ジャーナリストのアレクサンダー・コックバーン(Alexander Cockburn、1941-2012)氏が7月21日に癌で亡くなった。鋭いメディア批評でも知られたとされる。生まれはスコットランドで、オックスフォード大学を卒業。1973年からはアメリカに居を移し、ビレッジボイス、ハーパーズマガジン、アトランティック、ウォールストリートジャーナルなどに寄稿した。近年はカリフォルニア発の政治ニュースレター「カウンターパンチ」編集長として批判精神に富む草の根ジャーナリズムを実行していた。
http://www.thenation.com/article/166665/lessons-fukushima-one-year-later アメリカの雑誌Nationにコラム欄を持っていた。最近のコラムには福島第一原発の事故から1年後に書いた記事がある。
「昨年3月のフクシマの惨事の最初の数日間、官房長官のエダノ・ユキオは「ただちに健康のリスクはない」と日本と世界に保証した。しかし、ドアの向こう側ではパニックに襲われたリーダーたちがメルトダウンにより、最悪のチェーンリアクションが起こった場合を考えて懊悩していた。エダノは後に告白した。「もしそれが起きてしまったら、東京自体も失うことになると考えるほかなかった」」
この記事を書いたころ、コックバーン氏は2年にわたる癌との闘病で苦しい最中にあったと想像される。
■英ガーディアン紙の追悼記事 ’Radical journalist who wrote for the Nation and the Village Voice, he co-founded the political newsletter CounterPunch’ オックスフォード大学在学中に学生新聞の編集に携わっていた。そのジャーナリズム歴は50年に上る。 コックバーン氏の父親はタイムズ紙の記者で、左翼支持者だったとされる。スペインに関して1933年から41年まで、共和国派のためにWEEKという政治誌を発刊し、反フランコの論陣を張ったとされる。そういう意味では親譲りでもあった。さらに先祖をさかのぼると、サー・ジョージ・コックバーン英海軍提督で1814年にワシントンDCを焼き払えと命じていたようである。
http://www.guardian.co.uk/media/2012/jul/22/alexander-cockburn-obituary ■Radical Journalist, Media Critic Alexander Cockburn Dies, 1941-2012(「デモクラシー・ナウ!」から)
http://api.democracynow.org/blog/2012/7/23/radical_journalist_media_critic_alexander_cockburn_dies_1941_2012 2004年の放送でコックバーン氏の新著、"The Politics of Anti-Semitism."について対談している。イスラエルの政策を批判したらすぐに反ユダヤ主義と烙印を押されることを指摘している。彼自身はむろん、反ユダヤ主義者ではないとしている。 "The Politics of Anti-Semitism.(2003)"はエッセイ集である。
■コックバーン氏が編集していた1996年創刊のカウンターパンチ誌
http://www.counterpunch.org/ 共同で編集長を務めていたジェフリー・クレア氏が追悼文を書いている。カウンターパンチを創刊して20年足らずだが、その間に2世代にどう物を考えるか、どう世界を見つめるか、いかに愉しく、クリエイティブなレジスタンス人生を過ごすか、こうしたことを教えてくれたとしている。また、亡くなったベルリンの病床では娘が見守ったが、癌を知らされていたのはごくごく一握りの人間であり、同じ英国出身の文筆家でライバルでもあったクリストファー・ヒッチンス(Christopher Hitchens)の場合とは正反対であったと書いている。ヒッチンスは自己の末期の体験をつづったとされる。
年間講読費が35ドル(約2800円)で、Eメールで配信される政治ニュースレターである。カウンターパンチでコックバーン氏と共同編集長をつとめていたジェフリー・クレア氏は「Hopeless: Barack Obama and the Politics of Illusion (希望なし:オバマと幻滅の政治)」を出版した。書評にはノーベル平和賞とは裏腹に、大企業とウォール街に操作された「テクノ・ファシスト」としてのオバマ大統領の実像が描かれているとされる。
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