今なお東日本大震災・原発惨事への対応策が最大の焦点であることはいうまでもない。しかしあえて考えてみたい。首都直下型大地震発生の懸念が強まっており、それへの備えは大丈夫といえるのか、と。万一の場合、首都壊滅さらに犠牲者も数知れず、の事態に襲われる可能性もあるのだ。首都圏の皆さん、すこしのんびりしてはいないだろうか。 心配の根拠のない「杞憂」に終われば、有り難いが、どうもそうではないらしい。ではどう備えるか。といっても秘策があるわけではない。いのちを惜しむのであれば、便利な地下鉄への依存症から自らを解放することくらいしか知恵は浮かばない。
▽ 首都圏直下型大地震の確率は70%
毎日新聞8月10日付夕刊(東京版)は、<「首都直下」強まる懸念>という見出しで次のような記事を掲載した。その要旨は以下のとおり。
東日本大震災(マグニチュード=M=9.0の巨大地震)は東日本の地殻にかかる力を変え、首都圏を含む一部の地域や活断層で地震を起こしやすい状態が続いている。専門家が懸念するのは、阪神大震災(M7.3)以上の被害が想定される首都直下型地震への影響だ。発生の可能性はどの程度高まっているのか。 中央防災会議は、東京近郊を震源とする首都直下地震について、M7級の18の地震を想定している。なかでも東京湾北部地震(M7.3)では、最悪のケーで死者1万1000人、全壊全焼の建物は85万棟と想定。関東大震災(1923年、M7.9)のようなM8級の地震より規模は小さいが、大きな被害が想定されている。 元来首都圏の地下構造は北米、フィリピン海、太平洋の3枚のプレート(岩板)が重なる地震の巣だ。地震調査委が大震災以前から公表しているM7級の直下型地震が、今後30年間に起きる確率は70%と十分に高い、と。
さらに毎日新聞同月12日付朝刊(東京版)は、<帰宅困難 対策が急務 「路上、満員電車並み」>の見出しで以下のような想定記事を載せている。この記事の要点は、直下型大地震で交通機関が途絶し、職場や買い物先から自宅に戻れなくなる「帰宅困難者」はどの程度の規模になるのか、である。
中央防災会議の想定によると、帰宅困難者は次の規模となっている。 *首都直下型地震(M7.3)では首都圏4都県で約650万人 *大阪の上町断層帯の地震(M7.6)では近畿2府4県で約200万人 *愛知の猿投(さなげ) ― 高浜断層帯の地震(M7.6)では東海3県で約96万人 三菱総研は「路上が満員電車並みの状態になる」と指摘している。
以上のように首都直下型大地震に見舞われる確率はこの30年間で70%というのだから、明日大地震に襲われるとしても不思議とはいえない。しかも最悪のケースで死者1万1000人という想定だから、決して他人事ではない。自分自身がその犠牲者の一人になる可能性はある。
▽ 外出時に首都直下型大地震に備えて、どうするか
ここでは問題を絞って考えてみたい。それは、<わたし自身>あるいは<あなた様>が外出時に見舞われるかもしれない直下型大地震に備えて、どうするかである。 <運を天に任(まか)せる>のも「無策の策」として有力といえるが、対策がないわけではない。あの「3.11」大震災のとき、私の友人の一人がたまたま首都圏地下鉄に乗っていて、地下鉄内に8時間も閉じこめられるという想定外の難儀に遭った。もちろん友人だけでなく沢山の乗客が不運にも地下で長時間自由を奪われたわけで、この事実はメディアもあまり伝えていない。 首都圏では地下鉄が縦横に走っている。それだけに首都直下型に襲われた場合、地下に閉じこめられたままで、脱出できないことになれば、犠牲者がどの程度の規模になるのか、予測がつかない。数知れないという大惨事につながることにもなりかねない。
この惨事に巻き込まれないための選択肢は果たしてあるのか。あることはあるが、限られている。それは交通機関の選択で、いのちを惜しむのであれば、地下鉄の利用をできるだけ控えることである。地下鉄以外ではJR線を利用するのが上策である。 日頃バス、自家用乗用車の利用者も多いが、万一の時は道路の大混雑、沿道のビル倒壊などで、立ち往生するほかなくなる。東日本大震災ではクルマに頼った人が津波に巻き込まれ、どれだけ多くの人が犠牲になったかを想起したい。 最後の頼りになるのは、自分の脚である。徒歩で自宅を目指すほかに手段はないから、日頃脚を鍛えておくことである。
▽ 便利重視の地下鉄依存症から閉じこめられる危険の少ないJRへ
さて万一に備えて、日頃地下鉄の利用を避けるためにはどうすればよいか。わたし自身はこれまでは拙宅近くの北千住駅(東京・足立区)を経て地下鉄で都心に向かっていたが、地下鉄を利用しないで、都心に行くコースに変更する。例えば東京駅周辺に行く場合、北千住駅で常磐線に乗り換え、終点の上野で山手線あるいは京浜東北線に乗って、東京駅まで行くコースである。早速実行してみた。 時刻は午後2時過ぎで、北千住駅の常磐線ホームに降りてみると、次の電車は何と20分後である。電力節約のため、いくつか間引き運転しているからである。時間つぶしのため駅構内の売店に立ち寄った。日刊ゲンダイ(8月19日付)の次のような見出しが目に飛び込んできた。関心をかき立てるような紙面で、早速一部買い求めた。
政治劣化を招いた怪しい集団 民主党現役幹部の多くを輩出した「松下政経塾」の本当の正体を知りたい ポスト菅が彼らなら国は戦前回帰 民主党の中に松下政経塾党という別の党がある 頭でっかちの政治オンチばかり
以上の見出しが派手に並んで、野田財務相の大きな顔写真をあしらい、以下のような解説記事がついている。 松下政経塾が、にわかに注目を集めている。目下、ポスト菅の本命とかいわれる野田財務相が政経塾の一期生で、もし野田首相が誕生すれば、政経塾初の総理大臣となるからだ。 彼らの生活体験や思想は自民党より右側に位置しているのに、選挙の当選を狙って左派の多い民主党に乗り込んで、政権交代実現後の政治をゴチャゴチャに混乱させている、と。
以上の趣旨を目で追っているうちに常磐線電車が滑り込んできた。実はこの種の新聞はこれまで手にしたことはなかった。読んでみると、おもしろい。20分も電車を待たされたお陰であり、ご縁といえるかも知れない。
北千住駅から東京駅までの所要時間は、北千住駅での待ち時間を除くと、30分足らずである。これに比べると、地下鉄利用の方が少し時間短縮できるかも知れないし、便利なのだろう。現役のサラリーマンにとっては少しでも早く、という心理が働くことは否めない。しかし後期高齢者の我が身にとっては時間よりも安心・安全感が大切である。従来の地下鉄依存症から自らを解放し、万一の時、閉じこめられる危険の少ないJR線の利用になじむ必要があると思案している。
*本稿は「安原和雄の仏教経済塾」からの転載です。
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