ロシアのラブロフ外相は「ボイス・オブ・ロシア」でカダフィ大佐の死に対して調査が必要だとコメントした。ジュネーブ会議で形作られた国際法や人道的原則に基づけば、戦闘中に敵兵を捕まえた場合は負傷していれば手当てをするなどの措置が必要となる。殺すことを禁じていることは言うまでもない。「しかし、カダフィの最期の状況をビデオで見ると負傷したカダフィは捕まった後に殺されたことがわかる。」
さらにラブロフ外相が指摘しているのはカダフィ大佐の死は国連決議を逸脱するものだったという指摘である。国連で決議されたリビア政府への牽制(resolution 1973)はリビア全土における飛行禁止措置(no-fly zoneと呼ばれる。ただし、人道目的や市民を守るための飛行などはのぞく)やリビア市民を守るための「あらゆる」手段の行使などで構成される。
しかし、ラブロフ外相はNATOの軍事行動がそれを逸脱していたというのである。no-fly zoneはもっぱらリビア政府軍機がリビアの反政府市民を殺していることに対する措置だった。ところが、NATO軍が今回空爆したのはカダフィ大佐の乗った車両であり、それはリビア政府軍機の飛行とは関係がない。また、カダフィ大佐の乗った車両への空爆はリビア市民保護の目的でもなかった。この時,カダフィ大佐らの車両移動はリビア市民殺害が目的ではなかったからだ。
ラブロフ外相はリビアで成功体験を得た西欧諸国がさらにシリアでも同じモデルをくりかえす危険を指摘している。しかし、国連安保理で出されたシリア制裁案に対してロシアと中国が反対したため、リビアのような軍事制裁措置は取られなかった。ロシアはシリアにおいて政府側と反政府側に暴力を中止し、話し合いで解決するように求めている。
http://english.ruvr.ru/2011/10/22/59150714.html
■リビアの ’no-fly zone’とは?
3月17日に国連安保理で一連のリビア市民保護のための措置が決定されたが、その中にリビア全土における飛行禁止措置(ただし、人道目的、外国人の避難、市民保護のための飛行などは除外する)も盛り込まれている。
http://www.un.org/News/Press/docs/2011/sc10200.doc.htm ’Security Council Approves ‘No-Fly Zone’ over Libya, Authorizing ‘All Necessary Measures’ to Protect Civilians, by Vote of 10 in Favour with 5 Abstentions’
「国連安保理はリビアにおける’no-fly zone'措置を認め、市民を守るためのあらゆる手段を取れることを賛成10か国 対 反対0、および棄権5か国(ブラジル、中国、ドイツ、インド、ロシア)で決定した。」
これはresolution 1973と称される。リビア国内における飛行禁止(ただし人道目的や外国人の避難、リビア市民を守る目的などは除外)のみならず、リビア資産の凍結なども記されている。「(リビア軍の)飛行禁止」と書きながら、同時に「(国連加盟国が)市民を守るためのあらゆる措置を取れる」という文言がある。ただし、外国軍がリビアに侵攻することは除外するとされる。
リビアに詳しい佐々木良昭氏によれば、NATO軍はリビアに空爆を8000回以上行い、出撃回数は2万回を超えた。
「国連の人道支援、民間人救済の名のもとに、NATO軍のリビア飛行機禁止が決議されると、イギリスとフランスは空軍機を送りリビアの反体制側に武器を供与し始め、次いでカダフィ派拠点への空爆を始めた。これは明らかに国連決議の範囲を超えるものだったが、大声で反対する国も人も皆無に近かった。NATO軍の空爆は8000回を超え、出撃回数は2万回を優に超えるものとなった。」 (ダイアモンドオンライン・「ニュースアナリシス」より)
国連決議1973でリビア空軍は飛行禁止とされ、制空権を得たNATO軍はカダフィ側にこれだけ空爆を行ったのである。
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