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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2012年07月14日14時13分掲載
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ロシアン・カクテル
(39)日本人とロシア人:互いに理解できるのだろうか? タチヤーナ・スニトコ
異文化間で何が訳されているかはとても重要なことです。ところで、何を翻訳するかを決めるのは一体誰なのでしょうか。多くの場合には、翻訳者自身が自分の″文学センス“に任せて、翻訳する文芸テキストを選びます。又、西洋と東洋の間の文化、歴史・思想の違いのために翻訳は非常に難しくなります。翻訳レベルの基準も曖昧です。翻訳の結果としての誤解は沢山あります。
現在のロシアで一番知られている日本の作家は村上春樹です。芥川 龍之介より人気があります!
ロシア語を勉強し始めたある日本人女子学生は自分のロシア語の勉強の目標は「ロシア文学を読むことです」と言いました。「何が一番最初に読みたいですか」という問に、「ナボコフの「ロリータ」(!)を読みたいです」という返答でした。ところで、ナボコフの「ロリータ」はロシア文学を代表できるのでしょうか?私自身はこの女子学生の選択にとてもビックリしました。
世界の各文化が接触する際には時々奇妙な事象が発生することがあります。ある文化から別の文化へ入る時にはその“もの”や“こと”の“新しい生活”が始まります。簡単な一例を挙げると、日本のジャムいりの“ロシアン・ティー”があります。それが“ロシアン・ティー”だと私は日本に来て初めて知りました。ロシアでは、ジャムではなくヴァレーニエваренье(果実の原型が残っているもの)を紅茶を飲みながらスプーンで食べます。
「ロシア風にお茶を飲む」とは、お茶を飲むだけではなくいろいろ「様々なスーシュカ(輪形の薄い小ビスケット)、パイ、ピロシキ、蜂蜜、ヴァレーニエ等」食べることを意味します。ところで、一番大事なことは互いにいろいろ話しをすることです。″お茶を飲みたい!“というフレーズは「一緒にお茶を飲みながら雑談すること」を意味します。
東京の昭和女子大学で授業開始前に鳴らされているメロディーはトルストイ・チャイムと言います。何故なら、この大学にはロシアの文豪レフ・トルストイの像とトルストイ室があるからです。ところで、このメロディーは文豪トルストイとは関係がありません、ヨーロッパの学生たちのガウデアムス・イジトゥル(Gaudеamus igitur) という古い賛歌です。もともとはヨーロッパの学生たちの賛歌でドイツ人学生たちがよくパーティーで歌う歌でした。(メロディーは15世紀に、歌詞は18世紀に作られたものです。)
時々、ある言葉や物事は意外な連想をもたらすことがあります。日本のスーパーマーケットには“プッチンプリン”なるものが売られています。これはプリンを開けるときの音からそのように呼ばれているわけですが、ロシア人にはこの名前は“プーチン (プーチン首相)+プリン(そば粉や小麦粉で作るロシアのパンケーキ).”のように聞こえます。「ハッピープッチンプリン」・「プッチンプリンいちご」・「ビッグプッチンプリンいちご」・「ハッピープッチンプリンいちご」・「手づくりプッチンプリン」のようないろいろな種類を売り出せばもっと可笑しく面白いのではと思いますが・・。
それから、 ある文化では“小さい”又は、“普通”と思われている物や事が別の文化に入ると思いもよらず文化を代表するようになることがあります。“重要さ”や“人気”の程度は、自分たちの文化の中に在ったときと異文化の中に移転した場合では違います。
“物”の例をあげると、ロシアでは日本文化を代表するのは“根付け”と“置物”です。根付けというのは何かはほとんどのロシア人が知っています。ロシア皇帝だったニコライ二世は1891年に日本からの外交上の贈り物として根付けをもらいました。そして一つの根付けをいつもお守りとして身につけていました。華やかな根付けや置物のコレクションはエルミタージュ美術館や東洋美術館や個人のコレクションにあります。それらについて沢山の絵本が出版され、しばしば展覧会が行われています。
