。
グループの責任者アンドリュー・ミラー氏は、昨年度のグループの営業赤字が約3300万ポンド(現金ベース)に達したと発表した。デジタル・ファースト戦略を実行しないと、今後「3−5年で、現金が底をつく可能性もある」。
ガーディアンの調査によると、読者の半分が紙媒体のガーディアンを朝ではなく夕方に読んでいることが分かった(私もガーディアンを午後読むことが多いーちなみに、英国の日刊紙は特別の表記がない場合、原則、朝刊紙)。そこで、まず、月曜から金曜の紙媒体ガーディアンの構成を、ニュースの本数自体は少なくして、その代わり解説をもっと増やす予定だ。
ガーディアンの編集長アラン・ラスブリジャー氏は、紙のガーディアンを朝9時ではなく、午後9時に読んでも十分に価値あるものに変えるという。ガーディアンは午後10時のBBCテレビの基幹ニュース番組と張り合うのではなく、午後10時半からのBBCテレビのニュース解説番組「ニューズナイト」と張り合うことにする、と。
ガーディアンは紙媒体の印刷から撤退するわけではないが、将来はデジタルにあるとして、年内にもっとこれに力を傾ける。しかし、その間、ウェブサイトを有料化する予定はないようだ。
ちなみに、英ABCによると、4月のガーディアンの発行部数は約26万部で、前年同月比では12・5%減。オブザーバーは約29万部で、前年同月比で13・9%減だった。
しかし、その一方で、4月のガーディアンのウェブサイトのユニークユーザー数は240万だった。これは、前年同月比では31%の増加である。
ガーディアン・メディア・グループの2009−10年度の売上げは2億2100万ポンドで、デジタル収入はこの中で4000万ポンド。
2010−11年度の売上げは2300万ポンド減の1億9800万ポンドだった。雇用関係の広告収入は、過去4年間で4100万ポンド、減少している。
2011−12年度のデジタル収入は4700万ポンドの見込みだ。ガーディアン・グループは、この部分を早急にかつ大きく増やすことを狙っている。
ミラー氏によると、紙の印刷に関わるスタッフの一部をデジタル部門に移動させ、2016年までにデジタル収入を1億ポンドにする意向。同時に、この間に2500万ポンドの経費削減をする。
デジタル収入をどうやって大きく増やすのかは、参考にした2つの記事は必ずしも詳細に書いていないが、まずは紙媒体の構成の変更、編集方針の変更(ニュースよりも解説)、人の移動などで順次やっていくようだ。
現在、ガーディアンとオブザーバーには約1500人のスタッフが働き、630人が記者である。今回の動きで、人員削減はない見込み。
「ジャーナリズムUK」によると、2006年、「ウェブ・ファースト」(紙媒体で出すまえにニュースをウェブサイトで出す)方式を英国で初めて導入したのはガーディアンだという(ガーディアン自身がそういっている)。(ブログ「英国メディア・ウオッチ」より)
参考: Guardian announces new 'digital-first' strategy amid losses
http://www.journalism.co.uk/news/guardian-announces-new-digital-first-strategy-amid-losses/s2/a544759/ Guardian and Observer to adopt 'digital-first' strategyhttp://www.guardian.co.uk/media/2011/jun/16/guardian-observer-digital-first-strategy
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