ニューヨークタイムズの3月12日付の教育に関する記事は衝撃的だ。アメリカのある調査で、米教師のおよそ3人に1人が5年以内に辞めるかもしれないと答えたという。3年前は4人に1人だった。背景には1クラスの人数が増加していることや教育予算が削減されている実情があると書かれている。
このあたりの実情をさらに詳しくレポートしているのが西海岸のローカル紙、Berkley Daily Planetである。これはデイリー(日刊)と掲げられているが、現在は週一回ウェブで更新している無料のネット新聞である。 さて、これがその記事だ。
http://www.berkeleydailyplanet.com/issue/2011-10-05/article/38525?headline=American-Teacher-Has-a-Lesson-Superman-Is-a-Myth-Teachers-Are-the-Real-Heroes 昨年10月に書かれたこの記事によると、教育をめぐる真っ向から異なる2本の映画が作られたようだ。1本はデビッド・グッゲンハイム監督が作ったドキュメンタリーで「Waiting for Superman (スーパーマンを待ちながら)」である。記事によれば、アメリカの教師たちがいかに怠け者で、制度に保護された高給取りで、さらに労働組合に守られた存在であるかが描かれているそうである。つまりは現在の教員を批判する内容と言っていいだろう。 もう1本は「American Teacher(アメリカの教師)」と題された映画で、バネッサ・ロス監督によるもの。バネッサ・ロス監督はアカデミー賞受賞歴を持つ人物だそうで、ナレーションを担当したのは俳優のマット・デイモン。余談ながら、デイモンは若者と教育をテーマにした映画「グッドウィル・ハンティング」の脚本を書き(アカデミー賞を得た)、自ら主演した。
さて、Berkley Daily Planet紙によると、この「アメリカの教師」という映画で描かれているのは日々、教育にかけている現場の教師たちだ。驚くのは地域で表彰を受けた優れた教師たちの多くが低所得ゆえに副業をしなければ家族を養えない現実である。これは先の映画「スーパーマンを待ちながら」で描かれた現実とは異なる世界だ。記事によると、アメリカの教師は平均すると毎週学校で50時間働き、さらに家庭でもテストの採点や授業の準備などで15時間を費やしているという。つまり、平均すると一人の教師は毎週65時間以上を仕事に費やしている。ところが給与は低く、たとえば映画の登場人物の一人は年収2万7000ドルで、これでは家族を養うことができないため、夜間にフォークリフトを動かす副業をしているそうである。そのため、妻子と過ごす時間もない。
’So it's not surprising that US teachers suffer from the greatest burn-out rate of any US profession 〜20% quit every year and 46% of US teachers quit within five years, citing long hours, low salary, lack of support and lack of prestige. This attrition is estimated to cost the country more than $7 billion annually. ’ 「だから、アメリカの教師たちがどの業種よりも燃え尽きる率が高いのもうなづける。毎年教師の20%が辞職し、46%が5年以内に転職する。長時間の労働、低い給与、サポート体制の欠如と教師に対する敬意の不足などがその背後にある。こうした離職によって年間70億ドル以上の費用が無駄になっている」
この映画「アメリカの教師」は表彰歴がある優れた教師ながら生活苦から、転職した数人(半ダース)を取材しているそうだ。フォークリフトを動かしたり、スーパーマーケットで働いたりするために学校を離れていくのである。
■ドキュメンタリー映画「American Teacher」
http://www.theteachersalaryproject.org/ ■Berkley Daily Planet(バークレー・デイリー・プラネット)
http://en.wikipedia.org/wiki/Berkeley_Daily_Planet
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