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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2012年03月21日18時22分掲載
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英新聞の発行部数下落振りに見る将来 −紙媒体が消えるのは時間の問題か
英国の新聞の発行部数(2月)を、先日、改めて確認してみた。英国の新聞は、地域によって、全国紙、地方紙、中身によって大衆紙、高級紙、発行頻度によって日刊・朝刊紙、日刊・夕刊紙、日曜紙、週刊新聞、お金を払うか払わないかで有料紙、無料紙に分かれるのだけれど、とりあえず、主要全国紙の比較である。発行部数と前年同月比でどれぐらい減ったかを、英ABCの調査でみると(最後に数字を補足)、分かっていたようでも、その下落振りにはいささかの衝撃を感じざるを得ない。(ロンドン=小林恭子)
例えば、英国の日刊紙で最も売れている「サン」(大衆紙)。これは前年同月比で、約8%の下落。同じく大衆紙で、もっとどぎつい女性の裸の写真を堂々と1面に出す「デイリー・スター」は14%の下落。
高級紙では経済紙の「フィナンシャル・タイムズ」が16%の減少。「ガーディアン」はマイナス17%。そして、「インディペンデント」紙が42%減なのだ。(もっとも、インディー紙のここまでの減少には、後述する別の理由があるのだけれどもー。)
こういうレベルの下落は、昨日や今日始まったことではなく、毎月発表されるABCの調査によれば、近年、継続している。
こうした数字がしっかりと私たちに教えてくれることは、「紙の新聞を読まない人が増えている」状態から、「紙での印刷出版が、これまでの考え方の経営では成り立たないレベルに向かって、一直線に進んでいる」ことだ。紙が消えるといってしまうとなんだか衝撃的な表現となるが、少なくとも、デジタル版が主で、紙はおまけにならざるを得ない方向だ。数字がそういっている。
道理で、フィナンシャル・タイムズが、紙版を手に取ると、本当にスカスカになり(骨組のみ、という感じ)、強気でデジタル版をプッシュしているはずである。
新聞の内容や質に対する、読者からの何らかの異議申し立てで部数が減っているのではなく、単に、「紙では、もう読まない」ということなのだ。これが1つの大きなメッセージだろうと思う。
しかし、最近のトレンドとして、あと2つ、特徴があろうかと思う。
それは、無料紙の存在である。無料紙といっても、正真正銘の新聞だ。ただ、小型判で、記事が読みすい。20分もあれば、通勤電車の中で読めてしまう。
朝は朝刊無料紙メトロ(全国では約140万部、ロンドンでは80万部)があるし、ロンドンだったら、午後から夕方にかけては「ロンドン・イブニング・スタンダード」(約70-80万部)が無料で配られている。ロンドン金融街向けの朝刊無料経済紙CITY AM(約10万部)も何とか経営を続けている。ロンドン近辺に限ると、1日に160-170万部の無料新聞が手に入るのだ。
ロンドンで電車に乗ると、こうした無料新聞を手にしている人がとても多い。久しぶりに「スタンダード」を開いてみたら、前はファッションやゴシップが多かったが、今は、独自調査の社会派ネタが前面に出ていた。新所有者のロシア人・レベジェフ氏は、スタンダード紙を少々、高級向けにしたいと述べていたが、それが実っているのかもしれない。
そこで、トレンド2としては、「わざわざ買っては読まないが、無料だったら、読む人が結構多い」ことだ。電車に乗ったら新聞を広げるーこれはまだまだ1つの習慣であるし、座席などに読み終わった新聞が置いてあれば、ふと手にとって読む・・・ことをしてしまうわけである。アマゾン・キンドルや時にはアイパッド、またはスマートフォンでニュースやメールを読んだりする人がいる中で、無料新聞を読む人もいる・・・そんな感じである。
そして、もう1つのトレンド(といっても、最近の話でもないが)だが、先ほど、インディペンデント紙の発行部数が、前年比で42%落ちたと書いた。これには理由があって、それは、少し前から、同紙は弟分とも言うべき新聞「i(アイ)」を発行しているのである。
「アイ」は中身的には無料新聞に近い。インディペンデントの記事を読みやすく書き換えたり、レイアウトを変えて、掲載の記事本数は減らして作っている。そして、値段を、本紙の5分の1である、20ペンスにしているのだ。これがものすごい伸びを示している。インディー紙が10万部売れているのに対し、アイは約24万部。すっかり逆転してしまった。
つまるところ、読者としては、一部1ポンド(約120円)は高いと思うようになっている。新聞をたとえ読みたいと思ったとしても、まずは無料か、あるいはせいぜい20ペンス(約24円)ぐらいで入手したいと思っている、というわけだ。
これは結構、深いんじゃないかと思う。120円(1ポンド)というのは、決して大きな額ではない。でも、読者のほうは0円から24円で新聞を読みたいと思っていること。売る側と買う側の大きなギャップである。
だとしたら、新聞を作る側としては、定価体系の抜本的見直しや、無料新聞としては作れないのかなどを、様々な選択肢の1つとして考えるべきではないのかな、とー私がそう言っているというよりも、読者がそう言っている感じがしてならないのである。
広告だけに頼ったら、不景気のときに困るだろうから、あくまで「選択肢の1つ」なのだが。
そして、デジタル版が主で、紙はおまけ・・という方向にしたら、どんなビジネスモデルができるのかを真剣に考えてもいいのでは?
読者の購買行動を見ていると、間接的・直接的に、そんなことを表現しているように見えて仕方ない。「もし紙媒体だったら、もっと読みやすくて、もっと安い新聞がほしい」−そんなことを言っている感じがする。
ガーディアンの編集長が「紙のガーディアンは後10年後にはないかもしれない」とどこかで言ったそうだが、この言葉をショックだと思う人もいれば、当然と思う人もいるだろう。ガーディアンはデジタル投資にずいぶんと力を入れてきたからそう言ったのかもしれない。でも、見逃してはならないのは、現実に、こんなに勢いよく紙の発行部数が減っていったら、もう「主」の存在としては出せなくなってしまう将来が現実になるのは意外と近いかもしれない、ということ。紙は消えないだろうが、定価の額も含めてかなり抜本的に制作過程を見直し、それでもあくまでも「従」として生き残るのだろうな、と思う。(ブログ「英国メディア・ウオッチ」より)
英国・主要紙の発行部数 2012年2月
新聞名、発行部数、前年同月比(%)の順です。
ー平日・日刊有料紙
サン 2,582,301 -8.38 デーリーメール 1,945,496 -6.04 デイリー・ミラー 1,102,810 -6.32 デイリー・スター 617,082 -14.11 デーリーテレグラフ 578,774 -7.89 タイムズ 397,549 -10.86 フィナンシャル・タイムズ 316,493 -16.43 ガーディアン 215,988 -17.75 インディペンデント 105,160 -42.38 i(アイ) 264,432 50.49
ー無料紙
朝刊紙メトロ* 1,381,142 0.67 (*のみ2011年9月ー2012年9月の平均値で比較)
(資料:英ABC)
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