9月26日、中国の四川省で2人の若いチベット僧が焼身自殺を図ったと報じられた。同様の報道は、今年三月以来3件目である。中国の公式報道機関によると、自殺を図った2人は直ちに病院へ運ばれたという。しかし、亡命チベット人の情報によれば、2人の正確な所在は不明で、2人のうち1人はその場で死亡した可能性があるという。(アムネスティ国際ニュース)
一連の焼身自殺は、チベット人居住区での宗教や文化の自由に対する中国政府の弾圧に抗議したものであると報じられている。アムネスティ・インターナショナルは、中国政府に対し、このようなチベット人に対する弾圧を直ちに中止し、チベット人が自らの宗教や文化を享受する権利を尊重するよう要請する。
中国政府は、このような事件が起きているただ中にある、四川省アバ県のキルティ僧院や、同省カンゼ県のニャツオ僧院への弾圧を強めている。
キルティ僧院で起きた今回の自殺は、8月15日にニャツオ僧院のツェワン・ノルブがチベットの自由とダライラマの帰還を要求して焼身自殺をしてから、わずか6週間後に起きた。
ツェワン・ノルブの焼身自殺は、今年3月に起きたキルティ僧院のブンツォクの焼身自殺以降強化された、中国当局による強権的な取り締まりが動機であったと報じられている。
今週焼身自殺を図った僧侶の1人は、ブンツォクの兄弟だと伝えられている。6ヵ月前、ブンツォクは自分自身に火を放つ際、「ダライラマ万歳」などのスローガンを叫んだという。
ブンツォクの自殺は、2009年、ダライラマの写真が中央に貼ってある自作のチベットの旗を掲げながら焼身自殺したもう1人のキルティ僧院の僧侶タペイのことを思い起こさせた。
今年3月にブンツォクが焼身自殺した後には抗議デモが起き、キルティ寺院の300人の僧侶を含むチベット人が大量に逮捕され、強制失踪や、治安部隊による可能性がある殺人も起きている。キルティ僧院の僧侶に連帯を表明した高校生が通う高校は、治安部隊により封鎖され、取り調べを受け、本を焼かれたという。
キルティ僧院の僧侶の大量逮捕を阻止しようとする地元住民と治安部隊の衝突が起き、2人の年輩のチベット人、シェルキと呼ばれる65歳の女性とドンコという60歳の男性が、その後に死亡した。また、伝えられるところによると、チュクペルという別の24歳のチベット人は、警察に殴打された後、病院で死亡している。チュクペルはアバ県の地元警察署の外で、チベットの自治を訴える抗議活動をしていた。
今年3月に逮捕された、ブンツォクの叔父を含む3人の僧侶に対して、焼身自殺を唆した罪、あるいは「意図的殺人罪」により10年ないし13年の拘禁刑が最近言い渡された。
今年3月に拘禁された約300人の僧侶の中には子供も含まれていたが、中国当局は彼らを「愛国主義教育」のために連行したとしている。「愛国主義教育」とは、ダライラマを批判することや、中国政府版チベット史を教え込むことである。
その後、ほとんどの僧侶は解放された。しかし、継続中の刑事訴訟手続きにおいて、少なくとも新たに5人が3年の禁固刑を言い渡されたことを、アムネスティは確認している。この5人の名前は、ロブサン・ケドゥプ、ロブサン・ギャツォ、ドンヨ・ドルジェ、ロブサン・ダルギェ、クンチョク・ツルティムである。5人の裁判での正確な罪状やその他の詳細は不明である。しかし、チベットや中国のその他の場所で、公正な裁判を受ける権利が侵害された例を数多くアムネスティはこれまでに記録している。さらに、他に少なくとも3人が、労働による再教育の刑である「労働教養」に処せられている。
亡命チベット人の情報によれば、8月のニャツオ僧院での焼身自殺以来、治安部隊がカンゼ県を管轄下に置いているという。治安部隊により、僧院への水、電気、食料の供給が断たれたという報道もある。また、アバ県では、インターネットや携帯電話によるメッセージの送信ができなくなっているという。
キルティ僧院でも、僧侶への「愛国主義教育」が毎日続けられている。
▼中国関連ニュース
中国 : 弾圧が強化され、弁護士には暗黒の時代
http://www.amnesty.or.jp/modules/news/article.php?storyid=984
中国 : 2009年7月5日のウルムチにおける抗議と弾圧から2年。基本的権利の抑圧は今も続いている
http://www.amnesty.or.jp/modules/news/article.php?storyid=979
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