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2011年08月09日16時32分掲載
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検証・メディア
もう一つのアルジャジーラ −英語放送の爆発的伝播力(下)
―アルジャジーラ英語経由で日本にも報道伝わる
エジプト・ムバラク大統領の辞任を求めるデモが最高潮を迎えていた頃、筆者は、英国でラジオやツイッターで情報収集をしながら、テレビの複数のニュース専門局の映像に釘付けとなる毎日を過ごした。(ロンドン=小林恭子)
あるニュースが発生し、現地にいる人が眼前の状況をツイッターやブログサイトなどで逐次報告していく手法(ブログに載せる場合は「ライブ・ブログ」と呼ばれる)は、今回の「アラブの春」でもまた、活躍した。
日本で発生したある現象にも触れておきたい。私が日本語のツイッターを追っていると、特に民衆蜂起の初期の頃に、「日本でエジプトの十分なニュースが出てない」「テレビではくだらない芸能ニュースばかり伝えている」という声が多く出た。この時、筆者は改めて、日本にはCNNやBBCのような24時間のニュース専門のテレビ局がないことに気づいた。
そんなとき、英語でニュースを追う何人かのツイッター利用者が翻訳リポートを始めたのである。英語圏のメディアに加えてアルジャジーラ英語で見た現地の様子やツイッターを適宜翻訳し、紹介していった。翻訳ツイッターはそれぞれのフォロワーの間でリツイート(再配信)され、情報を拡散させた。日本ですぐにエジプト情勢を知りたかったら、テレビではなくツイッターやアルジャジーラ英語のウェブサイトを見る─そんな選択をする人が出てきた。
日本在住のラジオDJでジャーナリストでもあるモーリー・ロバートソン氏は、こうした翻訳ツイートを熱心に行った一人だ。ロバートソン氏は、自分のウェブサイトの中で、「ネットやツイッターを多少使いこなしている人」の場合、チュニジア・エジプト情勢を通じて「急速に国際リテラシーが上がり」、リツイートが「使われ方によって大きな威力を持つさまを目のあたりにし」たと書いた(2月14日付)。
―「本当のニュースがある」とクリントン米国務長官
今年3月上旬、クリントン米国務長官がアルジャジーラ英語の報道媒体としての質について、驚くべき発言を行った。クリントン氏は米上院外交委員会に出席し、アルジャジーラは「本当のニュースを放送している」と述べたのである。ラムズフェルド元国防長官がアルジャジーラを「許しがたいほど偏向している」と批判したときとは180度の変化である。
クリントン氏によれば、米国は世界で発生している「情報戦争」に負けているという。他国の国際ニュース報道機関は、中東などの世界各地に米国の報道機関よりもより効果的に入り込んでおり、具体例がアルジャジーラなどの質の高い国際報道機関である、と。アルジャジーラは「人々の心や考え方を変えるほどの影響力を持つ」。
「アルジャジーラの視聴者が米国で増えているのは、アルジャジーラが本当のニュースを報道しているからだ」。
アルジャジーラの主張に「同意しない人もいるだろうが」、アルジャジーラの放送を見れば、「24時間本当のニュースを受け取っていると感じると思う」。一方の米国のテレビは「無数のコマーシャル、評論家たちの議論で一杯」で、「米国民にとっても、さらには外国人にとっても、たいして参考にならない」代物だ、とクリントン氏は述べた。
冷戦後、国際的情報網を解体したことで、米国は「大きな代価を払っている」、「民間の報道機関ではそのギャップを埋めることはできない」と続けたクリントン氏は、国際ニュースを報道するメディアを、世界の情報戦の最先端の道具としてみているようだ。米国からのメッセージを世界に広げるため、米国営放送「ボイス・オブ・アメリカ」を拡大させた新メディアを、公的資金を使って立ち上げる案を提唱したほどだった(ニュースサイト「ザ・ファースト・ポスト」3月3日付)。
―「アラブの春」の種子蒔いた、アルジャジーラの妹分的存在
先の『アルジャジーラ 報道の戦争』を書いたヒュー・マイルズ氏は、国際政治を扱う「フォーリン・ポリシー」ウェブ版に出た「アルジャジーラ効果」(2月8日付)と題された記事の中で、「多くのアラブ人たちは、アルジャジーラが中東で国民による革命を引き起こすのではないか、といっていた。誕生から15年経って、この予言は的中した」、チュニジアで起きた「さざなみがエジプトの長期政権を押し流すほどの波を作り出した」と書く。
例えばチュニジアである。この国の民衆蜂起は、「政府が繰り返してきた定説、つまりチュニジア政権は難攻不落で、治安体制は無敵だということが単なるプロパガンダで、チュニジア国民を従わせるためにそういっていたことをあらわにした」、アルジャジーラは「リアルタイムで、この定説を破り、何百万人もの普通の人々を立ち上がらせ、合法的な権利を主張させた。急に、中東全体で変化は可能として受け止められるようになった」。
そして、この変革の波を世界中に─地理的に遠い日本にさえも─伝えたのが、妹分的存在の英語放送であった。
しかし、一方では、こういう指摘もある。
昨年12月8日、ガーディアン紙は、カタール政府によるアルジャジーラの政治利用を示唆する米国の外交公電を報道した。この公電は内部告発サイト「ウィキリークス」に漏洩された約25万点の外交公電文書の一部であった。
09年、在カタールの米大使(当時)ジョゼフ・ルバロン氏は本国に送った公電の中で、アラブ圏の世論形成に大きな影響力を持つアルジャジーラは「カタールの最も価値ある政治上及び外交上の道具だ」と書いた。「外交関係の向上の道具」として使われた例として、「アルジャジーラがサウジアラビアの王家を好意的に報道したので、2国間に和解が成立した」と分析した。
アルジャジーラのカンファール社長は、その2日後に掲載されたガーディアンの記事の中で、カタール政府の思惑でアルジャジーラの報道内容が変わっているという見方には「真実の一片もない」と斬っている。アルジャジーラは編集権の独立を保っており、カタール政府とアルジャジーラの関係は、英国でテレビ受信料を得て活動するBBCと英政府との関係と同じなのだ、と説明する。
しかし、アルジャジーラの支援者とも言えるヒュー・マイルズ氏は、アラブ圏のメディアの大部分を「間接的及び直接的に支配」する大国サウジアラビアに関する報道について、エジプトやチュニジア報道と比べると、「やや大胆さに欠ける」と指摘する(先の「フォーリン・プレス」記事)。昨年2月、サウジアラビアの王子の一人がロンドンで召使を殺害し、後に殺人罪で終身刑となる事件があった。アルジャジーラはこの事件をほとんど報道しなかったという。アルジャジーラといえども、「自由な報道には限界がある」(マイルズ氏)。
アルジャジーラは、現在、「アラブの春」での注目を機に、念願となっていた米テレビ界に参入することに躍起だ。ウェブサイト上で「アルジャジーラ(の視聴)を要求しよう」というロゴをつけたキャンペーンを展開し、年頭から4月までに、米国でのテレビ視聴を要求する約6万通の電子メールが集まったという。アルジャジーラの存在感が増すほどに、カタールの国としてのイメージも上昇する。両者は切っても切れない関係だ。
世界でいま何が起きているのか、現地の本当の話を知るには、もはや米英のニュース専門局のみでは十分ではない─アルジャジーラは、これをしっかりとアラビア語圏の外に住む私たちの頭に叩き込んだ。(朝日「Journalism」2011年7月号掲載分、ブログ「英国メディア・ウオッチ」より)
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