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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2012年02月08日11時54分掲載
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中国
【中国経済開発・ある断面】高能率農業と農的生活のはざまで(下)中国版半農半Xに出会う 安藤丈将
ここまで論じてきた経済成長と配分という課題以外にも、現在の中国には、無視できないもうひとつの社会的な目標がある。それは、「持続可能性」である。中国にとって持続可能な社会づくりというのは、国際的な圧力から出てきた課題であるだけでなく、過去数十年の産業化の中でもはや無視できない国内的な課題になっている。
◆新しい農的生活の芽生え
重慶市では、持続可能性の追求は、農業において実践されている。私たちは、µÊ江県新民鎮の養鶏場「石人山林下養殖基地」を訪問した。この基地では、山の傾斜面を利用してニワトリを平飼いしている。「養殖基地」というだけあって、大規模な養鶏である。一二人のスタッフが約三万羽のニワトリの面倒を見ている。日中、平飼いのニワトリは、梨の木の下で生活しており、ニワトリの糞を梨の木の肥料として利用しているため、化学肥料の使用を控えることができる。
この「養殖基地」は個人経営ではあるが、基地を整備するにあたって、重慶市政府から環境に優しい農法への支援を受けている。経営者の男性は、道教の教えを持ち出しながら、ブロイラーより自然的な養鶏を行っているのは、「道」、すなわち宇宙の自然の規則に従っているからであると、私たちに向けて語った。
日本では有機農家の多くは、消費者と直接提携関係を結び、彼らに直接農作物を販売するのに対して、この「養殖基地」では、収穫した卵を近郊のスーパーマーケットに出荷している。中国でも、一九九〇年代以降に、有機食品や減農薬食品の認証制度が整備されたため、スーパーを利用する消費者には、「養殖基地」の卵が環境に優しい農法で生産されたことがわかるようになっている。そうした認証の成果もあって、「養殖基地」の平飼いの卵は、通常の卵よりも一・三〜一・四倍くらい高く売れるとのことである。
このように政府に支援されたもの以外にも、私は、草の根の住民によるエコロジー的な農業の実践を見ることができた。たとえば、重慶市・四川省ツアーの主催者グループとしてずっとカメラを持って私たちを撮影してくれた袁清華は、北京郊外の「小さなロバの市民農園」(以下、「ロバ農園」と略す)に関わっている。袁は、二〇〇五年に河北農業大学を卒業した。在学中から「ロバ農園」の前身であるジェームス・イエン農村復興学校にボランティアで関わってきた。彼はその後、人民大学の修士課程で農業経済や農村復興について研究し、タイに渡って有機農業を学んだりしながら、「ロバ農園」への関わりを深めていった。現在では「ロバ農園」に関係する研究所で事務をする傍ら、「ロバ農園」野菜畑学校の校長を務めている。
◆中国版CSAも出現
「ロバ農園」は、北京で最初のCSA(community supported agriculture、地域に支えられる農業)である。それは、北京市に在住する契約消費者に有機栽培の農産物を届けること、さらに都市住民が実際に農業をする手助けをし、食料と環境についての教育を提供することを主な活動としている。普段は決して饒舌ではない袁は、ツアーのバスの中でのカラオケ大会で、「農民がいなければ、誰も天地の間を生きることはできない」という歌詞の曲を、自分の思いを込めながら披露した。
過去三〇年間の中国は、急速な産業化を経験し、物質的な豊かさを実現した。だがそれは同時に、環境破壊や学歴、就職、昇進をめぐる競争の激化といった様々な問題を引き起こしてきた。最近では、とりわけ若い世代の中から、中国社会のあり方を反省的に捉え、それを変えたいと願っていると思う者も出てきている。その中で鍵となっているのは、CSA、すなわちコミュニティを基盤にしながら、しかし外部者である都市の人びとに支えられる農業である。これに関心を持つ人びとは、農業をすることで、自然と自分との関係、さらには自分のライフスタイルを変えようとしている。こうした動きが起きているのは、中国大陸だけではない。私はツアーの中で、コミュニティを基盤にした都市住民による「半農半X」と呼ばれる農的生活を実践している香港の青年から話を聞くことができた 。中国や香港だけでなく、いち早く産業化を経験した日本でも、こうした農的生活の広がりを確認できる。それはまだ、はっきりとしたかたちを取ってはいないかもしれないが、確かに東アジアに新しい価値と生き方を生み出しつつある。
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