何度か書いり話したりしたことなのだが、このところ社会運動への排外主義・レイシズムの浸透が目立つ。それだけ世の中が右へ揺れ、そうした考えを許容する空気が出てきたことが背景にあるのだろうが、それにしても困ったことだと思う。最初の現象はTPP(環太平洋経済連携協定)反対運動であった。TPPは「国益に反する、亡国の道」という呼びかけで、在日の人たちに対する攻撃を続けている「在日特権を許さない市民の会」(以下、在特会)が日の丸を掲げてデモを始めた。つづいて脱原発運動に日の丸が目立つようになった。新右翼一水会のブログでは「原発とは、非常に『不潔な技術『」であり、「 「原発技術なんか朝鮮人にくれてやれ。穢れた技術は、穢れた民族にこそ相応しいのだから」と、差別と排外主義丸出しの主張が堂々と掲載される状況になっている。放射能は生命体を傷つけるが、レイシズムは人の心を殺す。両立などとてもできないはずなのだが。
ぼくはずっとTPP反対運動に関わっている。運動現場で排外主義が目立つとようになったのは2011年の冬ごろからで、ぼくたちは何度も内部討議を重ね、同じくTPP反対であっても、排外主義とは一線を画すことを決め、内外に公表した。理由は二つ。世の中でもっとも醜悪なのはレイシズムだと思うことが一つ。 もう一つは、運動面でも百害あっても一利もないからだ。TPPに象徴される新自由主義で差別され、収奪される人は国内だけでなく世界にあふれている。その世界の圧倒的多数の人びとと手を組まない限り、この運動に勝ち目はない。排外主義・レイシズムはその道を閉ざし、結局は日本国家と日本民族を守れというところに帰着する。その日本国家は、世界有数の経済大国として、新自由主義のもとでは加害者の側にある。日本国家と資本の加害者の側面を見ず、「日本が危ない」といくら叫んでも、世界の人びとは信用しない。
TPP反対運動に日の丸をもちこんだのは在特会という排外主義集団。彼らは一方で核武装自主防衛、がん発推進を掲げて運動している。続いて、元防衛省幕僚長で、核武装自主防衛論を公表して職を辞した田母神俊夫氏。右翼の一部で「田母神閣下」と呼ばれてカリスマ指導者のなっている同氏は、やはり反TPPを掲げて各所で演説、周りには日の丸が乱立している光景がユーチューブで流れている。
在特会の活動については、日刊ベリタが過去に報じた以下の記事を参照されたい。
「在特会ら「親子で平和を考える催し」に押しかけ妨害」
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200908031523571
「"在日特権”叫ぶ右翼集団が朝鮮初級学校を襲う 怯え泣き出す子どもたちを前に警察は傍観したまま 保護者がメールで訴え」
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200912110220305 「今まで生きてきてこんな腹立たしく悔しい思いをしたことがありません。学校の前で子どもたちに聞こえるように“スパイの子どもたち!”“朝鮮学校を日本からたたきだせ!”などと人として信じられない暴言を拡声器の爆音をもって騒ぎ立てました。子どもたちはおびえて、中には涙を流すこどもたちもいたそうです。」
上記の在特会は原発は推進の立場にある。原発はエネルギー確保の基本であり、日本の安全保障に関わるものなので、推進すべきという論理だ。原発に関しては右翼の対応は分裂しており、「日本の美しい国土」を守るために原発に反対するグループもある。官邸前の再稼働反対デモに現れるのはそのグループ。
上記で紹介した一水会ブログはそんな彼らの本質を現わしている。同ブログの記事は、「毎週金曜日に行われる首相官邸前のデモにも会員有志が個人の資格で参加するなど、その活動は、現在でも活発に行っております」と自らの立ち位置を明らかにしたうえで、「しかし中には、この問題を『反原発は韓国の陰謀だ! 原発技術を衰退させることによって日本の国力を弱め、同時に国内では失業状態になる原発技術者を大量に引き抜いて日本の原発技術を盗み取り、海外での原発受注合戦を有利に進めようと企んでいるのだ!』と公言して憚らない、筋金入りのネット嫌韓派も大勢いるようです。」と右翼内部の複雑な潮流を紹介。その上で次のように結んでいる。
「そもそも原発とは、非常に「不潔な技術」なのです。 原発ムラ利権の汚さ、という意味も勿論ありますが、それ以上に原発そのものが、一度事故を起こしたが最後、掛け替えのない祖国の山河を何万年にも渡って汚染し続ける、実に穢らわしいこと限りない技術である、ということなのです。 だからこそ私は、こうした『韓国陰謀説』を唱える原発推進バカどもには、暴論を承知のうえで、声を大にしてこう訴えたいのです。 『原発技術なんか朝鮮人にくれてやれ。穢れた技術は、穢れた民族にこそ相応しいのだから』と」
http://amba.to/M5orIU
韓国の人びとを「穢れた民族」と呼ぶこの一水会のブログは脱原発運動の中で評判を呼んでおり、以下のようなtwitterも流れている。
「脱原発」なら右翼とも手をくむということが、こういうレイシストのクズを許容し仲間としてまねきいれるということを意味するのはわかりきった話。知らなかったとは言わせない。」
この問題の取り扱いにはいろいろな意見があり得るが、これだけは言える。社会運動はレイシストとは手を組むべきではない。
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