今日の新聞でアメリカの格付け会社スタンダード・アンド・プアーズがユーロ圏の国債を格下げするらしいと報じられたことが引き金となってユーロが急落したことが報じられた。しかも、この騒ぎは実際にスタンダード・アンド・プアーズが格下げしたことによるのでなく、格下げしそうだという単なる噂が引き金になっている。スペインの新聞エル・パイスの漫画家Erlichはさっそく、スタンダード・アンド・プアーズを漫画にした。
http://www.elpais.com/vineta/?d_date=20120114&autor=Erlich&anchor=elpporopivin&xref=20120114elpepuvin_2&type=Tes&k=Erlich スタンダード・アンド・プアーズなどアメリカの格付け会社の格付けがアメリカの金融恐慌の一因となったことは以前から批判されている。格付け会社が格付けを受ける企業から手数料収入を得ていたことも批判されていた。以下はウィキペディアのスタンダード・アンド・プアーズに関する記述である。
「サブプライムローン関連債権などには、最上級であるAAA(トリプルA)など高い格付けが行われていた債権が多数存在していた。これらの債権は金融危機に際し、わずか数日にて最上級からジャンク格にまでの格下げが実施された。これにより市場は大混乱に陥り一連の金融危機に際し格付機関の責任も問われる事態となり、格付けの対象である債券発行側から手数料収入を得ているビジネスモデル、不透明性、説明責任、などが問題視され金融危機を引き起こした一角として、米国上院、下院の両院で審議会が開かれ格付け機関の責任が問われる事態となった。」
朝日新聞14日付によれば、「12日から13日にかけての市場は、財政不安のあるスペインやイタリアが借金のために出す国債の入札が順調だったため、ユーロを買い戻す動きが優勢になっていた。ところが13日午前(日本時間13日深夜)に「格下げ観測」が流れたことで流れは一変」とある。
欧州の金融機関がアメリカのサブプライムローンをアメリカの格付け会社のAAAの評価を信じて多数買い込んでいたことが欧州の金融悪化の重大な原因になっている。現在のユーロ危機はその上に国債のリスクが重なったものである。
2008年のリーマンショックの後、アメリカから買ったサブプライムローンが不良債権化し、その価値が下がれば下がるほど引き当てるべきコストが膨らんでいった。不良債権処理のため欧州金融機関は大きな損害を被り、体力が低下した。体力が低下している時にさらにギリシアに端を発する国債の価値下落が顕在化した。欧州の多くの金融機関がギリシア国債を多額に買っていたからだった。ギリシアはユーロを導入するために欧州連合に不正な財務報告を行った。その時、知恵を貸したのがアメリカの金融会社ゴールドマン・サックスと言われている。
ユーロ危機の背後にアメリカの影がちらついて見える。
■ギリシア問題にゴールドマンの影http://meimai.cocolog-nifty.com/twgt/2010/02/post-b6fd.html ゴールドマンサックスは米財務省など、多くの人間が米政府に入るなど、米国政府と関係の深い金融機関である。
■ニューヨークタイムズ紙(2010年2月13日付)「ウォール街が欧州危機隠ぺいを手助け(Wall St. Helped to Mask Debt Fueling Europe’s Crisis)」
http://www.nytimes.com/2010/02/14/business/global/14debt.html ’As in the American subprime crisis and the implosion of the American International Group, financial derivatives played a role in the run-up of Greek debt. Instruments developed by Goldman Sachs, JPMorgan Chase and a wide range of other banks enabled politicians to mask additional borrowing in Greece, Italy and possibly elsewhere.’
ゴールドマンサックスが国の赤字をデリバティブを使って巧妙に隠す手口をギリシアに指南したことがギリシアの財政危機を巨大なものにする原因となったとされるが、同様の指南はJPモルガン・チェース銀行や他の金融機関によっても行われていた。指南を受けて借金を拡大した国にはギリシア以外にもイタリアなど複数の国があるとされる。これらの国々は欧州連合の財務基準を迂回するテクニックを得て、赤字を拡大したというのである。
ちなみに記事によればギリシアが世界から借りた借金は3000億(約24兆円)ドルに達していた。ギリシアの国内総生産(GDP)は2008年は3575億ドルである。サブプライムローンによる損害も、ギリシアやイタリアなどの放漫財政によるユーロ危機も欧州人の失態だが、その根源には金融工学を万能視していたアメリカの存在があったことがわかる。そのようなアメリカ型経済と並走した欧州経済人が多数存在したことが問題となっている。
金融工学で生まれた怪しいサブプライムローンをAAAに格付けしていたアメリカの格付け会社の動きを、今、世界の金融関係者や投資家、さらには政治家たちが固唾を飲んで見守っているのである。
■ギリシアの赤字(外務省による)
「2008年秋以降の世界的な経済危機の影響を契機にギリシャの経済状況は低迷し、財政赤字の大きさ、低調な経済成長率や高い失業率等が問題視されてきた。こうした中、2009年10月の政権交代を受け成立したパパンドレウ新政権は、前政権が財政赤字を過小評価していたとして、5%程度とされていた2008年財政赤字が実は7.75%であったことを公表するとともに、4.7%程度と見られていた2009年財政赤字も12.7%となる見込みである旨表明。これを受け、市場におけるギリシャ国債の利率が一時7%台後半に上昇する等、ギリシャ財政への不安が拡大した。」
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