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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2012年03月02日00時24分掲載
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アジア
【イサーンの村から】(17)みんなでワイワイ、タイの子育て 森本薫子
イサーンでの子育ては、日本よりずっと楽だ。私は一人目の子供はイサーンで、二人目は日本で出産したけれど、妊娠時から出産、その後の子育て、どこをとっても気楽さが違う。特別に神経質な人でなくても、赤ちゃんを世話するとなると衛生面や食べ物に対して一気に慎重になるもの。私もかなりタイ人感覚になっていたとはいえ、育児はそれなりに情報を集め、気を使っていた。が! イサーンで日本基準の子育てができるわけがなかったのだ・・・。
◆これが免疫というものか!
隣に敷地には義理の祖父母と、叔母家族が住み、二人目が生まれてからは義母が同居してくれることになったので、子育てにはたくさんの人が関わってくれる。イサーン式の子育てにはさすがの私も今更ながら驚くこともあるが、お義母さんが見ていてくれる時には黙って任せることにしている。土の上をハイハイさせようが、真っ黒な手でもち米をつかませようが、目を丸くしながらも黙って見ているうちに、私もすっかり慣れてしまった。実際、うちの子供たち、それで病気になったこともないし、他の子のそんな話も聞いたことはない。
これが免疫というものか。それなら強いに越したことはない。長男にしては、常に裸足で外遊びをしているため、足はいつも傷だらけで足の裏は固くなっている。日本の2歳児の足にはとても見えないゴツゴツの足だが、頑丈な足になっているならむしろ安心かも。
◆バナナの離乳食
離乳食に対する考え方も、日本とイサーンではだいぶ違う。タイでは離乳食の代表格はバナナだが、日本だったら「ペースト状にして食べさせましょう」という月齢の娘に、お義母さんは皮をむいたバナナをそのまま口に突っ込んでいた! そして、「あら、もう半分も食べちゃったわ〜」と。お米も、日本では五倍粥(ご飯に対し5倍の水で作ったお粥)を食べさせる時期に、もち米を娘に握らせ食べさせていた。もち米は普通に炊いたご飯より、さらに固め!! 喉にひっかからないか・・と心配したが、結構大丈夫なもので、9か月の今では小さな手で上手に握って口にいれるようになった。
そもそも赤ん坊の月齢ごとに、離乳食初期、中期、後期と分けて、栄養バランス、食べ物の柔らかさ、切り方、味付け、などを細かく注意して食べさせるのは日本だけなのではないか。イサーンではそんな面倒なことはしないけれど、赤ちゃんにいい食べ物は誰もが知っている。葉物野菜だと「赤ん坊にはタムルンの葉」は常識。タムルンとは、ヤサイカラスウリのこと。カロテンとビタミンCが豊富で、目にいい野菜と言われている。定番のバナナも、どんなバナナでもいいわけではない。
うちには何種類ものバナナの品種が植えてある。離乳食初期に、私が「バナナを食べさせてみよう〜♪」と取りに行こうとしたら、夫が「ナームワーかクルウェイホーム(どちらもバナナの品種名)か、どっちをあげる気だっ!!」とものスゴイ勢いで叫んだことがあった(普段穏やかな夫が!)。
赤ちゃんに与えるバナナの品種なんて決まってるの?と思ったけれど、タイでは赤ちゃんにはナムワーという品種を与えるというのは常識らしい。クルウェイホームは甘すぎだとか。ためしに叔母さんに「赤ちゃんにはどのバナナをあげるの?」と聞いてみると、「そりゃあナームワーでしょう」と当たり前のように答えた。やっぱりそうなのね。旬に関係なく栄養バランスに合わせた物を何種類も食べさせるより、種類は少なくても、地元でとれる旬のものを食べさせる。それがイサーンの伝統的離乳食なのだ。
日本では産科で先生が事細かく説明してくれるし、自分で本やネットから情報を得ることができるため、時代と共に変化する子育て論で、母親と祖父母の世代がぶつかることも多い。たとえば、大人の唾液に含まれる虫歯菌がうつるから、大人が使ったスプーンで赤ちゃんに食べさせない!!というのは今となっては日本のママの間では常識。赤ちゃんの口の周りにキスしてもダメ、というくらい。硬いものを、大人が口で噛んで柔らかくして赤ちゃんに与えるのは一昔前は普通のことだったが、今の時代ではありえないのだ。このような育児論の違いが、嫁姑問題を深刻にしたりする。義理実家に預けるくらいなら、大変でも自分だけで子育てしたい、と考えるママたちも多い。
◆獲りたてネズミの炭火焼きで離乳食完了
一方、誰もが子育てに参加し手伝ってくれるのが当たり前のイサーンの子育て。あらゆる年代が子育てに関わるので、やり方・方針も様々。イサーンでは、周りの先輩母さんたちから聞いて学ぶので、子育て論にそれほど差がでることはないのかもしれない。様々な人に囲まれて育っていく子供たちは、自然に人との距離間も学んでいく。日本では、どれだけ感情的に怒らずに子育てできるかがママ達の永遠の課題になっているが、イサーンのように周りにいくらでも見てくれる人がいると、イライラすることもない。怪我、病気をしないように、虫歯にならないように、と最新の注意を払う丁寧な日本の子育てもいいけれど、泥沼に首まで浸かったり、土砂降りの中でも遊ばせるイサーンの子育てもかなり楽しい。たくましく育っていくのがよくわかる。言いたいことをぐっとこらえても、世代を超えた少々大胆な子育ての利点を実感することも多い。心配事といえば、日本に一時帰国した時の周りのママ達の反応くらいか・・。
あるとき、義祖母と叔母さんが田んぼで捕ってきたネズミの炭火焼きを、1歳になったうちの息子に食べさせていた。田んぼのネズミだから新鮮な米を食べて育っている健康的なネズミ・・にしても!! 一緒にいた夫も全く気にしていない様子。ネットで「離乳食 完了期 ネズミ」と検索したが、もちろん出てくるわけがなかった…。はい、もう何食べさせても気にしません。イサーンの子として育つには、最上級の免疫力が必要なのです!
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泥沼遊び
バナナ直食い





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