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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2012年04月06日14時24分掲載
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アジア
【イサーンの村から】(18)イサーンには孤老はいない 森本薫子
日本では、老後の貯えとして必要な額は何千万円とか億単位だとか聞くことがある。高齢者施設に入らないにしても、老後のための貯蓄額は切実な問題だ。これは自分の子供に面倒を見てもらわないことを前提とした場合の話。息子・娘が結婚したら別世帯という欧米的な考えは、日本でも珍しくなくなってきた。お互い気を使いたくないという人間関係的な理由もあれば、経済的理由もあるだろう。でも一人暮らしのお年寄りの孤独死のニュースなどを聞くと、誰かと一緒に住めるのはいろいろな意味でお互いに安心だとも感じる。
イサーンの農家では、子供が親の面倒を見るのが当たり前。たとえ子供がいなくても、年老いたら親戚が必ず一緒に住むので一人暮らしのお年寄りというのはまずいない。だから老後のために貯金しておく必要もないのだ。資産である土地を子供たちに譲り渡し、その後は子供たちと一緒に暮らす。伝統的には一番下の娘が同居することが多いが、それも今の時代は様々。嫁姑問題ももちろんあるが、やっぱり「親と同居する」という考えは今でも定着している。
以前バンコクで日本の福祉大学の先生の調査に通訳として同行したことがあった。タイの福祉事情や日本の福祉事情を知るなかで思ったのは、高齢者や障害者など生活にサポートが必要な人を家族・親戚、地域内の人が支えることが「当たり前」にならなくなったときに、福祉を制度として充実させることが必要になってくるのだということ。当たり前のこととして周りの人を頼りにできなくなると、政府や行政、地域がシステムをつくって守らなければ、その人たちの生活を保障することができなくなる。自然に発生するセーフティネットから、制度としてのセーフティネットに変わるのだ。
タイの国や行政の高齢者支援はどうなっているのか。今年始まった新しい制度では、60歳代は600バーツ/月、70歳代は700バーツ/月、80歳代は800バーツ/月・・・と、年齢に準じて補助金が支給されるようだ。ちなみに農業日雇いの一日の賃金は200〜300バーツである。地区によっては民生委員のようなものが高齢者のサポートをしているが、ほとんどは地域の近所の付き合いがお互いを支えている。補助金は決して多いとは言えない額だけれど、お年寄りの活躍ぶりを見ると、一家にはむしろ欠かせない存在なのだ。
農村生活において高齢者の役割は重要だ。出稼ぎに出た両親の代わりに祖父母が孫の面倒を見るのはよくある話。遠くに出稼ぎに行った両親は、年に数回しか帰ってこなかったりする。おばあちゃんが生後間もない赤ん坊の世話をしているのもよくあるイサーンの風景。
隣の敷地には夫の叔母夫婦とその長男家族と、夫の祖父母(叔母の両親)が住んでいる。祖父母は70才代だが、未就学児が3人もいるこの家では二人とも毎日忙しい。叔父さんが農作業に出かけ、叔母さんが子守りをしている間にお祖母ちゃんは家事と家庭菜園の世話。みんなフルタイムだ。 そして、全く忙しそうには見えないけれど最も重要な役割を担っているのが家長であるお祖父ちゃん。結婚式の日取り決定や村内の行事出席など長老としての役割だけではなく、家では毎日牛の世話と子守りに大活躍。お祖父ちゃんが世話すると牛の育ちがとてもいい。常に牛を草のあるところへ移動させ、沢山エサを食べさせてくれるからだ。子供たちはみんなお祖父ちゃんが大好き。人見知りを始めたうちの娘も、お祖父ちゃんといるとずっと機嫌がいい。心地の良いリズムの歌を常に口ずさんでいるからか、危ないこと以外は何でもさせてくれる放置加減がいいのか・・(ええ、もちろん土の上をハイハイさせまくってます・・)。とにかく子供たちを安心な気持ちにさせるオーラがあるのだ。
イサーンでは、赤ちゃんをハンモッグに寝かせるのが定番なのだけれど、ハンモッグを揺らし続けるとイサーンの赤ちゃんはずっと心地よく寝ている。私の場合、娘をハンモッグに寝かせても、寝たかな〜と思うとすぐに揺らすのをやめて、ここぞとばかりに家事に走る!そうすると、30分もしないうちに起きてしまうのだ・・。でもお祖父ちゃんにお願いすると、ひたすら揺らしていてくれる。眠りが深〜〜〜くなるまで、ずっと・・。そこまでくると、もう揺らさなくても2時間はぐっすり寝てくれる。 5分揺らして25分の自由時間を得られる私と、30分揺らして1時間半の自由時間を作れるお祖父ちゃん。さすがです・・。
ただこのハンモッグの揺らし方が半端ではないイサーン人。遊園地にこんな乗り物あったよな・・というくらい、今にも一回転するんじゃないかという程の横揺れ!! 義母がうちの娘を入れてハンモッグを揺らしているのを見て、私の母が「そんなに揺らすの?!」と目を丸くしていた・・。赤ちゃんの頭を揺らすのは危ないんじゃないか・・と心配になり、いろいろネットで調べてみると、頭自体を振るのは良くないがハンモッグのような体全体の横揺れは大丈夫らしい。それまでは義母がハンモッグを揺らすと気が気ではなかったが、調べてみると心配なくなり、いつしか私もものすごい勢いでハンモッグを揺らすようになっていた・・。娘はすやすや眠りにつく。イサーンの木陰の心地よい風に吹かれながら・・・。
でも大のお酒好きのお祖父ちゃん。お酒を飲ませたら限りなく、最後には泥酔状態でゴザの上で寝てしまう。それを見るお祖母ちゃんの目がめちゃくちゃ怖い。それを知りつつ隠れて飲むお祖父ちゃん・・。やっぱりあの家の本当の権力者はお祖母ちゃんに違いない。
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おじいちゃんと子どもたち
ハンモックを揺らすおじいちゃん
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