2002年の開催から今回で10回目を迎えたマンガやアニメ、ゲームに関するマレーシア最大のイベント「コミック・フィエスタ2011」が12月17、18の両日、クアラルンプール市内で開催された。会場には内外から1000人以上のコスプレーヤーが結集、2日間の入場者も1万5000人を突破し過去最高を記録した。(クアラルンプール=和田等)
初日の17日には、この日が待ちきれなかったかのように開場前から会場には長蛇の列ができ、イベントが始まる前から熱気ムンムンの雰囲気が漂っていた。
今回のフィエスタの目玉は、日本の女性アニメ・ソング歌手2人が初めてマレーシアでの公演を実施したことだ。3年ほど前にアニソン歌手の大御所、水木一郎さんがマラッカで公演やファンとの交流の場を持ったことがあるが、女性のアニソン歌手のマレーシア公演はおそらく初めて。 ステージにテレビ・アニメ「境界線上のホライゾン」や「sola」「伝説の勇者の伝説」などの挿入歌を歌うCeui(*1)と、「幻想魔伝 最遊記」や「BLUE DRAGON 天界の七竜」の主題歌などを歌う下川みくにさん(*2)が登場すると、会場の熱気がヒートアップ。2人の日本語での問いかけに日本語で答える参加者も多く、アニメなどを通じていかに日本語が浸透しているかがうかがえた。
2人はそれぞれのもち歌を披露した後、「創聖のアクエリオン」の主題歌をデュエットした。
公演後、2人は地元メディアに対する記者会見を行った。 「マレーシアに来るのは初めてだったので、こちらに来る前はどのくらいの人が会場に来てくれるか心配でしたが、こんなにたくさんの人に来てもらってうれしかった。アニメソングが日本だけではなくて、世界に広がっているのだということを実感しました」(下川みくにさん)、「マレーシア人の陽気さ、すがすがしさに感銘を受けました。それはこの暖かい気候がもたらしたものだと感じました」(Ceui)と、マレーシアの第一印象に好感を持った様子。
2人は「またマレーシアのみなさんと会える機会があればうれしいです」との希望を表明。次の公演先の台湾に向かった。
2人が所属する事務所シー・エル・エスの菊池秀徳代表取締役は「マレーシア単独での公演というのはむずかしいかもしれないが、今回のようにほかの場所をいっしょにまわるという形なら、弊社所属の歌手やタレントのツアーにマレーシアを加えることが可能だと思う。今回マレーシアに来てみてこれだけのファンがいるということがわかったので、マレーシアでの公演実現を前向きに検討したい」と語り、手応えを感じた様子だった。
今回のマレーシア公演は下川さんが台北、中国(北京、上海、香港、マカオ)、シンガポール、ソウル(韓国)に次ぐ公演、Ceuiは中国・広州と香港に次ぐ3回目の公演となった。
下川さんは「東日本大震災後の海外でのコンサートで多くの人たちが日本のことを気遣い、心配して支援したいとの気持ちを持っているということを強く感じたので、歌を通じて日本のことをもっと知ってもらうためにかんばりたい」との決意を表明した。
*1:2007年にシングル「微睡みの楽園」でメジャー・デビュー。主にテレビアニメやPCゲームの主題歌を歌っている。千葉県出身
*2:女性アイドルグループ「チェキッ娘」のメンバーとしてデビュー後、2000年にTVアニメ「幻想魔伝 最遊記」主題歌「Alone」の発表以降は、主にアニメ・ソング歌手として活躍。北海道出身
このほか、フィエスタではアニメ・ファンの間でカリスマ的な人気を誇る新海誠監督の新作「星を追う子ども」が、東南アジア地域では初公開され、同作品の絵コンテが会場に展示されるなどの出し物もあった。
会場はコスプレーヤーで満ちあふれ、マレーシアだけでなく、シンガポールやインドネシアなどからの参加者も。また欧米系の人の姿もみられた。
マンガ家やアーティストが出展したブースでは、オリジナル作品を収録した冊子やイラスト画、バッジ、手作りフィギュアなどの販売がおこなわれたほか、市販のフィギュアを並べていた人もいたが、大型のものはマレーシアでは種類が少ないので、シンガポールや韓国、中国で入手したという人も。購入先に日本があがらなかったのは、円高の進行もあってコストが高くつくから。これをクリアする努力をすれば、マンガやアニメのファンをもっと日本に呼び込めるのに、と痛感した。
それは、日本在住のマレーシア人クリエーター、ダニー・チューさんが製作したテレビ番組「カルチャー・ジャパン」を食い入るように見つめる参加者の反応にもうかがえた。
ステージでは、このほかコスプレ・コンペティションやバンド演奏、ダンス、今回初実施となるファイティングゲーム・コンペティションなどがおこなわれ、会場が熱気に満ち溢れる中、今回のフィエスタは幕を閉じた。
経済や政治面では停滞が続き、テレビ・ドラマや映画、音楽でも韓流に押されっ放しの日本だが、このフィエスタ参加者の熱気にマンガやアニメなどのサブカルチャー部門では、日本が他を圧倒する強さを発揮しているということを再認識させられたひとときだった。
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