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2011年10月31日17時55分掲載
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アフリカ
誘拐されたヨーロッパ人 西サハラ難民キャンプからAQIMが連れ去る 文:平田伊都子 写真:川名生十
「2011年10月22日真夜中(現地時間)、アルジェリアにある西サハラ難民キャンプの外国人レセプションセンターにマリ方面から来たAQUIMとみられるテロリストグループが四駆で侵入してきた。3人のヨーロッパ人を誘拐し来た方向へ逃げ去った」と、英国BBCが報道した。 誘拐されたアインフォア.フェルナンデス(スペイン女性)、エンリコ.ゴンジャロンス(スペイン男性)、ロセッラ.ウルック(イタリア女性)の3人は、それぞれ別の西サハラ難民を支援するNGO団体に属している活動家たちである。 36年前にこの地に難民キャンプを張って以来始めて起きたテロ事件に、関係諸国が事件を利用しようと蠢めき出した。 * 事件現場の外国人レセプションセンター 筆者は20回以上西サハラ難民キャンプにお邪魔したが、誘拐事件のあった外国人レセプションセンターで寝泊りしてきた。 門番も料理人も管理人もみんな友達だし、まるで我が家に帰った気分で過ごしてきた。 そこでテロ誘拐事件が発生するなどとは、、俄かに信じられなかった。 西サハラ難民キャンプの入り口にある外国人レセプションセンターは、アルジェリア最西端の軍事基地チンドウーフから約50キロの砂漠にある。 アルジェリア領土内にあるとはいえ、アルジェリア政府はポリサリオ西サハラ難民亡命政府を正式な国家として認め、難民キャンプ地域にアルジェリア軍を展開させていない。 12月中旬に開かれる4年に一度の<第13回ポリサリオ西サハラ民族大会>に参加を決めている筆者にとって、誘拐事件は人事ではない。 一体、誰がどうやって何のために、あの平和な西サハラ難民キャンプに侵入したのか?、、事件を追ってみた。 誘拐事件が起きたのは、10月22日土曜日の真夜中である。 毎土曜日の真夜中、正確には日曜日の0時30分に、首都アルジェ発の定期便がチンドウーフ空港に到着し、ポリサリオ兵士たちは外国からの訪問者たちを飛行場に迎えに行く。 飛行場から約50キロ離れた難民キャンプの外国人レセプションセンターが一番手薄になる時間帯なのだ。 外国人レセプションセンターの周りにはボロボロの金網が張り巡らされていて、二ヶ所ある門には南京錠がかけられていて守衛もいる。 が、金網が一箇所壊れていて、そこから自由に出入りができる。 一週間に二回のアルジェ.チンドウ-フ間フライトスケジュールを知っているよそ者?抜け網を知っているよそ者?、、筆者には思い当たる節がある。 それはポリサリオ西サハラ難民亡命政府解放区で難民の世話になっていたマリ難民、、レセプションセンター前に新しくできた食堂で働くマリ難民、、彼等なら英国BBCが言うところのマリに拠点を置く AQIMをレセプションセンターに手引きすることができる。
* AQIMとは?
リビアの国民評議会と繋がっていたということで、AQIMの存在が急に浮上してきた。 一体、AQIMとは何なのか? AQIMとは<Al Qaeda in the Islamic Maghreb>の頭文字を取った略称で、<イスラム北アフリカのアルカイダ>を意味する。 2006年にアルカイダが、反アルジェリア政府運動をしていたGSPC(アルジェリア武装勢力)を中心にしてこのAQIMを結成したという。 AQIMは約400の戦闘員を擁しマリ、ニジェール、モーリタニアなどでテロ活動を展開している。 アルジェリア国内での爆破事件や人質事件や麻薬事件に関わっているそうだ。 2010年7月のフランス人誘拐殺人事件はAQIMの仕業だ。 AQIMの終局的な目標は、北アフリカから地中海を越えてフランスやスペインにイスラム国家を作ることだという。 AQIMは「リビアをイスラム国家にする」と、声明を出した。「リビアはイスラム法を基本とする国家を目指す」と、ジャリル国民評議会代表は宣言している、、、 AQIM三人衆: ① アブドルマレク.ドロウケデル、ビッグボス。アルジェリア内戦当時から活動。 ② ムクタール.ベルムクタール、アフガン戦争で片目を失い、通称<片目の族長>。 ③ アボウ.ゼイド、<南の首長>と仇名され、誘拐が専門。
これまでモロッコは<ポリサリオ西サハラ難民亡命政府はAQIMと繋がっている>と、西サハラ側を中傷してきたが、この事件でポリサリオ西サハラ難民亡命政府がテロリスト組織と関係ないことが証明できた。 逆に、不法移民ルート、麻薬ルート、テロリストルートを持っているのはモロッコだということが、焙り出されてきた。
* 元西サハラ宗主国スペイン、現西サハラ宗主国モロッコ
