日本で教師が心を病んだり、燃え尽きたりしているという話を聞くようになってかなりの時間が経った。それは日本特有の現象かと思っていたが、アメリカでも同様の事態があるようだ。2011年に完成されたドキュメンタリー映画「American Teacher(アメリカの教師)」は公教育の場で本来やる気もあり、優れた資質を持つ教師たちがいかに疲弊しているか、その実情を描いたものらしい。
http://www.youtube.com/watch?v=dzvD9v7CbEE この映画の製作者たちのウェブサイトによると、もともと1冊のノンフィクション「Teachers Have It Easy: The Big Sacrifices and Small Salaries of America's Teachers( アメリカの教師〜大きな献身と少ない給料〜)」が発端だという。著者は現役教師のDaniel Moulthrop、元教師のNinive Calegari、それにライターのDave Eggers3人だ。この3人が中心となって映画作りも行われたようである。
この映画ではアメリカの教師たちが長時間業務に拘束され、サラリーは家族を養うには足りず、62%のアメリカの教師が副業を持っている事実を描いている。バーテンダー、庭の草刈り、ステレオ販売、家庭教師、フォークリフト操縦などなど。単に給与が少ないだけでなく、その仕事も尊敬をあまり受けていないとされる。だから、新人教師の46%が5年以内に転職してしまう。アメリカの教育レベルが低下している背景は優れた教師が不足していることが原因だとこの映画製作者たちは考えているようだ。優れた教師が不足する理由はこのように教師たちが長時間の業務に加えて副業を強いられ、その結果、家族生活が破綻するケースが少なくないらしく、教師を継続することが難しくなっていることが挙げられるという。映画では4人の教師を中心に追いかけているようだ。監督はバネッサ・ロス、ナレーターは俳優のマット・デイモン。
■プロデューサーNinive Calegari
この映画「アメリカの教師」のもとになったノンフィクションを書き、映画のプロデューサーも務めたニニベ・カレガリさんのプロフィールがウェブサイトに出ていた。ハーバード大学で教育学を専攻し、自ら10年近い教員歴を持つ。 興味深いのは826というNGOの設立メンバーということである。826はウェブサイトによると非営利団体で地域の6歳から18歳までの児童・学生に「書く」ことを教えることを目的としている。826では教え手が児童一人一人と向き合うことができ、子供たちが自分の考えを明確に述べることができるように、書くことを中心に国語教育の補強をする。サンフランシスコにあるNGO「826ヴァレンシア」のウェブサイトによる。http://826valencia.org/about/ カレガリさんは826全国組織のCEOも務めたとされる。全国8地域に設立されているようである。826を設立したのはカレガリさんと、デイブ・エガーズ(Dave Eggers)氏で二人はともに原作および映画の製作に携わっている。二人がサンフランシスコに826バレンシア(NGO)を設立したのは2002年だから丁度ブッシュ政権時代である。疲労している教師たちをサポートし、地域で子供の教育支援を無料で行うのが目的だったそうだ。そして、826の全国組織のウェブがこれである。http://www.826national.org/ ’Ninive is a veteran teacher with almost ten years’ experience in the classroom, including experience in both charter schools and large comprehensive high schools. She is the cofounder and former executive director of 826 Valencia, and most recently served as the CEO of 826 National, a literacy nonprofit that galvanizes volunteers in eight cities to support teachers and help students improve their writing skills. She holds a Master’s Degree in Education in Teaching and Curriculum from the Harvard University’s Graduate School of Education, and is a co-author of the New York Times bestselling book Teachers Have It Easy: The Big Sacrifices and Small Salaries of America’s Teachers.’
■アメリカの教師 〜低い所得で副業 辞めたい教師が3人に1人〜
ニューヨークタイムズの3月12日付の教育に関する記事は衝撃的だ。アメリカのある調査で、米教師のおよそ3人に1人が5年以内に辞めるかもしれないと答えたという。3年前は4人に1人だった。背景には1クラスの人数が増加していることや教育予算が削減されている実情があると書かれている。
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201203241023256 ■公教育の辺境から学べること 瀬川正仁
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201102262033056
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