遺伝子組み換え技術は世界の貧困を救うための素晴らしい夢の事業ではないのか?企業の宣伝を読めば誰しもそんな風に思えるだろう。しかし、そうした企業の人間の振る舞いを見ると、企業の本質が見えるものである。きれいごととは違った顔がそこに透けて見えることもある。米報道番組「デモクラシー・ナウ!」に米モンサント社と一人で戦ったカナダの農民が登場した。その農民は脅しにも屈せず戦い続け、ついに勝利を勝ち取った。
「ドイツのボンに集まった約80人のライトライブリフッド賞受賞者たち中に、カナダの農民パーシー・シュマイザーの姿がありました。受賞理由は、生物多様性と農民の権利を守るための勇気ある行動、すなわち巨大バイオ企業モンサントに対して戦いを挑んだダヴィデのような行動です。その発端は、隣家が育てていたモンサントの遺伝子組替えナタネの花粉が風で飛ばされシュマイザーの畑に混入し、50年かけて改良を重ねた自家開発の品種品種を汚染した事件でした。取り返しのつかない損失に打ちひしがれるシュマイザーに追い打ちをかけるように、モンサントは自社のGM種子を無断で栽培したとしてシュマイザーを特許侵害で訴え賠償金を要求したのです。あまりの理不尽と傲慢なやり方が彼を奮い立たせ、農民の権利のための戦いが始まりました。シュマイザー夫妻の戦いの記録を通じて、モンサント社と遺伝子組換え産業の危うさが浮き彫りになります。」
http://democracynow.jp/video/20100917-1 このカナダの農民、パーシー・シュマイザーさんはドキュメンタリー映画の主人公になっている。去年の国際有機農業映画祭でも上映された。まさに驚くべき実態である。
■「パーシー・シュマイザー、モンサントとたたかう」 原題:Percy Schmeiser-David gegen Monsanto 2009年/ドイツ/65分 英語・日本語字幕 監督:ベルトラム・フェアハーク 製作:デンクマル・フィルム
「カナダの農民パーシー・シュマイザーの菜種畑は風で飛ばされてきたGM(遺伝子組み換え)種子によって汚染された。彼は50年間の仕事の成果を失った上に、GM種子を開発したモンサント社に特許権侵害で訴えられた。裁判所は彼に損害賠償金の支払いを命じた。モンサント社は彼と家族の行動を監視し精神的ダメージを与え続けた。彼と妻のルイーズはその圧力に屈せず最高裁に訴えた。米国でも同様にモンサント社に抵抗する農民達がいた。モンサント社の狙いは何か? 巨大企業に立ち向かう農民を支えるものは何か? 最高裁の下した判決は?」(国際有機農業映画祭のホームページを参照した。以下も同じ)
この遺伝子組み換え種子は世界各地で有機農業に対する脅威となっており、ドキュメンタリー映画もたくさん作られている。今年の国際有機農業映画祭でも再度、このテーマの作品が上映された。最早、農民だけの問題ではなくなっている。明日何を食べるか、というところまで迫ってきている問題である。次の映画もそうだが、ドイツの映画人がこの問題を追究しているのは偶然だろうか?
■「攻撃にさらされる科学者」 2010年/ドイツ/ 60分 英語・日本語字幕 原題:Scientist Under Attack 監督:ベルトラム・フェアハーク 制作:デンクマル・フィルム
「自分のキャリアを棒に振った二人の優れた科学者。彼らは、遺伝子組み換え作物の安全性に疑念を示した結果、バイオ産業からの様々な攻撃を受けてきた。遺伝子組み換え技術の研究のうち、バイオ産業から独立したものは、わずか5%にすぎない。科学研究の自由と私たちの民主主義は、今、危機に瀕している。」
■「GMのワナ −農家から農家へ−」 2011年/英国/24分 英語・日本語字幕 原題:Farmer to Farmer : The Truth About Gm Crops 構成:ぺテ・スペラー 制作:ハート・プロダクション・フィルム
「イギリスで有機農業を営み、1996 年の商業化以来GM栽培に警鐘を鳴らし続けるマイケル・ハートが、十数年たったアメリカの農家を訪れ、そこで目撃したアメリカの農家が抱えるGM栽培の現状とはどんなものか、雑草と作物に対するGMの影響や、費用対効果と環境への影響などGM作物栽培の実態を報告する。」
遺伝子組み換え技術は一種の著作権ビジネスであり、先に開発して世界をそれに依存させれば巨額の富が手に入る。研究を支持し、宣伝してくれる科学者や技術者には金が渡っていると指摘するジャーナリストが出ている。
下は日刊ベリタで過去に紹介したものである。近年、財政難になった国々は大学などの研究予算を削減し始めている。日本に限らず英国でもアメリカでも同様のようだ。科学者・技術者が研究資金を企業に依存する割合が高くなればなるほど独立した研究はできなくなる。その結果、はなはだしい場合は発表内容すら改ざんされているらしい。大学が人文教養課程を削り、科学工学の狭い専門分野のことしかわからない研究者を増やせば増やすほどロボットのような人間が増えていくだろう。
■企業スポンサーと研究結果の修正
「ジェフリー・M・スミス(Jeffrey M.Smith)が書いた「偽りの種子〜遺伝子組み換え食品をめぐるアメリカの嘘と謀略〜」(家の光協会)は企業スポンサーのために研究者がしばしばデータを修正していることを指摘している。
<遺伝子組み換え食品の安全性についての研究が、これほど不十分で、危険性はこれほど甚大なのに、立派な研究機関や科学的調査委員会、学術雑誌、はては政府機関までもが、なぜ遺伝子組み換え食品を安全であると口をそろえて擁護するのだろうか。市民の身を守る盾として利用できるかもしれない証拠を、なぜあわてて糾弾するのだろう?・・・
公的な研究費用の不足から、アメリカやヨーロッパの研究者は次々と企業スポンサーに頼るようになり、そのため、研究のみならずその結果までも企業に受け入れられるものでなければならなくなってきた。たとえば、イギリスでトップクラスの大学研究施設では、研究費用全体の80〜90パーセントを私的資金へ依存していることがままあるという。けれども企業の後援に頼ることは、見えない付けとなって返ってくるのである。
イギリスで、政府または最近民営化された研究所のいずれかに勤務している研究者500人に対し行われた調査によると、そのうち約30パーセントがスポンサーである依頼主によって、研究結果を修正するように頼まれたことがあるという。>」
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201107122310222
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