双方の文化の違いのために、日本人とロシア人の間のコミュニケーションにおいて往々誤解が起きることがあります。人間は文化の中で生まれ、周りの世界を自分の文化という色眼鏡で眺めます。
ロシア文化や文学ではキリスト教に由来している“善・悪”の考え方がとても重要な位置を占めています。もともと人間というものは罪があり(悪)、善を追求します。“善”と“悪”という概念は西洋文化概念です。
一方、日本文化を考えると“善”ということは周りの世界(自然・人間社会)との調和する意味します。“悪”というのはその調和が乱れている状態を意味します。
よく知られているように、「和」の概念は日本文化の中でとても重要な役割を果たしています。聖徳太子の十七条の憲法は「和」という概念から始まります(曰く:以和為貴・・・)。日本の別名は「大和」です。
日本人のメンタリティーは稲作と関わっています。稲作には水が必要であり、灌漑システムを作らなければなりませんでした。稲作には、灌漑にとどまらずみんなの協力作業が必要なことが沢山あります。又、東日本大震災での復興に向けての闘いにも、皆が絆で結ばれています。このため、皆と調和しての作業や自然と折り合いをつけながら仕事をするために日本では「和」の概念が自然に発生してきました。「和」の概念からは次のような数多くの社会的諸概念が発生してきました;「思いやり」・「甘え」・「義理」・「恩返し」・「絆」などです。
多くの概念、例えば“自由”や“正義”や“真”などは、日本文化とロシア文化の中では異なった意味を暗示しています。ロシア人より日本人の方が自分を幸せと感じる場合が多いようです。日本人がレストランでよく言うせりふは“美味しい!幸せです!”です。ロシア人はどれだけ美味しくても、“私は幸せです!”と言うことはありません。何故ならば、ロシア文化における考えでは、人はそんなに簡単に幸せにはなりません。ロシア人は一生を通じて幸せを探しています。自分が完全に幸せだと考えることはありません。その幸せを追い求めることが伝統的なロシア文学の発生へと導いたのです。
文化の差異の為に、多くのロシア小説は日本の読者には分かりづらいのです。例を挙げると、ブルガーコフの『巨匠とマルガリータ』には、インターテキスト「“intertextuality”:文学作品のテキスト相互関連性」やヨーロッパ文化やキリスト教の意味や“善”と“悪の交換「“善”と“悪”が交換するchange places、悪は“善”になり、“善”は“悪になった」やスターリン時代のモスクワでの出来事などのさまざまな意味などが小説の中に編込まれているのです。
ロシア文学の崇高な目標というのは“人間の心を暗黒の部分も含めて全て表現し尽くす”ことなのです。ところで、最近ベストセラーになったドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』(亀山 郁夫訳)の人気ブームは翻訳が良くできているだけではなく、現在日本で重要さが増してきている教育や道徳とも関係しているのです。
日本とロシアは、国の歴史の上では多くの困難を乗り越えてきました。日本には“自然激変”(自然災害)が沢山ありました。東日本大震災の際には、日本人の沈着冷静さは世界の人々に尊敬の念を起こさせました。
ロシアにも自然に関係する問題はありますが、ロシア人のメンタリティーには数多くの戦争、紛争、革命などの“社会大変動”が大きい影響を及ぼしてきました。その為、社会的大変動の時代には、ロシアの社会は全体として“分極化”します:“親スターリン対反スターリン”、“親プーチン対反プーチン”など。
妥協することは日本人らしい、一方率直に思ったとおり反対するのはロシア人らしいのです。
ロシア料理のレシピーには、「玉ねぎを輪形に(横に)切ってください」とよく書いてあります。日本料理のレシピーには玉ねぎを縦に切る(千切り)場合が多い。ところで、ロシアの料理作りの方法と社会での行動様式は同じなのです;“横切り・反対”です。
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ロシア人形と日本人形
ロシアン・ティー
ヴァレーニア
ボリス・クストーディエフ作「お茶を飲む女性商人」
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