誘拐事件から四日後の10月26日、西サハラ難民キャンプの友人マライニンからメールが来た。 作家協会会長とジャーナリスト協会会長を兼ねる彼の文はだらだら長く人ごとのように分析を気取っているので、要点を次に紹介する。 「この誘拐テロの目的は、西サハラ民族の悲願である独立運動を破壊することにある。西サハラ独立運動を支援してくれる友人たちの恐怖感をあおり、彼らの活動を阻止しようとしている。そして12月に予定されている第13回ポリサリオ西サハラ民族大会を潰そうと企んでいる。 外国人誘拐はAQIMテロ作戦の第一段階に過ぎず、次の標的は西サハラ独立運動の指導者や市民や難民だ。西サハラ民族に挫折感を植え付け、独立を断念させる積りなのだ。 西サハラを植民地支配しているモロッコはこれまで、あらゆる汚い手口を使って、西サハラ被占領民やアルジェリア難民キャンプに住む西サハラ難民を買収しようとしてきた。 西サハラ独立運動の中に、不信感や裏切りの種を蒔こうとした。これまで植民地支配者たちが被植民地住民に使ってきた常套手段で、モロッコは西サハラ民族独立運動を潰せると 思っている。 10月25日、スペイン外相トリニダドがモロッコを訪問し、誘拐されたスペイン人の釈放要請をした。何故、スペインは真っ先にモロッコの助けを求めたのか?AQIMとモロッコが繋がっているからだ。スペインは西サハラの旧宗主国で、モロッコは現宗主国である。 同日の合同記者会見でモロッコ外相エル.ファッシは<アルジェリアにこの誘拐テロの全責任がある。難民キャンプのあるチンドウーフ地域はアルジェリアの許可なしに侵入できない>と、嘯いた。 どの国もテロ攻撃に対して安全ではない。どの国も独力でテロに対処し、闘い、撲滅することはできない。我々は国際社会と共に、友人3人の解放に向けあらゆる努力をする。」
* モロッコを暴いたウィキリークス
10月26日、モロッコを支援するNGO団体の米国人ナンシー.ヒュッフがモロッコ通信社に声明を出した。 「ヨーロッパ人三人が誘拐されたアルジェリアのチンドウーフはアルジェリアの軍事要所である。にも拘らず、アルジェリアは難民と外国援助者の安全を守れない。この不法地帯の治安維持のため国際委員会の設置と派遣を求める要請を、スペイン政府と協力して求めたい。UNは、難民キャンプ内にAQIM活動家を温存している責任をポリサリオに求めるべきだ。ポリサリオとAQUIMの関係はハット.アシャヒドが証言している」 モロッコが言うハット.アシャヒドとは西サハラ人サレクが2003年頃にスペインで立ち上げた西サハラ独立運動に反対する組織で、2006年にはモロッコ情報部との連携を広言した。 現在はハット.アシャヒドを止め<西サハラ改革運動>を名乗ってモロッコ情報部のために宣伝活動をしている。
ウィキリークスによると「モロッコ王や側近に近い将軍達が、麻薬密輸とマネーロンダリングに絡んでいて、コロンビアやラテンアメリカの犯罪グループと関係している。マリやニジェールから北アフリカを越えヨーロッパやイスラエルに至るテロネットワークの一部はモロッコ秘密情報局が操りモロッコのテロリストが使われている。マリ北部を拠点とするテログループはモロッコを利用している」と、暴露していた。
* 人質三人を即時釈放しろ!
2011年10月22日に西サハラ難民キャンプから誘拐されたヨーロッパ人たちの消息は一週間経った今も不明だ。 当事者も国際社会も挙ってテロ非難声明を出した。 10月24日、イタリアのNGOとスペインのNGOが人質の即時釈放を訴えた。 10月24日、ポリサリオ西サハラ難民亡命政府は国連、ヨーロッパ連合,アフリカ連合などの国際組織に人質救出と犯人逮捕の協力を緊急要請した。 10月26日、アルジェリアとマリの大統領は西サハラ難民亡命政府への協力を、共同声明で約束した。 10月29日、「西サハラ人は誘拐テロに関係していない。犯人はAQIMのムクタール.ベルムクタール派だ」と、スペイン政府筋の声明をカデナ.セルラジオが発表した。 10月29日、ポリサリオ議長で西サハラ難民亡命政府大統領アブデル.アジズは叫んだ。 「ポリサリオ西サハラ難民亡命政府は我々の友人三人を即時に解放することを犯人たちに 強く訴え、国際社会に協力を求める。我々の独立運動を潰そうとするあらゆる汚い妨害に立ち向かい、祖国解放を目指す。我々を支援してくれる友人たちにこれ以上手出しをさせない。2011年12月のポリサリオ西サハラ民族大会は必ず成功させてみせる」
冬の砂漠は零度を切る寒さだ。 一日も早く三人の心優しい人達が解放されることを祈 ります。
文:平田伊都子 ジャーナリスト 写真:川名生十 カメラマン
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誘拐された3人、左からフェルナンデス、エンリコ、ロセッラ
西サハラ難民亡命政府作家協会会長、ジャーナリスト協会会長、マライニン
事件が起きた西サハラ難民キャンプの外国人レセプションセンター





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